人形を捨てるときに目隠しをするという話を聞いたことはあるだろうか。人形には魂が宿っているから、という考えが背景にあるが、どうせ迷信だろうと思っている人がほとんどではないか。
しかし世の中には、人形にまつわる恐怖体験をしたことがあるという人もいる。埼玉県に住む20代後半の男性は、
「これは私が小学校低学年くらいのときから高校2年生になる頃の、祖父母の家にあった女の子のアメリカ人形の話です」
と書き始める。「アメリカ人形」とはアメリカ製の人形か、アメリカで購入した人形だろう。祖父母の家にあったなら、古い時代の人形とも考えられそうだ。
「その人形から見られているような視線、不気味さを感じるようになりました」
男性が小学校低学年の頃、母方の祖父母は町工場を経営していた。祖父母の住む古い家には、母親と、その妹である叔母が昔弾いていたピアノがあった。その女の子の人形は、ピアノの上に置かれていた。
「最初の頃は気にも留めず、変わった人形が置いてあるなという感じでした。ただそのあと数年経つうちに段々とその人形から見られているような視線、不気味さを感じるようになりました」
と、徐々に恐怖心を抱くようになっていった。
小学校中学年に上がる頃、祖父母の家を建て直すことになった。ピアノは処分されて、その上に座っていた人形は「敷地内にある工場の事務所にある本棚」に移された。
祖父母の家の隣には叔父の家が建てられた。そこで暮らしていた従兄弟が、あるとき高熱を出して体調を崩すと……
「悪夢にうなされてその子が言うには、その人形が何度も夢に現れ、その子自身は人形の在り処もそれまで全く知らなかったそうですが、人形のある方向を指さして、とても怖がる様子だったそうです」
従兄弟は高熱で幻覚を見ていたかもしれないが、指を差した方向が人形の置き場と一致したのは、ただの偶然なのだろうか。また男性は、母と叔母からこんな話も聞いた。
「2人が子どもを授かり出産する前日に、人形が真っ暗な工場の中で、必死に地面を掘り返すという奇妙な同じ夢を2人とも見たそうです」
従兄弟の話を聞き、母親と叔母はこの体験を思い出して恐れたようだ。2人で人形供養をしてくれる寺へ人形を持ち込み、「お経をあげてもらい、釜の中へ入れて焼いてもらったそうです」と顛末を書いている。
だが、これで話は終わりではなかった。「その後に住職さんが体調を崩してしまった」とのこと。
「住職さんがお寺の廊下を歩きながら、ふと人形を焼いた釜の方へ目をやると、釜の外、それも少し離れたところへ人形の腕が落ちていたそうです。人形の腕を拾い、もう一度お経をあげてから焼いたところ、体調も良くなった……」
この出来事に住職も驚いたそうだ。不思議な人形の正体について、男性は最後にこう書いている。
「そのアメリカ人形には母の妹に昔好意を抱いていた方の生き霊が取り憑いていたそうです」
真相は不明だが、亡くなった人の霊より生き霊のほうが恐ろしいとはよく聞く話ではある。なおさら供養してもらってよかったと言えるだろう。
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