2024年02月17日 07:31 弁護士ドットコム
中学3年生の友人が万引きした商品をもらってしまったーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。
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相談者の友人は、毎週ドラッグストアで万引きを繰り返していたという。何度注意しても聞く耳をもってもらえなかったそうだ。相談者自身は万引きをしたことはないが、一緒に店に行って外で待ったり、実際に盗んだ商品をもらったことがあるという。
「自分も逮捕されるのでは」と相談者は不安な様子だ。共犯として扱われる可能性はあるのだろうか。星野学弁護士に聞いた。
ーー相談者も中学生のようです。そもそも、年齢的に罪に問われるのでしょうか。
14歳未満の未成年者は刑事責任を問われません。悪いことをしてもよいということではなく、犯罪をすれば児童相談所に通告され、一時保護手続によって身柄が拘束されることがあります。以下では、相談者が14歳以上であることを前提に回答します。
少年法の適用がある未成年者の犯罪については、いわゆる「全件送致主義」が採用されています。犯罪が発覚したとき、原則として検察官・家庭裁判所に事件を送致するものです(例外的に、児童相談所への通告手続がとられる場合もあります)。
未成年者の犯罪は、謝罪や弁償をして「なかったこと」にしてもらうことはできず、少年法に定められた手続によって家庭裁判所の判断を受けることになります。もちろん、全員が少年院に入るわけではなく、状況により、少年院には収容されずに保護司の指導監督を受けながら通常の生活ができたり、処分されなかったりする場合もあります。
ーー相談者は「共犯」になるのではないかと心配しているようです。
共犯の種類には共同正犯、教唆犯、幇助犯があります。万引き行為の一部に関わった場合、たとえば万引きが見つからないように見張りをしていた場合には共同正犯になります。万引き行為には関わっていなくとも、あらかじめ万引きが見つからないように友人と計画を立てていた場合には共謀共同正犯になります。
また、犯罪行為をするようにそそのかした場合、たとえば、万引きした商品を自分に渡すように指示をしていた場合には教唆犯になる可能性があります。手助けして犯罪をやりやすくした場合、たとえば、移動の手段がない友人にお店に行くための自転車を貸した場合などには幇助犯になる可能性があります。
このような事情がない場合、友人が万引きしていることを知っており、止めるよう忠告したのに友人が耳を貸さず万引きを止められなかったとしても、相談者に窃盗罪が成立することはありません。店の外で待っているだけでは窃盗罪の共犯にはなりません。
ただし、盗んだ商品であることを知りながら友人から譲り受けたことについては、盗品等無償譲受け罪が成立する可能性があります(刑法256条)。
ーーでは、盗んだ商品を受け取らなければ問題ないのでしょうか。
そうともいえません。罪を犯していなくても、犯罪に関わる人と付き合う、正当な理由がないのに親の言うことを聞かない、あるいは家に寄りつかない生活をしている場合などは「ぐ犯」にあたるとして、家庭裁判所による所定の判断を受ける場合があります。
ーー万引きを繰り返す友人と、どのように付き合えばよいでしょうか。
慎重に考える必要があります。たとえば、万引きが見つかって店員に追いかけられる友人を助けようと店員を突き飛ばして怪我をさせた場合、最悪のケースでは強盗致傷罪の責任を問われるかもしれません。
友人の行為を学校、保護者に相談することも考えてみてもよいでしょう。相談者が友人の万引きを公にすれば、嫌われる可能性もあります。しかし、それは友人の犯罪がエスカレートするのを防ぎ、間違った考え方を直す機会となります。
友人のことを思った行動をするのが真の友人ではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
星野 学(ほしの・まなぶ)弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。
事務所名:つくば総合法律事務所
事務所URL:http://www.tsukuba-law.com