2024年01月07日 09:31 弁護士ドットコム
都内に住む主婦、M美さん(50代)は、買い物のレシートをチェックしていたところ、100円ショップに入って買い物をした際、店員が1品分の代金を計上し忘れており、おつりが110円多く渡されていたことに気づきました。
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「向こうのミスだし、たった110円だから大目にみてもらえるよね」
実際、110円を返金しに行くにも遠方のショップなので、現実的ではありません。M美さんはそう考えようとしましたが、「もしかして、犯罪なのでは」とやはり気になっているそうです。
こうした釣り銭に関するトラブルをめぐっては、弁護士ドットコムにも同じような相談が寄せられています。
「安かったので多く購入したが、あとで店員のレジ打ちミスだったからと追加で多額の代金を請求された。相手のミスなのに、困っています」
「雑貨を購入したら、会計ミスがあった。多くお釣りを渡してしまったので、店まで返しに来いと言われているが、わざわざ行く必要はありますか」
店側のミスにもかかわらず、おつりを返金したりすることを拒否したら、どうなるのでしょうか。西口竜司弁護士に聞きました。
年の瀬になってくると、さまざまなトラブルが発生しますね。今回のテーマは忙しい中、発生しがちな話です。法的な観点から解説をしたいと思います。
たとえば、100円でペンを買ったとします。この場合、客と店の間には売買契約が成立し、客は契約に従って100円を支払わないといけません。
仮に、実は200円のペンだったのに、店側が間違って100円安く請求するような場合、そのことに気づかなかった客は100円を支払えばよいことになります。
しかし、100円で買ったペンが実は200円であることに、客が購入する際に気づいて、多くおつりをもらった場合はどうなるでしょうか。刑法では「釣銭詐欺」と言われるものにあたるかどうか、という問題になります。
刑法246条1項(詐欺)には、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とあります。店側から渡された釣り銭が多いと気づいていた場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
では、今回のケースのように、あとから、おつりが多いことに気づいた場合はどうでしょうか。
詐欺罪は成立しませんが、今度は「占有離脱物横領罪」(刑法254条)にあたるかどうかという問題になります。
占有離脱物横領罪とは、「遺失物や漂流物その他占有を離れた他人のものを横領」した際に問われる罪で、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となっています。
今回のケースで、たとえこの罪が成立したとしても、現実的に110円で問われる可能性は低いとは思われます。
しかし、いずれにせよ、小さいことかもしれませんが、店が利益を上げるのは大変なことです。正しい金額を支払って、気持ちの良い新年を迎えたいですね。昨年もお世話になりました。今年もみなさんにとって良い年になりますよう。
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/