「割のいいバイト」と聞くと“ラクして稼げる”というイメージが浮かぶが、特技を生かしてめったに出来ない経験をすることも、その一つになるかもしれない。自身のバドミントン経験を活かして「私立中学校の部活コーチ」をしているという40代の男性(東京都)は、こう語る。
「きっかけは、テレビで学校の外部指導者(部活指導員)という仕事を知り、仲介会社に登録したことからです。時給は2000円で資格はありませんが、今年はコーチ2という各競技の指導者としての資格を取る予定です。向き不向きはあると思いますが、割はいい方だと思います」
部活動指導員とは、部活指導にたずさわる外部職員のこと。学校に直接雇われる場合もあるが、男性の場合は中学校から業務委託された仲介業者を通じて契約している。
男性は普段はスポーツと関係のない自営業の仕事をしており、隙間時間を使って指導員をしている。ただ、お金のためというよりも、この仕事が素直に気に入っているようだ。就任したのは昨年度の途中から。実は前任のコーチは生徒からの評判が悪く、生徒からクレームが入り「実質クビ」となったそう。部活指導員の仕事について、編集部では男性に詳しく話を聞いた。
「大会がある月は引率があり9~10万円、夏休みは12~14万円くらい」
もちろん指導員になるには、ある程度の実績や知識は必要だ。男性のバドミントン経験は「中学生の時に団体戦で都大会出場、個人戦では3年生の時にブロック大会出場、その後は社会人サークル程度」だという。指導者としては、自身の息子が中学生のとき、公立中学の保護者ボランティアでコーチを務めていたことがある。
「勤務は部活のときだけで週3~4日です。平日は1日1時間半で試合前の1週間は2時間、土日は3時間ですね」
「時給2000円で、月収は大会がある月は引率があるため9~10万円、8月は夏休み部活があるので12~14万円くらいになります。大会が無い月は大体7~8万円ですね。大会では部活指導員の契約書を主催者に示すのですが、そのとき学校側は仲介会社に時給3500円払っていることを知りました」
求められる役割としては、生徒の力に応じた適切な練習方法の導入や、忙しい教員に代わって部活中の生徒を見守ることだ。
「学校から言われているのは、『生徒を心身共に鍛えてください』程度です。都大会出場や全国大会などの目標はありません」
実際、練習メニューはすべて男性が作っているという。顧問の教員は「たまに部活中に職員室に行くと他の生徒と面談などをしています」とのことで、ほとんどコーチにお任せ状態だ。
就任当初は「おっさん出来るの~?」という雰囲気
しかしそんな状態だからか、前任のコーチはいい加減な面があったようだ。
「生徒からは『前にいたコーチがタバコ臭かった』と聞いたことがあります。そのコーチは10月から入って3月に辞めたそうですが、同時に顧問も異動になり、新しい顧問になった教員も競技未経験者でした。
しかも生徒たちにヒアリングすると、前年は何故か試合に出場していませんでした。私は息子の中学校でコーチボランティアをしていた経験から、試合の時期もわかっていたので『あー、それは可哀想だったなぁ』という状況からのスタートでした」
前任のコーチは試合の日程確認や参加申し込みをしなかったのだろう。いくら高い目標を求められていないといっても、全試合スルーは酷すぎる。
その上、男性が指導を引き継ぐと、基本的な練習すら出来ていなかったことがわかった。
「私が任された生徒たちは完全に初心者レベルで、練習メニューすら無く顧問も未経験でした。指導者は私一人で、練習方法を覚えさせるなどゼロからのスタートでした」
また前任者の辞め方のせいだろうか、男性が就任した最初は、「生徒は警戒心あるような感じでした」とも振り返る。
「特に男子は反抗期真っ盛りみたいな感じで『おっさん出来るの~?』という雰囲気でした。ですから『試合形式でおじさんとちょっとシングルスでやろうか』みたいな感じで生徒たち全員ぶっ倒しました(笑)。ですので、生徒たちは素直に指導を受けてくれています。男子は単純です(笑)女子は最初から素直でした」
とにかく「楽しくやろう」と接していたことも、生徒の信頼を得ることに繋がった。
「よく考えたら……割は良くない?かもしれませんね」
男性はこの仕事に必要な能力についてこう語る。
「コーチというのは上手い下手や経験の有無というより、練習メニューを作れるか、それをいかに生徒に分かりやすく教えられるかだと思います。そして、一所懸命やっている生徒をどれだけ正面から受け止められるか、でしょうか。もちろん、ある程度の技術スキルは必要ですし、経験も必要かもしれません。よく考えたら……割は良くない?かもしれませんね(笑)」
そうは言っても、お金では買えないやりがいを感じているようだ。
「まあ、コネも資格も無い条件で私立中学校の部活コーチなんて激レアですから、私は楽しんでやっています。お金も大事ですが、割がいい悪いは楽しめるかどうかじゃないですかね」
今後の目標は「都大会出場」だそうで、「たとえ中学生から始めたとしても、努力次第で上に這い上がって行けるという物語を作ってあげたいと思っています。ジュニアからやっている子たちをぶっ倒していく下剋上の道を」と意欲を見せた。
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