2024年02月09日 17:21 弁護士ドットコム
ジャニーズ事務所の性加害問題にはじまり、宝塚歌劇団の劇団員や漫画『セクシー田中さん』原作者の急死など、エンターテインメント業界をめぐる問題が相次いでいる。
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こうした状況の下、芸能人やクリエイターの権利が適切に守られていない実態があるとして、ジャーナリストや弁護士らが2月9日、国主導のうえで「法整備が必要」と提言した。
この日から、芸能やエンターテインメントの世界における実演家らの被害実態を調査開始するとともに、オンラインで法整備への賛同署名をすでに集めており、総理大臣、文科省・文化庁・法務省と各政党に提出するという。
この日の記者会見では、故ジャニー喜多川氏から被害を受けたと告白した二本樹顕理さんも賛同者として「性加害を前提として芸能界を志望する人などいない。これから芸能界を目指す人にとって安心して労働できる環境になってほしい」と呼びかけた。
性加害や過重労働による死など、芸能界を取り巻く問題が相次いで報じられて、1月末には日本テレビのドラマ脚本をめぐって原作者が苦悩を公表後に亡くなるという痛ましい出来事も起きたばかりだ。
芸能人やクリエイター側の代理人としてトラブルの相談を受ける佐藤大和弁護士は、契約をめぐる適切な対応は芸能プロダクション側に広がりつつあるとしながらも、今もタレント側に不利な契約が結ばれる実態があるとして「実演家から『今ある法律で解決できないのか』とよく聞かれるが、日本の現状の法律ではクリエイターの地位を適切に守れない」と指摘する。
最も多い相談は「事務所を辞めさせてもらえない」というものだといい、「辞めようとすると、芸名やYouTubeのアカウントも取られて、丸裸で辞めさせられてしまう」(佐藤弁護士)。
今回の署名活動では、国には新たに次のような内容の法整備を求めていくという。
・十分に利益が還元されるように芸能人の権利を明確化する
・ハラスメントや性加害や過重労働などから守るための活動環境の整備
・テレビ局や芸能プロダクションなどの不当な取引の是正
活動の発起人でジャーナリストのたかまつななさんは「韓国では2022年に芸能人の地位と権利を保障する法律が施行され、性被害などのトラブルがあった場合に、芸能人らが相談できる専用窓口ができた」とし、日本でもそのような国主導の相談窓口や人権機関などを作って、芸能人を保護する仕組みが必要だと述べる。
ジャーナリストの松谷創一郎さんも「日本と同じくさまざまな問題が起きながら、法整備を進めた韓国の芸能界を参考にすべき」と指摘する。
松谷さんによると、「韓国ではタレント契約は独占禁止法に基づき最長7年。契約が切れたら一度FA(フリーエージェント)になる」という。
「法整備は芸能人の人権を守るためであることはもちろん、日本社会が映画やドラマなどのコンテンツ、そこに従事する人たちを大切にしたいのかを問うもの」(松谷さん)
たかまつさんは、かつてお笑い芸人だった時代に「先輩の女性芸人が楽屋で胸を揉まれるようなことを見かけていた。私も性被害を受けたことがある」と明かす。
「NOと言えば仕事がなくなるかもしれないと恐怖を抱える芸能人は多い。ジャニーズ問題を最後に、芸能界で横行する芸能人の搾取やパワハラ・セクハラの黙認などを終わりにしたい」
署名サイト 「#芸能人を守る法律を作ろう」
芸能界における被害実態調査 「芸能界におけるハラスメント、性被害の経験に関するアンケート」