Text by CINRA編集部
河崎秋子『ともぐい』と万城目学『八月の御所グラウンド』が『第170回直木三十五賞』を受賞した。
『ともぐい』は、明治後期の北海道の山で猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男・熊爪の運命を、図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化が狂わせていく物語。1979年生まれの河﨑秋子は北海道で羊飼いの仕事を経て2015年に小説家デビューし、2度目の『直木三十五賞』候補で受賞となった。
『八月の御所グラウンド』は青春を怠惰に過ごす大学4回生の朽木が人数合わせで草野球大会に参加するが、助っ人の「えーちゃん」がもうこの世にはいないはずのある人物に瓜二つなことが気になり始め、まさにその人だという状況証拠が積み重なっていくという物語。万城目学は『直木三十五賞』6回目のノミネートで受賞となった。