2024年01月12日 10:41 弁護士ドットコム
学業やプライベートよりバイト漬けの生活になってしまう「バ畜」。「バ畜」に明確な定義はないものの、長時間労働などのブラック労働により、学業との両立が困難になる学生もいるようです。
【関連記事:「何で全部食べちゃうの!?」家族の分の料理を独り占め 「食い尽くし系」の実態】
背景には深刻な人手不足があるためか、強いプレッシャーにさらされ無理なシフトに応じざるを得なかったり、法的知識がないために抜け出せなかったりすることも。弁護士ドットコムには、こうした学生から多くの相談が寄せられています。
ある学生は「夏休みになるので1カ月お休みくださいと伝えたところ『みんなの迷惑になる、ただのわがままだ』と言われた」と相談を寄せました。あらかじめ勉学優先とは伝えていたそうですが、いざ退職の意思を伝えても「あなたの事情で振り回すな」と言われ、辞めるに辞められない状況のようです。
別の学生は「勉学に励みたいためバイトをやめたいと店長に言ったところ『2カ月前に言ってもらわないと雇用契約違反になる』」と伝えられたそうです。しかし学生によれば、そのような雇用契約を交わしてはいません。
自由なシフトと言われ入社したのに、一方的に社長から固定シフトにされ、出勤日が増えてしまったという相談も寄せられています。
ある学生は当初「シフト自由、月2回シフト提出で融通も利くバイト」として応募しました。ところが最近、バイトに一切の相談なく、一方的に社長から「固定シフト」で勝手にシフトを入れられるようになったそうです。大学の時間割や習い事などで行けない日には理由を書く必要があり、会社内は「社長には物を言える人がいない会社なので結局言いなり」だと言います。
こうした「バ畜」はどのようにして解消していけば良いのでしょうか? 森田梨沙弁護士に聞きました。
——事例1のような「辞めたいと伝えても辞めさせてもらえない」「(契約を交わしていないのに)2カ月前に言わないと契約違反と言われた」などの相談が寄せられています。このような場合、店側のいう理由は正当なのでしょうか。またどのように対処すればよいのでしょうか
労働契約が期間を定めないものであった場合、労働者はいつでも理由なく解約の申し入れをすることができ、原則として申し入れの2週間後に解約の効果が発生します(民法627条1項)。
これに対し、期間の定めのある有期労働契約の場合、原則として期間途中での解約は出来ず、「やむを得ない事由」がある場合にのみ即時解約が可能です(同628条1項)。ただし、契約期間の初日から1年を経過した後は、いつでも自由に辞職できることが暫定的に認められています。
よって、ご相談のケースが、無期労働契約であった場合、労働者の辞職の申し入れにもかかわらず会社が辞めさせないという対応は許されません。
また、会社が「2カ月前に言わないと契約違反」と言っている点について、労働契約や就業規則にそのような定めがないのであればもちろんのこと、もし仮にそういった定めがあったとしても、先ほどの民法の原則に反し、無効と考えられますので、やはり、2週間の経過により、労働契約は終了するということになります。
他方、有期労働契約の場合、1年を経過していれば即時の辞職が可能ですが、そうでなければ「やむを得ない事由」が必要となります。ご相談のケースでこれが認められるかは、さらに詳細な検討が必要です。
労働者は、会社が辞職を認めてくれない場合は、内容証明郵便で辞職届を提出するなどして明確に辞職の意思表示を行い、会社に到達後2週間後もしくは即時に辞職する、という対応をとるのが良いでしょう。
——事例2のように「自由シフトのはずが固定シフトになった」「バイトにいけない日はその理由を伝えなければいけない」といった相談もあります。このような条件変更は法的には有効なのでしょうか
労働契約締結の際に決まった労働条件を、会社が一方的に変更することはできません。労働条件の変更は、あくまで労使双方の合意の下で行われるのが原則です(労働契約法8条)。
ご相談のケースについても、自由シフトが労働条件になっているのであれば、会社が一方的にこれを変更し、固定シフトにすることは、原則として出来ませんし、シフトに入れない日について、会社に対しその理由を述べる義務もありません。
【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:https://escudo-law.com/