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J.フロント新社長は“百貨店社長未経験”の異色の経歴 48歳の小野圭一執行役常務が就任へ

2024年01月30日 21:11  Fashionsnap.com

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左:好本達也氏、中:小野圭一氏、右:宗森耕二氏

Image by: FASHIONSNAP
 大丸松坂屋百貨店やパルコを傘下に持つJ.フロント リテイリングが、代表執行役社長を交代することを1月30日の今日発表した。今日開催の取締役会での決議をもって、現取締役兼代表執行役社長の好本達也氏が取締役兼執行役に退き、3月1日付で現執行役常務の小野圭一氏が新代表執行役社長に就任する。

 小野圭一氏は、1975年生まれ。1998年に大丸に入社し、パルコへの出向や百貨店のインバウンド部門の立ち上げ、子会社である人材派遣会社 ディンプルの代表取締役社長、J.フロント リテイリングの財務戦略統括部構造改革推進部長といったグループ全体の多様な職務を歴任。同社執行役には2018年に就任し、2022年からは執行役常務として、現職の経営戦略統括部長およびパルコ取締役、J.フロント都市開発取締役を務めてきた。通常は百貨店社長職を経てのJ.フロント リテイリング社長就任というキャリアパスが定石だが、同氏は百貨店店長および社長経験のない、異色の経歴での登用となった。
 J.フロント リテイリング現代表執行役社長の好本氏は、今回の社長交代の背景について「私が社長に着任した2020年からの4年間は、コロナ禍からの復活と次の成長への道筋をつけることをミッションと考え取り組んできたが、この4年で百貨店やパルコは力強さを取り戻し、業績面でもコロナ禍前の水準への完全復活ができる見通しが立った。その一方で、顧客の価値観や行動の変容が進むなど当社を取り巻く事業環境は大きく変化しており、グループとして中長期的な成長を目指す上では、今後ミレニアル世代やZ世代にどうアプローチしていくかといった新たな課題が生まれている。そのような中で、2024年度から新たな中期経営計画をスタートさせるこのタイミングで経営体制を一新し、成長戦略を力強く推進していくことがベストであると判断した」と説明した。
 同社は、約3年前から次期社長選定の計画を進めてきたといい、グループのさらなる成長のため、従来の百貨店やショッピングセンターの枠を超えた事業モデルへの変革を構想・推進できる強い意志と、実行するためのリーダーシップを持つ人物を次期社長のあるべき姿として設定。その上で、能力や経験に基づいた高ポテンシャル人材の洗い出しや第三者評価の結果に基づいた候補者の選定、指名委員会による個別面談、経営者としての意識付けのための第三者によるコーチングの実施などを経て、小野氏の次期社長就任が決定したという。
 取締役 指名委員会委員長の矢後夏之助氏は、小野氏を次期社長に選任した理由について「従来の社長のようなキャリアパスは経ていないものの、同社の多様な部門で経験を重ねており、グループ全体を第三者的な視点で俯瞰する能力を有している。また、困難な課題に前向きに取り組む胆力も備えており、既存事業の枠を超えてグループを変革し発展させていくのに適任だと判断した」と評価。過去の経験値よりも将来への可能性を重視し、小野氏の社長としての進化が会社の成長に繋がることを期待するとした。
 今回48歳という若さで新社長に就任する小野氏は、直近では現社長の好本氏とともにコロナ禍からの完全復活と成長に向けた準備を推進し、次期中期経営計画の策定にも携わってきたという。同氏はそのような経験を踏まえた上で、「社長就任に際して実感しているのは、グループにとっての変革の重要性だ。直近の業績は、インバウンドを含めたコロナ禍からの回復において想定以上の追い風が吹いたため好調に推移しているものの、外部要因によるところが大きく、持続する保証はないと考えている。現状にあぐらをかかず、今のうちに将来に向けた手をどう打つかによって、2030年やそれ以降の当社の有り様が大きく変わると思っている」と、グループの現状と今後に対する認識について言及。知識や経験は現社長や前社長には遠く及ばないとしながらも、「自身が次期社長に就任することになった背景や意味を考え、自分らしく色々と勉強を重ねながら、会社と社会の未来を考えて、将来のあるべき姿に向けた変革をしっかりと推進していきたい」と意気込みを語った。
 また、今回の取締役会の人事では、同グループ子会社である大丸松坂屋百貨店の新代表取締役社長に、同社現執行役員 営業本部MDコンテンツ開発第1部長の宗森耕二氏が就任することも発表された。小野氏と同じ1998年に大丸に入社し、食品部門を中心に経験したのち、松坂屋上野店や大丸大阪梅田店店長を経て現職を務める同氏は、新社長への就任に際して「私たち小売業は変化への対応が重要な業種であり、変化こそ商機と捉えなければならないと考えている。3年間のコロナ禍で学んだ気付きをベースに将来の環境の変化をしっかり睨みつつ、次期中期経営計画が見据える3年先だけをゴールにするのではなく、2030年やそれ以降の持続的な成長を目指して推進していきたい」とコメントした。なお、現代表取締役社長の澤田太郎氏は執行役員 社長特命事項担当に着任する。