2024年01月27日 08:11 弁護士ドットコム
飲食店で同じ料理を頼んだのに、男性に比べて「質を落とされた」「分量を減らされた」とうったえる女性がSNSで続出しています。
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ある女性が箱根の旅館で食事した際、男性には普通にカットされたステーキが出されたのに対して、女性にはステーキの切れ端を寄せ集めたもので、分量も男性より少なかったそうです。
ほかにも、夫婦でオムライスを頼んだら、夫に比べて明らかにワンサイズ小さかったという女性や、喫茶店で夫には普通サイズのピザが出てきたのに、自分には具も少なく、大きさも小さいピザが出てきたという女性がいました。
同じ料金の同じ料理をオーダーしているにもかかわらず、女性というだけで勝手に質を落とされたり、減らされたりすることに法的な問題はないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
同じ料金の同じ料理を頼んだのに、明らかに他の人より質量が劣る料理が提供された場合、理論上は、店に債務不履行責任(民法415条)が生じると考えられます。
つまり、店と客は契約を結んでいて、店は予め決められた質量の料理を予め決められた料金に基づいて提供する義務が課されています。それを性別や年齢に基づいて無断で変更する裁量はないのです。
では、債務不履行になるとして、客は店にどのような対応を求めることができるでしょうか。
第一に考えられるのは「料金に見合った料理が提供されていない」として、他の人に提供された料理と同等のものを改めて提供するよう求めることです。
まともな店であれば、このような客の苦情に対応しないわけにはいかないので、これで大体のケースは解決できるのではないかと考えられます。
第二に考えられるのは、通常の質量と自分に提供された質量の分の差額を値引く、あるいは支払ったあとで返金してもらう方法です。
ただ、このような差額分の清算は、どの程度の金額にするのが妥当かで揉めることも少なくありません。店が「特に劣ったものは提供していない」と強弁して、差額分の清算に応じない可能性も否定できないでしょう。
また、後日の返金処理に関しては、食べる前の写真を撮って、領収書を持参して交渉しなければならなくなるという手間もかかります。
複数人と食事に行った際には、その場で「料理を取り換えてください」と言いにくい場合も多く、後日の清算処理のほうがやりやすいと考える方もいるかもしれませんが、現実には料理の取り換えのほうがスムーズではないかと思います。
なお、質量ともに劣った料理を提供された腹いせに、SNSに店名を出して投稿し、拡散するようなことは控えましょう。
仮にそれで、店の売り上げが落ちたり、嫌がらせがあったりした場合には、逆に投稿した人が、店から損害賠償を請求されるリスクがあります。自分が被害者であっても、対応を一歩間違えれば、加害者になってしまいます。冷静さが必要です。
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所
事務所URL:http://nts-law.jp