2024年01月22日 18:31 弁護士ドットコム
故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、被害をうったえる元タレントなどでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の代理人らは、SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)が設置した被害者救済委員会に対して、被害者の「完全な救済」を図ることを求める要請書を提出した。
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代理人らは「(同社が)当事者の会を含む被害者側の声を聞くことなく、救済委員会を立ち上げたことを大変残念に思っている」と表明。「被害者の困難と苦痛に向き合い、被害者の完全な救済を図るため、職務を真摯に遂行していただくことを強く要請する」としている。
「当事者の会」代理人の蔵元左近弁護士は1月22日、オンラインで開かれた記者会見で「救済委員会が立ち上がったものの、表に見える形にならないまま救済を進めようとしていることが残念」と話した。
同代理人の杉山和也弁護士は「会社と交渉しようとすると『救済委員会に言ってくれ』と返答され、救済委員会に聞くと『個人情報だから答えられない、査定を待て』と言われ、とてもはがゆい思いをしている。救済委員会を設置したのがSMILE-UP.という実態を踏まえれば、非常に不誠実」と同社や救済委員会の対応を批判した。
代理人らはまず、救済委員会が2023年12月1日付文書「補償金額算定に関する考え方」で公表した次のような補償金額についての基本方針について、おおむね賛同するとした。
「本件では、(1)被害者が生育途上にある少年たちであり、(2)最初の被害時において何ら性的経験がなく人生における初めての性的経験がジャニー喜多川氏による加害行為であったという者が大半を占め、(3)芸能界における活躍・飛躍を夢見て、あるいは芸能活動の継続のために性交をやむなく受け入れ、さらに、(4)数年にわたってそのような関係を強いられ、いわば性的搾取という状態に置かれていた者も少なくなかった。
加えて、(5)ジャニー喜多川氏が少年らに性的加害に及んでいることは少年らの間で共通認識が形成されていたにもかかわらず、ジャニーズ事務所の関係者に助けを求められない状況であった。また、(6)被害者らのその後の生活上の影響も様々なものがあり、程度の違いこそあれ、様々な深刻な影響を及ぼしているものと見られるものであった…被害者救済の観点から厳密な立証を求めず、『法を超えた』賠償をする観点からも、少なからずその影響があるものとして慰謝料算定をする」
そのうえで、救済委員会に対し、次の点も踏まえた補償金額の算定をおこなうよう要請している。
・慰謝料の対象となる精神的損害のほか、被害者の身体の健康についての被害(疾患、治療費等)に関する補償 ・性加害で貴い人生が損なわれたことについての逸失利益の補償 ・被害を告白される中で精神的な苦しみや被害を受けた被害者の近親者における損害(慰謝料等)の補償 ・SMILE-UP.や救済委員会との交渉のために被害者が弁護士を選任した費用
また、救済委員会が「慰謝料金額を算定するに当たっては、(中略)海外諸国での賠償事案なども参照しつつ適正と考える金額の算定を試みた」と説明していることを受け、1979年7月に15歳の少年が聖職者から性加害を受けた事件で合計9500万USドルの賠償(過去の被害分3000万USドル、将来の損害分として1500万USドル、懲罰的賠償として5000万USドル)の支払いが命じられた海外の賠償事案の裁判例などを参照した金額補償をおこなうよう求めた。