2024年02月12日 07:31 弁護士ドットコム
「婚活パーティーで出会った男性との2度目のデートを断ったら、食事代を請求されて困っている」。婚活中の女性から、弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
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相談者によると、初デートの日は相手の男性に食事を奢ってもらったという。会計時に「支払う」と申し出たが、断られたそうだ。
ところが、2度目のデートの誘いを断ると、男性は豹変した。「ご馳走した意味がなくなった」「食事代3000円を指定の口座まで振り込んで」などのメールが届いたという。
相手の要求通り支払うべきなのか。このまま無視してよいのか。澤藤亮介弁護士に聞いた。
ーー相談者は、食事代を支払うべきなのでしょうか。
相談者が男性に食事代を支払う法的義務はないと思われます。
金銭の支払いなどの法的義務が発生する原因は限られています。主な原因は、契約、不法行為、不当利得に基づくものなどです。
今回のケースのように男性が女性に食事を奢った行為は、民法に記載がある契約の一種「贈与」にあたりえます。その名前のとおり、贈与を受けた側の女性には、食事代の法的な返還義務は当然ありません。
また、女性側が自ら「支払う」と申し出ていることや、初デートで食事代だったことなども加味すれば、贈与があとから無効や取消となって、その結果として返還義務が生じる可能性もまずないといえます。
以上より、男性には、女性に食事代の支払いを求める法的な請求権自体が認められないといえます。
ーー相談者は男性への対応に悩んでいるようです。
先述した法的な検討を前提とすると、法的に支払い義務がないといえる以上、基本的には相手にしない(無視する)という対応でよいかと思われます。
男性からしつこく連絡がくる場合、相談者自身で対応が可能であれば、逆に「どのような法的根拠で請求しているのか」を質問してみるのもいいかもしれません。
男性が単に感情に任せ、駄目元とわかったうえで請求している可能性も考えられます。このような質問をすることにより、自分の言い分に法的根拠がないことを自覚して、連絡や請求をやめる可能性もあると思われます。
ご自身での対応が難しい場合は、弁護士への相談を検討いただくとよいでしょう。男性が女性に何らかの危害を加えるおそれがあるなど、弁護士が女性の代理人に就任したうえで対応したほうがよい場合もあります。詳細な状況を伝えたうえで、今後の対応を相談いただくとよいかと思われます。
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:向陽法律事務所