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家出少女を自宅に連れ込み有罪→わずか3カ月後に児童買春 「パパ活相手を募集したのは被害者で…」被告人の弁明

2024年01月19日 10:21  弁護士ドットコム

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大阪地裁は2023年12月、児童買春、児童ポルノ禁止法違反で起訴された30代の男性に対して懲役6月(求刑、懲役1年)の実刑判決を下した。


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男性はそのわずか3カ月前、家出した少女を自宅に連れ込んだとして、わいせつ誘拐罪などに問われ懲役3年(執行猶予5年)の判決を下されたばかりだった。公判では検察官が被告人を「何もわかっていない」と厳しく糾弾する一幕もあった。(裁判ライター:普通)



●再起を目指す転居先を探す中での犯行

被告人は大学院を卒業後、会社員として働いてきたという。公判では、スーツを着用して姿勢を崩すことなく、下も向かず真っ直ぐ前を向いて座る姿が印象的だった。



起訴状によると、被告人は事件当時15歳の女子児童に1万2千円を渡して、カラオケ店内にて性器等を手指で触ったとされている。被告人は起訴事実を認めた。



検察官の冒頭陳述、請求証拠等によると、被告人は事件の約3カ月前にも、家出志願の少女を自宅に連れ込んだとして、わいせつ誘拐罪、児童ポルノ禁止法、児童福祉法違反に問われ、懲役3年(執行猶予5年)の有罪判決を受けていた。判決後、会社を解雇された被告人だったが、次の職場が決まり転居先の物件内覧をしていた。その際に、被告人はSNSで「パパ活」と検索し少女を誘い出し、今回の犯行に及んだという。



●交際相手も把握しきれていない犯行の原因

弁護側の請求証拠は多岐に渡った。



被害者家族との70万円の示談書と、その家族からの執行猶予付き判決を希望する嘆願書。被告人による、被害者と家族それぞれに向けた謝罪文。被告人の父や弟も今後の生活を監督するとの誓約文を作成した。その他、性依存改善のクリニックに通院して治療を受けており、ボランティア活動や保釈以降日記を毎日つけるなど、十分に反省しているとも主張した。



情状証人として、被告人の交際相手が出廷。今回の事件を起こしたことに失望したが、今後も交際を継続して、将来的には結婚を視野に入れていると証言した。



証人によると、被告人は目の奥が笑っておらず、人をあまり信用していない人物だと感じていた。しかし事件後の会話などから、変わろうとしている意思が感じられ、もう1度だけ信じるつもりになったと語った。



検察官からは証人に厳しい質問が続いた。



検察官「再度の犯罪もですが、別の女性に手を出していることは気にならないのですか?」 証人 「顔を合わせての対話で真剣に考えてくれていると感じています」検察官「なぜ今回、犯行を行ったかは聞きましたか?」 証人 「転居に伴い前の家が売れるか、大阪へ転居の不安などのストレスがあったと」検察官「ストレスがあるとパパ活をするんですか?根本の原因は把握してますか?」 証人 「その辺りはまだ」



その他、過去に被告人が怒った際に「恐い」と感じたエピソードなどを引き出し、証人による監督には不安が残ると主張した。



●「(パパ活相手を)募集をしていたのは…」と他責も

弁護人による被告人質問では、まず事件当時の心境について供述した。前刑の裁判時は、元の職場に戻れると考えていたものの、判決後に解雇され大きなショックを受け、事件の日も精神的に落ち込んだ状態が続いており、正常な判断ができていなかったと弁明した



しかし、その後家族が亡くなったことにより、家族で協力する大切さを知り、対話を重視するようになったとし、再度の犯行を行わないためSNSは削除し、カウンセリングに通っていると明かした。



更生への環境を整えつつあるとも感じたが、示談に応じた被害者家族への思いを聞かれると「(パパ活相手を)募集をしていたのは(被害者)本人ではあるが、悪いことをしたと思っています」と供述するなど、他責の思いがにじみ出ている場面もあった。



●検察官から「あなた何もわかってないね」と糾弾

検察官からの質問では、弁護側の質問でも垣間見えた他責の思考や事件に向き合う姿勢について厳しい言葉が続いた。



検察官「前刑の裁判では、事あるごとに家族と対話していくと供述したようですが」 被告人「会社に雇用される前提と考えていたので、安定するまで自分が頑張らなければという思いが強くて」検察官「頑張るとしても、そういうときに支えてもらうために対話をするのでは」 被告人「自分は心を開いているのですが、噛み合わないことが多くて」



前の会社に雇用されることで、社会貢献と立ち直ることができると思っていたと供述する被告人。しかし解雇されたことによって、大きなショックと将来に対する不安で何も考えられなくなったという。



検察官「この法律(児童ポルノ禁止法)、なんのためにあると思っていますか」 被告人「判断が乏しい未成年が安易な方法で生計を立ててしまうということは、健全な社会が生まれないことになるので」検察官「健全な社会とはなんですか」 被告人「労働でなく、そういう形で対価を得るということでない社会というか」検察官「あなた何もわかってないね。相手はパパ活やってお金もらえているのに、どうして自分が?(注:どうして大人の自分だけが逮捕されるのか?)って思っている人たくさんいるんです。この法律が誰を保護するためのものか、よく勉強してください」 被告人「そのようには思ってはいませんが、そう思われても仕方ないと思います」



判決では、自身で「パパ活」と検索し対象を探し、15歳と知りながらの買春行為は悪質であり、性の対象として見るのは規範意識が乏しいと、実刑となった理由を説明した。