Text by CINRA編集部
映画『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』の予告編と著名人コメントが到着した。
2月23日に公開される同作は、ジャン=リュック・ゴダール監督が2022年9月に亡くなる直前まで手を加え続けた短編映画。ゴダール監督自身が「最高傑作だ」と語ったという。
予告編は製作を担ったサンローランプロダクションに映画の話を持ち掛けた時期から同作が生まれた経緯を振り返るもの。「ちょうどプリニエが政治と革命という昔の情熱に回帰したように、また映画が作れるだろうか」というゴダール監督の呟きで締めくくられている。
ゴダール監督に最も近いスタッフだったと言われるファブリス・アラーニョは「『イメージの本』(2018)以降、ジャン=リュックはシャルル・プリニエの「偽旅券」(1937)という多くの章からなる小説の翻案を望んでいました。それぞれの章には、1917年の10月革命から1930年代の間に生きたさまざまな人物の存在が認められます。彼の考えは、そのなかの2人に焦点を当てて物語を発展させることで、そのうちの1人の名はカルロッタでした」と述懐する。
【蓮實重彦のコメント】
死後のゴダールは、存在しない作品の予告編とやらでまたしても見るものを驚かせる。ゴンクール賞受賞作家シャルル・プリニエの『偽旅券』の映画化が叶わず、その詳細なシナリオ構成をキャメラ担当のアラーニョに託し、これは自分の最高傑作だと呟いたというのだから。実際、作中に再現される『アワーミュージック』の一景を目にしただけで、誰もが涙せずにはいられまい。
【堀潤之のコメント】
自作『アワーミュージック』(2004)をアップデートしつつ、スペイン内戦からアラブの春に至るあらゆる闘争をごった煮にした本作は、シモーヌ・ヴェイユやハンナ・アーレントに連なる新たな抵抗する女性の人物像「カルロッタ」が生まれようとする現場に我々を立ち会わせてくれる。
【菊地成孔のコメント】
21世紀 / 1人ジガ・ベルトフ集団 / 最後のヌーベル・ヴァーグ / 最新作 / 輝き / 20年後の素顔に驚かされる /サンローラン / 遺書 / 市場なきクール / 最短の最高傑作 / これこそがコラージュ / これこそが反資本主義 /
【万田邦敏のコメント】
私は思春期に、まるで宇宙人が作ったかのようなゴダール映画に遭遇し、確実に何かを殺され(その代わりに何かを生かされ)、どこかを乗っ取られてしまった。この映画がゴダールの遺言なら、そのすべてを自分の戒めとしようなどと勝手に思い込んでしまうのも、そのために違いない。