2024年01月16日 19:01 弁護士ドットコム
アマゾンジャパンと直接業務委託契約を結んだ個人事業主が配送する「Amazon Flex」に登録するドライバーの20代男性が1月16日、労働環境の改善を求めて、加入した労働組合を通じてアマゾンジャパンに団体交渉を申し入れた。
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男性は「Amazon Flex ユニオン」に加入。「低賃金で労災保険もなく、アカウント停止(Amazon Flexの個人評価システムで解雇相当)にいつ追いやられるかわからない不安定な状況で働いている」と訴え、改善を求めている。
申し入れ後に開かれた会見で、男性は「1時間に20個以上の荷物を配送しないといけないオファーが多く、未配達で低評価を受けないようにするためには、7~8時間車を走らせ続けざるを得ない。休憩を取る時間がなく、トイレを我慢したり、信号待ちの間におにぎりを食べて食事を済ますこともある」と厳しいドライバー事情を訴えた。
Amazon Flex ユニオンは、総合サポートユニオン物流支部 Amazon Flex 分会の位置付けで結成された。
ユニオン側によると、Amazon Flexでの働き方は、アマゾン側からの業務オファーをドライバーが選び、デリバリーステーションに出勤し荷物を積み込み、配達エリアで各戸に配達する流れだという。
運送業者を介して配達する形態などと異なり、5時間や8時間など規定時間内に指定の配達数をこなすシステムのため、1時間当たり20個以上など配達数が多く、時間に追われ、休憩を取れないこともあるという。
アマゾンジャパンと直接業務委託契約を結んでいるため、ドライバーの評価はアマゾン側でおこなう。個人評価システムのアルゴリズムで判定され、「良い」「普通」「要改善」などと表示される。ユニオン側は、基準は不明で何を意味するかも曖昧だといい、低評価だとアカウント停止(実質的には解雇)される可能性が高まるため、ドライバーへの過度のプレッシャーになっていると指摘する。
報酬についても、Amazon Flexのホームページ上では、「1時間当たり最大1886円の報酬を得られる」と書かれているが、自動車に関する税負担や燃料費や維持費などは個人負担のため、「最低賃金と同程度の報酬で働かされている」(ユニオン)と批判している。
ユニオン側は主な要求として、(1)最低支払報酬の引き上げ(2)報酬決定やアカウント停止などに関わるアルゴリズムの開示(3)労災保険の適用、を挙げる。
総合サポートユニオン共同代表の青木耕太郎さんは、ドライバーの待遇について、「とても不安定な中で大変な働き方を強いられている。これが本当に(会社側と)対等な個人事業主といえるのか」と訴える。
「時間内に配りきれなかったら低評価になるとして、それはドライバーの責任なのか。一方的にAmazonが決める配達量は本当に適切なのか。これではドライバーの方々も納得できないと思います」
団交を申し入れた男性は2023年秋からAmazon Flexでドライバーとして働き始めた。
10個ほど配達できずに業務を終えた際、個人評価が「良い」から「普通」に下がった経験がある。その1回で評価が下がったのかは不明で、その後少し評価を持ち直したが、持ち直した理由もわかっていないという。「すごくアプリ(評価システム)に振り回されてる感覚がある」と話す。
貨物車として使う車の維持費や自動車保険料の負担に対して不満を訴えたほか、オファーの有無が不安定なことも改善してほしい点として挙げた。
「お歳暮やクリスマスなどがある12月はいいが、それ以外の時期、たとえば今も1月下旬のオファーがほとんど出てこない。しかし、オファーがない間も自動車や保険料はかかっていて、ドライバー業としてすごく不安定です。対等な関係で仕事を割り振るのであれば、ドライバー側の負担についても責任をもってほしいです」
要求に対する回答は、団体交渉の日(未定)または1月31日までにおこなうよう求めている。
アマゾンジャパンの広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「現在、受領した書面の内容を確認しております」と回答した。
Amazon Flexについては、契約した個人ドライバー(デリバリーパートナー)が契約やポリシー違反などに関するAmazonからの通知に懸念や質問を持っている場合は、「Amazonに対しフィードバックを行い、再検討を求めることができる」と説明。「デリバリーパートナーとお客様がともに安全かつポジティブな体験ができるように、Amazon Flexプログラムを運営している」とした。
(1月16日21時00分、アマゾンジャパンの回答等を追記しました)