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「部下が受け身でチャレンジしない」のは上司にも原因がある? 部下に「自信」を持たせるために押さえておきたいポイント

2024年02月08日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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仕事に対して受け身な部下に頭を抱える上司は少なくないようだ。そうした部下を抱えてしまったら、どうしたらいいのだろうか……。

「部下が前向きに仕事をしてくれない」
「部下が受け身でチャレンジしてくれない」
「部下が私ばかりを頼る」

私が担当する管理職研修の中では、このような課題が挙げられています。皆さんの部下は、いかがでしょうか。今回は、受け身な部下の行動の理由を心理学的に読み解き、能動的にチャレンジさせていく方法について探っていきましょう。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

部下の行動には必ず理由がある

心理学の世界では、「人の行動には必ず意味がある」とされます。例えば、次のようなケースです。

・パートナーの前で拗ねる →パートナーにかまってほしい
・異性に意地悪をする →その方からの注目を惹きたい
・引きこもる →心の安全を得たい

私の管理職研修では、ビジネスの現場で役に立つ心理学「実践心理学NLP」を取り入れており、その中で「部下の行動には必ず理由がある」と伝えています。部下が前向きに行動しない、受け身でチャレンジしない、いつも上司を頼るといった行動にも理由があるわけです。それぞれの行動に対していくつかの理由が見出せると思いますが、以下のように連鎖しています。

部下の行動「前向きに仕事をしない/受け身でチャレンジしない/上司ばかりを頼る」
行動の理由1 →自信がない→失敗したくない→できる自分を保っていたい
行動の理由2 →目立ちたくない→周囲と仲良くやっていきたい→周りから好かれたい

では、このような部下の行動の意味や理由を理解したら、どのように部下の「自信」を育み、成長を支援していったらいいのでしょうか。

部下の「自己効力感」を高めて行動を促す

キャリア心理学の世界でよく引用されるものとして、カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラーの「自己効力感」があります。論文の中ではセルフ・エフィカシーと書かれていますが、課題に必要な行動を成功裏に行う自分自身の能力評価とされ、自信につながるものと理解することができます。バンデューラーはセルフ・エフィカシーに影響するものとして、次の4点を挙げています。それぞれに対応した上司に求められる行動とともに確認していきましょう。

(1)個人的達成:自らが成し遂げた経験
→仕事を任せて、やり遂げさせる。
(2)代理学習:他者の経験を観察すること
→同僚の仕事を見たり、聞いたりすることのできるタイミングを作る。
(3)社会的説得:周囲からの激励や手助け
→定期的なフィードバックや、日頃の声かけを意識する。
(4)情緒的覚醒:安定した心の状態
→組織に心理的安全性を育むコミュニケーションを醸成する。

このような上司の関わりや行動で、部下のセルフ・エフィカシーが高まると、次のような流れを導くことができます。

(1)部下自身が仕事への結果期待を高める。
(2)部下自身が仕事への興味や関心を高める。
(3)部下自身が目標を生み出す。
(4)部下が能動的に行動するようになっていく。
(5)能動的な行動の結果から次の成長につながる学びを得ていく。

(1)から(5)の流れは、アルバート・バンデューラーの考え方を発展させた「社会認知的キャリア理論」の中でも紹介されており、人のキャリア形成を促すものにもなります。

能動的な行動は、学びの多い結果を生み出し、部下を成長させていきます。上司としては、部下のセルフ・エフィカシーを高める関わりや、セルフ・エフィカシーが高まりやすい組織づくりを進めていき、部下自身が行動の結果を振り返るタイミングを作っていきましょう。仕事の結果を振り返るタイミングが、部下をさらに成長させていきます。

ここまで、仕事に対し後ろ向きな部下の自信を育み、成長を促していく方法について、キャリア心理学をベースに紹介してきました。部下は目の前の仕事の時々で、様々な心の動きを持っていきます。そして、そこには意味があります。部下自身の心の動きや意味をしっかりと把握し、効果的な関わりを心がけてください。それが、皆さんの組織成果を高めていきます。