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ホコリを通して日常の美しさを見つめ直す『横浜微塵美展』が1月30日から開催

2024年01月10日 19:10  CINRA.NET

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Text by CINRA編集部

映像作家の坂根大悟と化学者の市川しょうこによるアートユニットUWOUWOの展覧会『横浜微塵美展』が1月30日から石川町・アウルで開催される。

同展では化学と映像を組み合わせ、ホコリが星のように煌めき出し、手のひらから発生するモヤが突然見えるインスタレーションを展示。普段、目にするホコリや手のひらを通して、最も身近な部屋の中にある美しさを見つめ直すという。

なお、同展は「令和5年度 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業」の支援により開催される。

【坂根大悟のコメント】
2020年からの3年間、部屋という空間を常に意識していた。
部屋で使うモニターは巨大になり、新しい本棚が導入され、豆からコーヒーを入れるようになった。Amazonの購入履歴を見てみると2020年の5月にホコリとり用のはたきを買い、2020年10月に小型の空気清浄機を買っている。
それだけ部屋やホコリを常に意識していたのだろう。
私自身、棚や机に溜まったホコリを見るたびに、忌々しいホコリだと思うが、太陽光やプロジェクター光に照らされているホコリは不思議と美しく見えた。

ゴミかゴミではないかは人間が脳内で枠組みを作っているだけで、常に変化しているのだろう。メディアアーティストの藤幡正樹さんが超分別ゴミ箱2023プロジェクトにおいてこのようなテキストを残している。
「自然という概念は、そもそもWild Nature(原始自然)からTamed Nature(人間によって飼いならされた自然)へ、そして都市のような完全なArtficial Nature(人工自然)へと広がって行ったという。現在問題になっているのは、この人工自然の中の生態系だ。そもそもWild Natureの中にはゴミという概念は無く、すべては無駄なく循環していた。そこにゴミとそうでないものの境界を作ったのは人間の側である。つまり、ゴミは人工自然の中にしか存在しないのであり、これは人間側の問題だ」

本来、元の自然には「ゴミ」という概念は存在しない。排泄物も含めて循環している。つまりゴミ、この展示でいうホコリという概念は人間生活と密接に結びついているのだ。今回、ゴミと認識されているものをメディウムとして扱い、それを展示する。これは人間生活を捉え直し、その可能性を追求する行為とも言えるのかもしれない。ゴミに関連して、日常の中の目に見えていないものを可視化する装置も展示する。目的は同じ「鑑賞者の日常への感覚や認識を少しでも拡張すること」だ。
美術館に行かなくとも小さな美は、部屋という日常にも数多く転がっている。
不変に見える部屋にも、あらゆる可能性の粒が溢れているはずだ。
この展示がその可能性を広げる入り口になれば嬉しい。

【市川しょうこのコメント】
日常生活は絶えず変化しています。生きていれば部屋にはホコリが溜まり、細胞は代謝され身体は老化していきます。
普段「生」に紐づく変化を知覚することは稀ですが、見つめ直し知覚した瞬間、生きることとは汚れ、老いることとも言えるのではないでしょうか。

しかし、この生きるに纏わる変化を宇宙に働く物理法則に則って変換すると、地球や星が有する想像を超える美しい景色と通底していることに気づきます。例えば、代謝により生じる体温でも空気は刻々と揺らいでおり、その揺らぎは地球上に生じる巨大な蜃気楼と同じ原理です。
汚れ老いることとも言える生の変化が、美しい宇宙空間と繋がっていることを認識すると、私には空間という羊水に漂うような心地よい感覚に包まれます。どのように生きても私たち個人は世界へ干渉し世界から干渉され、断絶された個の空間である部屋自体も宇宙全体の法則に則っているのです。

今回展示するのは、日常生活の些事を物理や化学の文脈からミクロに分解し、歴史や土地というマクロな文脈で世界を捉えている映像作家:坂根さんと再構築したインスタレーション作品です。
個人と世界、部屋と宇宙、ミクロとマクロ、体験と鑑賞、様々な相対的な点同士が入り交じる展示空間から、世界認識が拡張するような感覚が生まれたら嬉しく思います。