2024年F1シーズンに向けて、各チームが新車発表会を行う時期を迎えた。プレシーズンテスト前のため、ニューマシンのカラーリング披露にとどまる場合もあるが、発表会において明かされる事実、首脳陣のビジョンなどから、見えてくるものは多い。この連載では、各チームの2024年発表会で披露されたニューマシンとチーム体制についてまとめる。今回はフェラーリとその新車『SF-24』を特集する。
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2月12日に新車をお披露目したアストンマーティンに続いて、13日に新車を発表したのがフェラーリだった。
例年、フェラーリはファクトリーがあるマラネロに多くのゲストとメディアを招待して豪華な新車発表会を催してきたが、今年はゲストは少数に限られ、新車の公開はカラーリングのみをオンラインで公開するにとどまった。
その後、フェラーリはファクトリーがあるマラネロに隣接するフィオラノにある自社コースでシェイクダウンを行った。
新車『SF-24』の第一印象は、「フェラーリにしては、大人しい」というのが正直な感想だ。フェラーリの新車には時に、デザイナーたちをうならせるユニークなアイデアが見られていた。
例えば、2017年のSF70Hが採用したサイドポンツーン内に設けられていたカーボン製クラッシャブルストラクチャーを、空力パーツとしてサイドポンツーンの外に出してデザインしたことだ。さらに2022年にはバスタブ型のサイドポンツーンを送り出し、デザイナーたちを驚かせたものだった。
ところが、『SF-24』には、そのようなユニークなデザインをいまのところ確認できていない。その一方でノーズにしろ、サイドポンツーンにしろ、オーソドックスではあるものの、現在のトレンドはしっかりと追っているというイメージのほうが強い。
その理由をシャルル・ルクレールが次のように明かす。
「僕たちドライバーにとっては、コース上で高いパフォーマンスを発揮するには、運転しやすいマシンであるのが絶対条件だ」
新車『SF-24』の開発の指揮を執ったエンリコ・カルディル(車体部門テクニカルディレクター)もまた、その声をしっかりと受け止めた。
「ドライバーたちが指摘してくれた言葉に我々は誠実に耳を傾け、彼らが指摘した課題を克服するためのアイデアをエンジニアリングに採り入れ、現実のものにしたのが、この『SF-24』だ」
ルクレールによれば、シミュレーター上ではドライバビリティの高いマシンに進化しているという。
「ドライバビリティという点でこの『SF-24』は、少なくともシミュレーター上は、僕たちが目指しているところには到達していると思う」
昨年は前半戦のスペインGPでコンセプトを変更していたフェラーリ。そのおかげで、シーズン終盤には競争力という点で飛躍的な進歩を遂げ、シンガポールGPではレッドブル以外で唯一の勝利を飾り、ラスベガスGPでもあと一歩で優勝する速さを披露していた。
それがカルディルをはじめ、フェラーリの開発陣が新車『SF-24』をコンサバなマシンにした最大の理由だろう。したがって、『SF-24』は昨年の終盤戦より確実に速くなっていることだろう。
しかし、それがレッドブルを逆転するほど速いのかどうかは、レッドブルの新車の詳細を確認するまではわからない。