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2024年01月06日 10:40 弁護士ドットコム
福岡県内のコンビニでコーヒー(110円)を注文した客が、カフェラテ(190円)を注いだとして、万引きの疑いで逮捕されたと報じられた。九州朝日放送の報道によれば、これまでも「コーヒーを購入後にカフェラテのボタンを押していたのを店員が目撃」したことが複数回あり、店側が警戒する中での犯行だったという。
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過去にも同様の事件は全国で起きている。
・コンビニ店で100円で購入したコーヒーのカップに150円分のコーヒーを注いだとして、客が窃盗容疑で現行犯逮捕(2022年4月)
・コンビニ店でコーヒーのレギュラー(100円)のカップを購入し、ホットカフェラテのラージ(200円)を注いだとして、客が窃盗容疑で現行犯逮捕(2021年1月)
都内のコンビニ店の店員に聞くと、「カップを置くだけで自動で種別を検知するマシーンも出ていますし、実は機械の裏側からはお客さんが何を入れているか見られます。稀に『あっ、このお客さん違うもの入れてる…』と気が付くこともありますね」と話す。
報道のように逮捕されるケースもある。注文内容より金額の多いコーヒーを注ぐことの法的問題について、坂口靖弁護士に聞いた。
——110円のコーヒーを購入し、190円のカフェラテを注いだケースで、窃盗罪にて逮捕されていますが、この状況では詐欺罪にはならないのでしょうか?
110円のコーヒーを購入したにもかかわらず、故意に190円のカフェラテを注いだケースは、窃盗罪が成立すると考えられます。
詐欺罪は、人の処分行為に向けられた欺罔行為(騙す行為)が実行されたような場合に成立します。一方で、窃盗罪は、人の処分行為がなく、物の占有者の知らない間に占有を奪われた場合に成立します。
はじめから190円のカフェラテを取得するつもりで、110円のカフェラテを購入したような場合には、店員に対する欺罔(ぎもう)行為が存在しているため、詐欺罪となるようにも思えます。しかし、"処分行為に向けられた欺罔行為の存在"がなければ、詐欺罪は成立しません。
そのため、店員から(1)カップを受け取る場面と(2)カフェラテを注ぐ場面に分けて考える必要があります。
(1)カップを受け取る場面に注目すると、店員の処分行為に向けられた欺罔行為が存在しているといえるので詐欺罪が成立する可能性があります。
一方、(2)カフェラテを注ぐ場面に注目すると、店員の処分行為に向けられた欺罔行為が存在しているとは言えず、詐欺罪は成立しないと思われます。この場合も占有を奪われたことには変わりないので窃盗罪は成立します。
実務的には、外部から認識し得ない内心(故意)についての立証の問題となるため、詐欺罪ではなく、窃盗罪で責任を問えれば十分という考え方になると思います。
——ボタンの押し間違いだった場合はどうでしょうか?
当初はコーヒーを購入する意思であったものの、「過失」で誤ってボタンを押してしまい、注文したものと異なる商品を取得したような場合、誤ってカフェラテのボタンを押してしまい、そのことに気づいたものの、それでも構わないとそのまま持ち帰ってしまったような場合には、窃盗罪が成立する可能性が高いように考えられます。
一方で、間違ったことを認識しないままに、店舗外に持ち出した後に、ボタンを押し間違えたことに気づいたもののそのまま持ち帰った場合には、占有離脱物横領罪が成立する可能性があるように思われます。
誤ってボタンを押してしまったような場合は、念のため、店員さんにボタンを押し間違えたことを申告することが安全です。なお、逮捕までされる事案というのは、事例のように何度も同様の行為を繰り返しているような特殊な事情がある場合に限られるようには思われます。
【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://youtube.owacon.moe/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
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