高橋文哉は、俳優デビューして5年。主演ドラマ、映画、CMなど、その快進撃はとどまるところを知らない。当の本人はと言うと、「まだまだ」といった鋭い表情ではるか先を見据えていた。満足をしない自分への飢餓がガソリンとなり、次の大きな道を拓いているのだろう。こうした進化に、観る者も惹きつけられるわけだ。
2024年の最初の出演作は、竹内涼真主演による『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』となった。高橋さんは、竹内さん演じる間宮響と終末世界で行動を共にすることになる柴崎大和役として登場。喧嘩っぱやく、熱い側面を持つ元とび職人の大和は、いつも無我夢中で考えるより先に行動するタイプで、どこか初期の響を彷彿とさせた。何よりも、大和は高橋さんがこれまで演じることのなかった役柄となり、まさに新境地を踏んだといえる。
劇中で大和が宿した「愛する人を必ず助けたい」という一途な想いは、俳優業にメラメラと全身全霊を傾ける今の高橋さんの真っすぐさに通じるよう。その想いをインタビューで聞いた。
本格的に挑戦したアクションシーン「グッときました」
――高橋さんは「君と世界が終わる日に」Season1をリアルタイムで視聴されていたそうですね。人気シリーズの劇場版に、ご自身が足を踏み入れた感想からまずは教えてください。
現場に入った瞬間に、涼真さんやスタッフの皆さんがこれまで培ってきたものが、すごく見えたような印象を受けました。現場がかちっと固まっている感じがしたんです。それは4年という長い期間をずっと一緒にやってきているからこそ生まれる環境なんですよね。自分もこのパワフルさに負けないように、しっかりと熱量を持ってエネルギッシュにやっていきたいと奮い立ちました。
――演じた大和は派手なアクションシーンも多く、特に窓を突き破るシーンは衝撃的な格好よさでした。
ありがとうございます! 窓を突き破るところは自分で観ていても格好いいと思いました(笑)。撮っているときは、まさか曲に載ってガラスを突き破るとは想像していなかったので、あそこはゾクっとしましたしグッときました。大和は自分としてもやっていてすごく面白い役だったので、その魅力が出ていたシーンだったのかもしれません。
――本格的なアクションに挑戦してみて、実際に身体を動かすと気持ちも乗ってくるなど、新たな気付きはありましたか?
アクションシーンで転がるようなときでも、例えばちょっとくらい痛いほうがその世界にぐっと入れるのは発見でした。物理的なことが影響することを、この作品ではすごく体感しました。涼真さんとのアクションシーンも、涼真さんが本気の力で耐えてくださったので、なるべく力を抜かないように、本当に首を絞めさせてもらったりもしましたし。常に危険はないように、けど本気で、いい塩梅を二人で探りながらやっていました。
竹内涼真との共演が「何よりも大きかった」
――竹内さんとの初共演は刺激的でしたか?
はい、すごく。僕は『きみセカ』撮影のときまで、映画では『仮面ライダー』シリーズ以外で主演をやったことがなかったんです。今回の現場に入って、僕からすると涼真さんが“まさしく”という主演像でした。涼真さん自身は意識していないそうなのですが、全キャストに気を遣って話しかけたり、現場をなるべく揉んでゆるくできるようにしてくださっていて。それでもいざ本番になった瞬間は、きゅっとしめてくださって、すごくメリハリがあるんです。それでいて包み込んでくれるような雰囲気もあって…。もう、涼真さんのことは語り尽くせないです!
映像に映っていない、残っていないところでの涼真さんの現場での振る舞い、立ち回り、現場での“いかた”が本当にすごいなと思いました。先日、連ドラの主演をさせていただいたときにも意識して思い出したのは、やっぱり涼真さんの姿でした。
――“竹内涼真”という俳優の魅力、高橋さんの想いを強く感じるエピソードの数々ですね。
この作品で得たものはアクションの経験ももちろん大きいですが、涼真さんのもとでお芝居ができたことが何よりも大きかったです。もう1回すぐに涼真さんとお芝居をさせていただきたいと思いましたし、今でも変わらず涼真さんと一緒にやりたい…。また会える日のために頑張れることも、この作品から受け取ったものなのかなと思いました。
――今後、竹内さんと共演するならどんな役柄でご一緒したいですか?
兄弟役をやりたいです! 涼真さんは僕のお兄ちゃんと同い年ですし、年の差的にも絶対いけると思うんです。こうした生死に関わるようなハードな作品ではなく、ほんわかしたものがいいです(笑)。家のセットでずーっと撮っているような作品で、いつかご一緒してみたいですね。
「相手の役者さんから吸収してお芝居をするタイプ」
――高橋さんの俳優としてのキャリアは現在5年になります。急成長を遂げているイメージもありますが、ご自身としての手ごたえはいかがでしょうか?
よくこうした取材で、「役でどういうことを受け取りましたか?」とか「どういう成長ができましたか?」と聞いていただくのですが、いつもわからなくて(苦笑)。まだ気づいていないんですよね。成長や自分が大きくなったという瞬間は、自分では気づかないものかもしれないな、と今は思っています。
でも、例えば、『きみセカ』を応援してくださる方に見てもらって、「高橋、芝居うまくなったな」とか「いい顔するようになったね」と思っていただけたら、それはすごくうれしいです。
――本作での大和は、ファンの方以外からもそうした声が届きそうです。
もしも僕のお芝居がいいなと思ってくださるなら、それは共演の皆さんのおかげが本当に大きいと思っています。何というか…自分なりに分析したのですが、どうやら僕は相手の役者さんから吸収してお芝居をするタイプなんです。『きみセカ』だと涼真さんの声やセリフの言い方ひとつで自分の芝居が変わりましたし。なので、皆さんとのお芝居のおかげで、たくさん知らない自分のいい顔が引き出されていたのかもしれない、とも思います。
――ありがとうございました。最後に、劇中では「ユートピア」と呼ばれる希望の都市にある高層タワーが舞台となっています。高橋さんにとってユートピア(=架空の理想世界)とはどのようなものでしょう?
僕のユートピアですか?え~…ないですね。現実でいいです。
――現実がいいんですね。
はい。あとは僕、寝ているときに夢を見ることが大好きなので、そういう話ならあります。
――夢の内容を覚えているんですか?
覚えています。しかも「これ、夢だな」と思いながら夢を見られるという特技があるんです(笑)。それがすごく楽しいです。最近で言うと…でっかい石に追いかけられる夢を見ました。下に土を掘って逃げましたけど(笑)。たまに空を飛んでいたりもするんですよね、最高です!
最近は見たい夢を見られるようにと、寝るときに「空飛びたい、空飛びたい、空飛びたい」と念じながら寝るようになりました。そうすると本当に高確率で空を飛べるんですよ! 僕にとってのユートピアかもしれないですね。
(text:赤山恭子/photo:You Ishii)