パチンコ・パチスロをやっている人ならよく知っているという話だけど、自分が打っている台をトイレ休憩などで離席する際には、下皿に私物を置いてキープする必要がある。この際、何を置くかは人それぞれだ。
ペットボトルのお茶を横倒しにして入れておいたり、メダルをそのまま置きっぱなしにしておいたり、タバコの箱でキープするという人もいる。しかし一番多いのって、“スマホで台キープ”じゃないだろうか。
パチンコ屋の常連にとっては、スマホが下皿に置いてある台=誰かがキープしている台という認識は当たり前。ほぼ全員がこの認識を共有している。今日はこのスマホと台キープの話をしていきたい。(文:松本ミゾレ)
スマホは盗まれないが、デジカメは盗まれた
先日、5ちゃんねるに「パチンコの台取りでスマホ置いてくやつwwwww」なるスレッドが立っていた。スレ主は「盗まれるの怖くないのか」と危惧している。
ま、普通に考えればスマホなんて個人情報の結晶なのでたしかに迂闊に思えるんだけども、これについてスレッドでは色んな意見が書き込まれている。ちょっと引用させていただきたい。
「平和ボケの国」
「いちおう監視カメラがあるから、盗まれても店と警察に言えばいいと思ってるんだろうけど、通報してから犯人が見つかるまでどうすんのかね」
「(仮に盗難されても)追跡余裕なので」
と、スマホで台を確保する人を露骨に見下している人と、盗まれても構わないと割り切っている人。両方の声が確認できた。
僕はしょっちゅうパチンコ屋に行くのでよく知っているが、現実問題スマホで台をキープしている人は大勢いる。これが答えのようなもんで、要はパチンコ客というものはスマホを使って台取りをすることについては、ほとんど当たり前の行為と考えていることが分かる。
見る人が見れば、それを危なっかしい光景と捉えることもあるだろう。実際、そのせいでスマホを紛失してしまったり、盗難被害に遭う人だって、きっといるはずだ。
けれども、結局実際にそういう人が多くパチンコ屋にはいるものだから、当たり前の光景みたいになっているのだ。
そういえば以前、僕が別の媒体でパチンコホールの取材をさせられていたときには、スマホを下皿に置きっぱなしにしている人に混じって、安物の中華デジカメで台取りをしたことがある。
この時ちょっとだけトイレのために離席したに過ぎなかったんだけど、結果としてデジカメは下皿から消えていた。こういうこともあろうかと、デジカメはもう1つ所持していたので取材は問題なくできた。しかし、スマホは見逃すけど、デジカメは持っていく。これもパチンコ屋特有の、一つの文化なのかな? と思ったりもしたところである。
そもそもパチンコホールに来る客の心理は……
普通に考えれば、「スマホで台を確保して自分はトイレに行くなんて、あまりに迂闊では」となるわけだが、そんな状況でもスマホ盗難がほとんど問題になったりしない理由は、パチンコ客の心理にあるのではないかと考える。どういうことかと言えば、パチンコ客というものは一度パチンコ屋に入ると、ギャンブルのことで頭がいっぱいになり、それ以外のことにあまり考えが及ばなくなるのだ。
依存症の人なんてのは特にそうだろう。そして今の時代にまだパチンコをしている人なんてのはほぼほぼ全員依存症だ。自覚がない人はみんな「適切にギャンブルと向き合ってる」と思ってるだけ。
そういう人たちなので、仮に自分の近くに、長時間下皿にスマホが放置されていたのを確認したとしても「あ、盗もうかな」とかではなく「なんだよ、打たないならさっさとスマホ持って帰れよ」と考えるのである。そのキープされている台が美味しいゾーンだったりすると特にそう感じるのだ。
依存症だからこそ、例えば隣の台でスマホが放置されていても盗もうと思わないというか、「それよりも今自分が打っている、目の前のこの台をギャフンと言わせたい」に思考に支配されている。結果として、何故かパチンコ屋ではスマホ盗難は起きにくいという話になる。
これがたとえば、路上だったりカフェとかだったりすると、被害頻度も高まりそうなんだけど、ギャンブルのことで頭がいっぱいの人ばかりの施設では、最初からスマホを盗むために入店してる危険人物以外は見向きもしないと考えて、ほぼ間違いない。それぐらい異常な空間なのである。
治安が良いんだか悪いんだか分からない謎の施設。それがパチンコ屋なのだ。あと、元も子もないことを言うと「台確保のためにスマホを使っていて、それで盗難されたら損だな」みたいなリスクに考えが及ぶような人間は、そもそもパチンコ屋になんか来ないのだ。