2024年01月24日 20:21 弁護士ドットコム
仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)の弾劾裁判の第13回公判が1月24日、裁判官弾劾裁判所(裁判長:船田元議員=衆・自民=)であり、前回に続き岡口判事の本人尋問がおこなわれた。
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この日は裁判官からも質問があり、岡口判事は「想像力が欠如していた」など反省を口にした。
この弾劾裁判では、過去に岡口判事がかかわった(1)トランスジェンダー当事者の名前変更を認めた審判、(2)脳脊髄液減少症と交通事故の因果関係を初めて認めた判決、(3)新潟水俣病の被害を認定した判決ーーの当事者や研究者が提出した「岡口判事は裁判官にふさわしい」とする意見書が証拠提出されている。
裁判官訴追委員会の古川俊治委員(参・自民)はこれらも例示しながら、合議制で判決に向けた調整をどのようにしているかを質問。岡口判事は、「調整は大変困難。裁判官は経験則、価値観がさまざま。判例や法令の根拠を示したり、相場で説得する」と答えた。
また、証人の竹内浩史判事(津地裁部総括)が、「岡口判事は職員と円満な関係を築いている」旨を証言したことについて、職員とどういう心がけで接しているかも尋ねた。
これに対して岡口判事は、「裁判所の職員がいないと裁判官は何もできないので、職員が働きやすい職場をつくること。私だけでなく多くの裁判官がそう思っている」と回答。具体的な行動として、職員からの飲み会の誘いは断ったことがないことや職員向けに書記官になるための試験に向けた勉強会を開いたことなどを話した。
岡口判事は前回期日の主尋問で、「当事者を紛争から助け出すことが大事」だとして和解を重視していると語っている。事件の半分以上は和解だといい、他の裁判官よりも多いそうだ。
この点について、古川委員が和解のためにどういう心がけをしているかを尋ねたところ、岡口判事は「依頼者の前で代理人を立てる」など、代理人との信頼関係を大事にしていると語った。
福岡資麿裁判員(参・自民)は、そんな岡口判事に対し、日常的には周囲に気配りをしているのに、今回訴追に至ったこととのギャップがあるとして、なぜ裁判所からの注意を受けながら女子高生殺害事件や遺族に関するツイートを続けたのかと質問した。
これに対し岡口判事は、遺族からの抗議後に投稿した自身の裸画像を例に、事件に直接かかわる投稿ではなかったので遺族が傷つくとは思わなかったとして、「想像力の欠如があった」と反省を口にした。
小西洋之裁判員(参・立憲)も、これまで人権を尊重する判決も出してきたのに、どうして遺族を苦しませることになったのかと問いかけた。
岡口判事は、発端となる判決紹介ツイートは、無期懲役では軽いことを伝えるためで、むしろ遺族の意に沿ったつもりだったが見え方が違ったとして、「SNSの怖さ」「想像力が欠如していた」などと答えた。
小西氏はこのほか、遺族が証人になった弾劾裁判の期日で、裁判の進行をめぐって岡口判事が笑ったことを指摘し、「理解し難い」と説明を求めた。
岡口判事は、当時の訴追委委員長だった新藤義孝氏(衆・自民)が尋問で、弁護側からの度重なる異議の中、質問ではなく意見を述べていたことから、傍聴席からも笑いが漏れていたと状況を説明。一方で自身が笑ったことについては「反省している」と述べた。
なお、緊張のためと思われるが、記者席からは質問した小西裁判員の表情も笑っているように見えた。
北側一雄裁判員(衆・公明)は、投稿を振り返ってどう思うかと質問。岡口判事は「やってはいけない投稿をしてしまいました」と答えつつ、「他の裁判官がSNSをしないということにはなってほしくない」とも語った。
一方、階猛第2裁判長代理(衆・立憲)らからの、注目を集めるためにツイッターを運用していたのではないかとの質問に対しては、SNSが登場する前からネットで情報発信していたとして否定した。
山本有二裁判員(衆・自民)は、弾劾裁判は刑事裁判と異なり、裁判官の適性を判断するため、1つ1つの行為を分けて考えなくても良いと思っている旨を表明。これに対し岡口判事は、「弁論を通じて明らかにしたい」と述べるにとどめた。
このほか、杉本和巳裁判員(衆・維新)からは、今後法曹界とどうかかわっていくかという質問もあった。
岡口判事は、判決が出ていないことから、「どうなるか分からない」と前置きしつつ、法曹界とかかわることがあれば、課題となっている法曹の育成について「なんとかできることがないかと考えている」と述べた。
次回期日は2月7日で訴追委側の最終意見陳述がおこなわれる。
弾劾裁判所は14人の裁判員で構成されるが、この日の裁判員は13人。弾劾裁判所のウェブサイトによると、前回に続き辞任した山下貴司氏(衆・自民)の後任が決まっていないようで、田中和徳氏(衆・自民)も欠席。代わりに予備員の大河原まさこ氏(衆・立憲)が出席した。