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上野公園のフェスでも発生、「牡蠣食中毒」になったら「賠償」はどうなる? 飲食業界のスペシャリスト弁護士が解説

2024年01月25日 10:21  弁護士ドットコム

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東京・上野公園の「牡蠣フェス」(1月6日~8日)で複数の参加者が体調不良を訴え、台東区保健所は食中毒の発生を認定し、その被害は35人に及んだ。


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"牡蠣にあたって"、下痢や嘔吐や腹痛などの症状をきたすケースは毎年発生している。「牡蠣フェス」では被害補償の対応がされる見込みだ。しかし、通常の飲食店で牡蠣にあたったと考える場合、店側に損害賠償などを求められるのだろうか。



頭の片隅で「牡蠣は食中毒のリスクがある」と考えながら食べている人も少なくないのではないか。北海道で飲食店を手がけ、飲食業界のトラブルにくわしい中村浩士弁護士に過去の判例を振り返りながら解説してもらった。



●食中毒事件で1人あたり100万円前後の賠償額を認めた裁判例も

——飲食店で牡蠣を使った料理を食べた客が、その後、腹痛や嘔吐や下痢などを発症した場合、「食中毒」だとして店側に治療費や慰謝料などまで請求できるでしょうか



上野公園の「牡蠣フェス」もしかり、感染型の食中毒は通年で発生します。店も利用者も食中毒の起こりやすい食材に対しては細心の注意を払い続けることが必要です。



それでも食中毒が発生してしまった場合、利用客と店との間には、製造物責任または不法行為等の法的責任が生じるものと考えられます。



この責任に基づき、利用客は損害賠償の請求が可能となります。



具体的には(1)飲食代金の返還、(2)病院検査費用や通院治療費、(3)通院交通費、(4)休業損害、(5)慰謝料などが考えられます。



店側は、食中毒発生防止のための注意義務(優良同業他社が通常尽くしている注意義務)を尽くしたことを立証できない限り、賠償責任を認定される可能性が高いと言えます。



ほとんどの店では、総合食品賠償共済といった保険に加入していることが多いので、利用客への賠償は保険会社の基準に応じて支払われるケースが少なくありません。



ですが、利用客が保険未加入の店を相手にする場合や、保険会社の支払基準額に納得がいかない場合には、店に直接適正額を賠償してもらうための交渉が必要となります。



賠償額の相場は通常、10万円前後程度になることが多いと思われます。後遺症の発生や、休業日数が多いときには、より高額の賠償が必要になってくる場合ももちろんあります。1人あたり100万円前後の賠償額を認める裁判例も散見されるところです。



いずれにせよ、症状の原因が店の牡蠣料理にあると示すためには、発症後にはノロウイルスの検査をしたり、治療を受けるなどして、病院の診断書や意見書を書いてもらう必要もあるでしょう。



●仕入れ先やイベント主催者の責任はどこまで問える?

——店の責任だけではなく、仕入れ先、あるいはイベントであれば主催者などの責任まで問うことは可能でしょうか



生食用の牡蠣を提供して集団食中毒事件を発生させた飲食店が、取引先を相手取って損害賠償を求めた裁判では、生食用牡蠣の水産加工販売会社と仕入販売会社の双方に対する賠償請求が認められた例もあります。食中毒事案では、牡蠣を提供した店側だけでなく、仕入ルートに関与した業者の責任も問題となる場合があります。



ただし、イベント主催者らに対する賠償請求のハードルは高いと言えます。2014年7月に花火大会の露店で「冷やしきゅうり」を原因とする500人近い発症者を出した集団食中毒事件で、患者らが起こした裁判を振り返ってみます。



原告らは冷やしきゅうりを調理・販売した露店に対し製造物責任及び不法行為責任による損害賠償を請求するとともに、露店が加わった街商組合や花火大会主催者、地方公共団体に対しても安全配慮義務違反や使用者責任、国家賠償法違反を理由に損害賠償を求めました。



判決は原告35人に対する露店の製造物責任及び不法責任を認めて総額1000万円超の賠償を命じたものの、その他に対する請求は棄却しました。




【取材協力弁護士】
中村 浩士(なかむら・ひろし)弁護士
刑事弁護及び犯罪被害者支援のほか、一般企業法務を数多く手掛ける検事出身の弁護士。 札幌弁護士会・犯罪被害者支援委員会元委員長、日本弁護士連合会・犯罪被害者支援委員会元委員、利酒師、ワインコーディネーター、上席フードアドバイザー。
事務所名:弁護士法人シティ総合法律事務所
事務所URL:https://city-lawoffice.com/