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ニットはほっこりではなくクールでカッコいいもの──セントマ出身デザイナー「カカン」が24AWで本格デビュー

2024年02月06日 22:51  Fashionsnap.com

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 デザイナー工藤花観が手掛ける「カカン(KAKAN)」が、2024年秋冬コレクションで本格デビューする。

 デザイナーの工藤は1998年、東京都生まれ。高校卒業後、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins、以下セントマ)に進学。ジュエリーデザインなどを専攻した。工藤は「ファッションデザイナーになりたくてセントマに行ったが、コンセプチュアルなことが好きだったこともあり先生からファインアートを勧められた」とした上で「ウェアラブルなものへの興味は尽きなかったので、アートとジュエリーの手前にファッションがあるのでは、とジュエリーデザインを選んだ」と当時を振り返った。セントマのファウンデーションコース卒業後、イタリアのイスティトゥート・マランゴーニに入学。在学中、コロナ禍のため一時帰国をし、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」や「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」などのブランドのほか、「シャネル(CHANEL)」のビューティラインなどで1年半経験を積んだ。イスティトゥート・マランゴーニ卒業後、帰国。ヨーク ギャラリー(YOKE GALLERY)での卒業制作展を経て、今回のデビューに至った。工藤は「今の自分があるのはコスメ業界を経験したからだ」と回想する。
「当時、ファッションブランドを立ち上げようと既に決めていた自分にとって『シャネルの服が高価で買えなくても、適齢期を迎えて一本目に買ったシャネルのリップが誰かの鞄に入っている』という誰かの事実が、とても健康的だと思えました。その人らしく生きるきっかけとなるような服を作り、楽しみたいなと思えたのはこの経験があったからだと思います」(デザイナー工藤花観)。
 カカンは工藤と、文化服装学院ニットデザイン科卒業後、第一ニットマーケティングで3年、「ヨウジヤマモト」で約6年経験を積み、現在は企業のニットウェアデザインを手掛けているパタンナーが二人三脚で運営。工藤は「彼はヨウジヤマモトではアートピースに近しいものを、現在はいわゆる工業デザイナーとしてハイゲージニットの経験も積んでいることから、ほかのニットブランドとは違う強みがあると思う」とコメントした。
 本格デビューとなる今シーズンから、自身初となる展示会を開催。パタンナーや生産工場など、量産体制を整え、卸も始める予定だという。デビューコレクションでは、子育てをする白鳥の羽に見立てたドレス(13万円)や、袖口に手編みを取り入れたプルオーバー(9万円)、「ニットの良さを引き出すのに布帛はマスト」という思いからデザインされたダブルブレステッドジャケット(11万8000円)、プリーツワイドトラウザー(9万円)、スカート(6万円)などの20型を用意。また、メインコレクションとは別に毎シーズン、各産地の素材を染色せずに製作する一点物のアートピースを発表。今シーズンは、秋田の羊飼いが刈った羊毛を、紡ぎ機を用いてニットドレスに仕立てた。
 ニットアイテムを全面に打ち出したことについて工藤は「日常的にニットを着ることが好きだった。自分の中では、ニットは『ほっこり』『かわいい』というイメージではなく、誰でも一番格好よく着こなせるアイテムだと思っているから」と理由を説明。「彫刻のようなニットアイテムを今後も製作したい」と今後の展望について語った。