保護猫と里親の出会いの場である譲渡会。一般的には人懐っこい猫のほうがもらわれやすいが、「人に馴れていないシャーシャー猫だけの譲渡会」がこのたび開催される。
保護猫カフェ「ねこかつ」(埼玉県川越市)は、「最強の保護猫譲渡会」を2月23日、東京都練馬区で開催する。譲渡会のポスターには、
「私が人馴れさせるから大丈夫!」「人に馴れていない、その気高さが美しい!」「人に馴れていく変化を楽しみたい!」
といった文言が並ぶ。
まさに「猫好き上級者」のための譲渡会だ。「ねこかつ」の代表の梅田達也さんによると、こうしたシャーシャー猫の譲渡会は「全国的に初めての試み」なのだとか。梅田さんに開催の経緯について話を聞いた。
時間をかけて接しても馴れない猫もいる
まさに上級者向けだ
「ねこかつ」は川越店と大宮日進店の2店舗で保護猫カフェを運営しながら、譲渡会を行っている。梅田さんは「年間で500匹ほどを譲渡しています」と説明する。
同団体が保護した猫たちは、2つの店舗とシェルターにいるほか、30軒ほどの一般家庭にも預けられている。すべて合わせると常時250匹もの保護猫を抱えている。このうち100匹ほどがシャーシャー猫で、なかには保護から5、6年経っても人馴れしない猫もいる。
そうした猫はもらわれにくいため、これまで譲渡会に参加させていなかった。では、なぜ今回シャーシャー猫に限定した譲渡会を開催するのか。梅田さんは、次のように語る。
「家に来る野良猫を1、2年かけて馴らして家の子にしたという方や、猫を触れなくても家の中で幸せそうにしている姿を見て喜びを感じる方は多くいます。譲渡会でも『懐っこい子は里親さんが決まるだろうから、私は里親さんが決まりにくい子を希望します』という方がいました。そういう方たちに、シャーシャー猫とのマッチングの場を一度設けてみようと思いました」
予定では40匹ほどのシャーシャー猫が譲渡会に参加する。1歳未満から5、6歳までと比較的若く、新しい環境に十分順応できる年齢だ。では、シャーシャー猫を飼うのに向いているのはどんな人だろうか。
「馴らすことに喜びを感じる方や、むしろ『馴れなくてもいいや』と思ってくださる方に向いています。足元にすり寄ってくるくらいにはなるかと思いますが、触ろうとして逃げられたとしても『まぁいいかな』とおおらかに見てくれる方、焦らずゆっくり猫と付き合ってくれる方にも向いています。時間をかけても馴れない子もたくさんいるので、そこをわかっていただける方に譲渡したいです」
猫の気持ちを尊重できる人に向いていると言えそうだ。
一つ一つの変化に喜びを感じることができる
その上で、ほんの少しでいいから猫に馴れてもらいたい、距離を縮めたい、と思う人はどうすればいいのか。
「私たちが馴らした子たちはいっぱいいますが、正解はなく、やってみないとわかりません。例えば、最初にケージ内で馴らすのが向いている子もいれば、ケージにストレスを感じる子もいます。触ったほうがいい子もいれば、触ることで信頼関係が築けなくなる子もいます。要するに、うまくいったらそれが正解と思うしかありません。ただ、一つだけ確かなことは、その子と向き合える時間をどれだけ取れるかです。仕方ないと思いますが共働きで留守ばかりのおうちでは、馴れるのは遅くなります。24時間、人がいる家庭では一般的に馴れるのが早くなりますが、だからと言って、必ず馴れるとは言えません」
やはりシャーシャー猫は「猫好き上級者」向けと言えそうだ。しかし、扱いが難しいからこそ、迎え入れることの醍醐味もある。
「最初はビクビクしていたのが、人が見ていてもご飯を食べてくれたり、喉をゴロゴロと鳴らしてくれたり、猫じゃらしで遊ぶようになってくれたり、まだ警戒しているけれどベッドに来て足元のところで寝てくれるようになったり。そういった一つ一つの変化に、喜びを感じることができます」
そうした変化は数週間や1か月単位で少しずつ訪れるため、焦りは禁物だ。猫との信頼関係が、ゆっくりとできあがっていく過程を楽しむ余裕が必要だろう。
また、2週間程度の試し飼いができるトライアル期間を設け、アフターフォローもしている。
「シャーシャー猫たちに早くおうちを見つけてあげたいです。迎えたあとの相談にも乗ります。ペットショップではないので、譲渡して終わりではありません。最後まで猫たちを幸せにできる道を考えないといけないと思っています」
という梅田さんの言葉には、猫の命に責任を負っているという覚悟が表れていた。
譲渡会は、2月23日12時から14時まで。会場は西武池袋線大泉学園駅から徒歩1分ほどの「エチェレンテ フィールド&スタジオ」 (東京都練馬区東大泉1-35-6永楽ビル2階)で行う。