2024年01月28日 09:41 弁護士ドットコム
「社内恋愛の禁止」を就業規則に定めた職場でも、他の人に隠れて、社員同士が付き合うことがあります。
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社員からすれば、「プライベートについて会社から干渉されたくない」という思いがあるでしょう。
「実害」もあるようで、弁護士ドットコムには「就業規則に社内恋愛禁止があり、付き合っていると疑われて減給されてしまった」「社内恋愛禁止は人権問題では?」といった相談が寄せられています。
一方で、「社内恋愛禁止なのに、それを破って付き合っているらしい社員がいる。周囲も気づいていて、職場の雰囲気が良くない」など、職場環境についての悩みも寄せられています。
「社内恋愛の禁止」を就業規則に定めることは、職場環境を守るために仕方ないのでしょうか。あるいは、社員の人権を不当に侵害するものなのでしょうか。島田直行弁護士に聞きました。
——そもそも「社内恋愛禁止」を就業規則に記載していいのでしょうか。
「社内恋愛禁止」を就業規則に記載することに関しては、「就業規則への記載の可否」「記載された条項の法的な有効性」「問題が顕在化した場合の対処」という3つの視点から整理してみましょう。
まず、「社内恋愛禁止」を就業規則に記載することは、プロセスさえきちんと踏めば可能です。「恋愛といったプライベートなことまで就業規則に記載できるのか」と違和感を覚える方もいるでしょう。
ですが、社内恋愛は"職場"という労働契約を前提にした場を想定したものです。社内で特定の当事者らが独自の世界で浮かれていると、やはり周囲からすれば「ここ職場ですが」と言いたくもなります。
ですから、職場の風紀を整えるという観点から「社内恋愛禁止」という項目を加えること自体は可能です。現実的に入れている企業もあります。
——その就業規則を破った場合は懲戒されるのでしょうか。
ただし、就業規則に記載できるからといって、ただちにその条項が法的に有効となり、社員を拘束する、というものでもありません。
そもそも恋愛というのは、個人の人生観あるいは価値観の中核をなすものです。恋愛は、"たまたまの出会い"から発展することの多い感情です。社内恋愛にしても"たまたま出会いが職場だった"ということもあって当然です。
それを一方的に企業の論理で「風紀を乱すから認めない」というのは、明らかに個人の内面への不当な介入です。特に最近では、LGBTの活動をはじめ、多様な愛情のあり方を受け入れていこうと社会が動いています。
その中で企業が「あるべき恋愛」を一方的に決めつけるのは、企業の姿勢としても間違っています。ですから、仮に就業規則に「社内恋愛禁止」の条項があったとしても、その条項だけを根拠に「社内恋愛をしたから懲戒」といったことはできないでしょう。
そもそも、社内で結ばれる2人がいれば、周囲が見守り「よかったね」と言える職場こそあるべき姿です。
——懲戒処分になる場合はないのでしょうか。
就業規則の記載に関わらず、社内恋愛ができるとしても、2人の行為が具体的に業務に支障を引き起こしているのであれば、話は別です。
当然ですが、社員は、労働契約に基づいて労務を適切に提供する義務を負担しています。
たとえば、社内不倫といった不適切な行為があるとすれば、それは企業の信用にも影響することです。ですから、社内恋愛をしたということではなく、それにより企業の信用などを損ねたという意味で懲戒の対象にはなりえます。
誰にとっても素敵な出会いのある職場を目指したいものですね。
【取材協力弁護士】
島田 直行(しまだ・なおゆき)弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)、『院長、クレーマー&問題職員で悩んでいませんか?』(日本法令)
事務所名:島田法律事務所
事務所URL:https://www.shimada-law.com/