各地で甚大な被害をもたらした能登半島地震。様々な支援が求められている中で、賞味期限切れの食品など、使えないものばかりを送りつけるありがた迷惑な支援物資が横行していることが注目を集めている。
しかし、こうした被災地への身勝手な善意は、今回ばかりのことではない。2011年の東日本大震災の際に、被災地に支援物資を届けるボランティア活動に参加した男性は
「個人が送ってくる支援物資にはゴミも多いです」
と語る。(文:広中 務)
廃品回収と勘違いしているかのような……
この40代男性が参加したのは、被災地の子供にオモチャなどを届けるボランティア活動であった。
「友人が震災後しばらくしてから個人で始めた活動だったんですが、新聞に小さく紹介されたところ手に負えないほどの荷物が届くようになって、手伝って欲しいと連絡がきたんです」
当時、自分もなにか被災地のためにできることはないかと考えていた男性は、気軽に応じた。
「仕分けのために借りた倉庫にいってみると、全国から届いた段ボール箱が山のように積まれていました。最初は、こんなに大勢の人が支援をしてくれるのかと、感動すら覚えました」
しかし、実際に作業を始めてみると一気に感動は失われた。開封したダンボールに詰め込まれた中身のほとんどが役に立たないものばかりだったのである。
「まず、多かったのがぬいぐるみです。新品などひとつもなくて、使い古したものばかり。脳内に“ゴミ”という言葉が浮かびましたね。そんなものを被災地に送るなんてできないからすべて廃棄です。ダンボールを開けては、ゴミ袋に移している作業を続けていると、徒労感で変な笑いすら出ましたね」
それ以上に印象に残っているのは、大量のお手玉が入っているダンボールがいくつも出てきたことだ。
「自分で作ったと思われるお手玉を送りつけてくる人も多かったんです。45リットルのゴミ袋がいっぱいになるくらいだから、相当な数だったと思います。いくら被災地だからって、21世紀にお手玉で遊べというのは無理があるでしょう」
このほかにも、明らかに廃品回収かなにかと勘違いしている支援物資はいくつもあった。
「使い古したトランプやカードゲーム。それに、PCエンジンとかセガサターンといった古いゲーム機の“ソフトだけ”というのもありました。挙げ句の果てには、何年か前のマンガ雑誌やアダルト雑誌を送ってきている人すらいましたよ」
「ほぼゴミ出し作業をしていた記憶しかない」
そんな中で男性がもっとも唖然としたのは、大量の本が入っているダンボールだった。
「ビジネス書とか、どこかの宗教団体の本なんかは当たり前です。中には『ポンペイ最後の日』まであったんですよ」
『ポンペイ最後の日』は19世紀に書かれた児童文学で、西暦79年にヴェスヴィオ火山の噴火で滅びたポンペイを舞台にしている。ジョークだとしても笑えるものではない。
その後、数日間ボランティアに参加した男性だが「ほぼゴミ出し作業をしていた記憶しかない」という。