昨年は、深夜の人気番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)が終了。『世界ふしぎ発見!』(TBS系)が今年3月でレギュラー放送終了となるなど、長年愛されてきた昭和・平成の名物番組の終了が相次いでいる。そこで、20代~50代の女性1000人を対象に、20年以上続く番組の中から、終了しても仕方がない“オワコン”だと思う長寿番組をアンケート調査。番組当事者からすれば、ありがた迷惑この上ない企画の1位に輝いた番組は何なのか!?
ご長寿番組“オワコン”ランキング
まず下位を見てみると、10位『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)、9位『サザエさん』、8位『ネプリーグ』(共にフジテレビ系)といった番組が名を連ねる。読者からは、「やっていることが毎回一緒。新鮮味に乏しい」(埼玉県・32歳)といった声が多数寄せられた。
テレビウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさんは、「不支持を集める長寿番組には3つの要素があります」と分析し、その1つ目として「マンネリ(化)」を挙げる。
確かに、『ぐるぐるナインティナイン』は、気がつけば「ゴチになります!」に頼りきりだし、『ネプリーグ』も番宣目的の俳優陣がクイズに挑戦するというフォーマットありき。『サザエさん』に至っては、マンネリというよりも、「止まっている」と言ったほうが正しいかもしれない。
「第6位にランクインした『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)にもいえることですが、同じ企画を繰り返している印象がありますよね。例えば、名物企画である『格付けしあう女たち』は、 杉田かおるさんや梨花さんといったモンスターのような女性ゲストが登場していたころのほうが、勢いがあったと思います」(カトリーヌさん)
しかし、コンプライアンス順守よろしく、他者を傷つけるような企画が難しくなったことで、「同じ企画でも、当たり障りのない内容に変わってしまった」とカトリーヌさんは指摘する。
濃度を薄めたことで番組を見なくなるという人は一定数いるようで、第5位の『行列のできる相談所』(日本テレビ系)は、その典型だろう。「以前の法律相談所のときは面白かったが、今は趣旨がよくわからない」(大阪府・53歳)といった意見があるように、もはや何をもって“行列のできる”としているかわからないだけに、ただの「相談所」だと揶揄する声も少なくない。
「'21年に法律の看板を下ろして、現在のタイトルになったのですが、振り返ると宮迫博之さんや渡部建さん、石田純一さんなど、“本当に相談しなきゃいけない人たち”が出ていたんですよね。そうした理由もあって、法律要素をなくしたのかなって邪推したくなる(笑)」(カトリーヌさん)
また、『ネプリーグ』にもいえることだが、「番宣目的として、よくできたフォーマット」だとカトリーヌさんは話す。
「趣旨がよくわからないということは、裏を返せば、いかようにもできるので“使い勝手がいい”番組。ドラマや映画の番宣に加え、『行列のできる相談所』は、『24時間テレビ』の放送が押したときの緩衝材にもなるなどの利点もある。こういう番組は、意外に終わらないのでは」
1位と2位には大物司会者の名物番組が
4位は『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)。「人のなれそめを聞いてもつまらない」(新潟県・44歳)、「結婚しないのも当たり前な時代に合わない」(千葉県・38歳)といった身もふたもない意見が寄せられたが、カトリーヌさんは「まさに!」と膝を叩く。
「時代観に合わない長寿番組も厳しい。2つ目のポイントに“パワハラ”があると思うのですが、昭和のフォーマットを今風にアレンジしても、どこかで齟齬が生じる。新婚さんに込み入ったことを聞きすぎると、ハラスメントになりかねない。
そのため、最近の『新婚さんいらっしゃい!』は、まるで『激レアさんを連れてきた』に出てくるような奇抜なカップルが多い。あえてツッコみやすい人を選んでいるようにしか思えない(笑)」(カトリーヌさん)
トップ3に食い込んだ『NHKのど自慢』も昭和を代表する番組だろう。意見の多くが、「生演奏がなくなり、カラオケになったことで番組の魅力が減少した」(北海道・49歳)といった“改悪”を指摘するもので、ファン離れが加速していることがわかる。
カラオケに変更した背景には、生演奏では最近の曲に対応できないことなどが挙げられるが、いずれにしても昭和のフォーマットでは無理が生じることから、方向転換を余儀なくされたといっていいだろう。マンネリを打破するために挑戦することが、必ずしも好評を得るわけではないところが、長年続いてきた長寿番組の難しさだろう。
続く、第2位が『サンデーモーニング』(TBS系)。「司会の関口(宏)さんが時代錯誤な意見を言うから」(滋賀県・50歳)と不満が噴出するように、カトリーヌさんも「最後のポイントが高齢化」だと同調する。
「マンネリ、パワハラ、高齢化──。長寿番組に影を落とす3大要素だと思うのですが、この番組は、パワハラと高齢化がそろってしまっている。かつての張本勲さんの“喝”に代表されるような高圧的な雰囲気に加え、演者に若手が乏しい」(カトリーヌさん)
こうした気配を感じ取ったのか、関口宏が勇退することが発表され、今年4月からは元NHKアナウンサーの膳場貴子がメインキャスターとなることが決定している。
「膳場さんは、子育てをするママさんでもあるので、今の時代感覚に合った新しい番組像を作ってくれそう。血の入れ替えが成功したら、TBSは一気に大御所たちへの肩叩きを加速させるのでは」(カトリーヌさん)
第1位は『アッコにおまかせ!』
栄えある(!?)第1位は、まさしく肩を叩かれそうな雰囲気が漂う『アッコにおまかせ!』(TBS系)だ。「和田アキ子さんが衰えていく姿を見るのがつらくて、最近は見なくなりました」(東京都・48歳)、「いつまでもご意見番ぶる姿を見たくない」(岡山県・44歳)という意見からもわかるように、3大要素すべてを満たしている。
「7位に入った『徹子の部屋』(テレビ朝日系)の黒柳徹子さんも衰えを指摘されますが、“浮世離れしたお嬢さん”といった彼女にしか演出できない、あのビジュアルの中で生き続けている。私は、まったく衰えを感じません。一方、アッコさんは周囲に担がれる姿が痛々しく見えてしまう」(カトリーヌさん)
和田は、今年74歳を迎える。“ゴッド姉ちゃん”は、“ゴッドばあちゃん”になった。周りが気を使いすぎると、かえって視聴者は引いてしまうのかもしれない。
「昨年の『ワイドナショー年末SP』に出演されていたウエンツ瑛士さんが話していたのですが、自分がバラエティーに登場するようになって十数年もたつのに、座組みが変わっていないと。
出演する人はほぼ同じで、みんな年を取っているから、“テレビ画面が年を取ってきている”って。出ている人が年を取っている──ということは、見ている自分も年を取っているということ。それを感じさせるような番組は、やっぱり見たくないですよね」(カトリーヌさん)
出演者だけではなく、視聴者にも加齢を感じさせるような長寿番組は、てこ入れが必要そうだ。
オワコンだと思う長寿番組トップ10
1位 『アッコにおまかせ!』 '85年~ TBS系 141票
2位 『サンデーモーニング』 '87年~ TBS系 112票
3位 『NHKのど自慢』 '53年~ NHK総合 96票
4位 『新婚さんいらっしゃい!』 '71年~ テレビ朝日系 81票
5位 『行列のできる相談所』 '02年~ 日本テレビ系 76票
6位 『ロンドンハーツ』 '99年~ テレビ朝日系 65票
7位 『徹子の部屋』 '76年~ テレビ朝日系 54票
8位 『ネプリーグ』 '03年~ フジテレビ系 47票
9位 『サザエさん』 '69年~ フジテレビ系 42票
10位 『ぐるぐるナインティナイン』 '94年~ 日本テレビ系 37票
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など
取材・文/我妻弘崇