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能登半島地震、SNSで被災者を装うデマ救助要請 罪に問われる可能性も

2024年01月05日 16:21  弁護士ドットコム

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能登半島地震に関連し、実際に被害にあった人からの投稿がみられる一方で、被災者を装って救助要請するなどのデマ投稿がSNSで相次いだ。実在しない住所を書き込んだ虚偽の救助要請や、能登半島地震の被害と装って東日本大震災の津波の写真を投稿するものもあった。


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岸田首相も1月4日、Xで「実在しない住所や無関係の画像で救助を求めるような情報等、事実に基づかない不確実な情報がSNS上で拡散しています。こうした悪質な虚偽情報は決して許されません」と注意を呼びかける事態となっている。



Xでは地震発生後、被害を装って氏名や住所を載せた投稿や、「津波到達になった瞬間NHKのアナウンサーがすごい怒鳴ってる!(以下略)」と全く同じ文面を複数のアカウントが投稿し、その中には東日本大震災の津波の写真を添付するものもあった。



このような虚偽の情報によって、救助に遅れが生じるなど救助現場に多大なる損害が予想される。デマ情報を投稿することは、どのような法的問題が生じるのか。清水陽平弁護士に聞いた。



●どのような法的責任がある?

——嘘の救助要請や、偽の津波情報を投稿した人は、何らかの法的責任を問われることになりますか



このような災害が起きた際にデマを投稿することは、悪質なイタズラとは言えますが、デマ情報を書き込むだけでは、日本の法律上、違法行為にはなりません。ただ、デマによって救助現場が混乱するようなことは十分想定でき、そのデマの内容や、これにより生じた被害については責任を問われることがあります。



例えば今回、嘘の津波情報を投稿するものがありました。被災している方々の心身に多大な悪影響を与えかねないものとはいえますが、これによって具体的な被害が生じているということは難しいことから、罪に問うことは一般的には難しいといえます。



一方で、被災者を装って救助要請するなどした結果、その現場に実際に救助隊員等が駆け付けたもののデマだったことが判明したといったことであれば、デマによって無用な実働をさせられた救助隊に実害が生じていることになります。このような行為は、偽計業務妨害罪となります。



●「情報拡散ではなく寄付などの冷静な対応を」

——閲覧数などに応じて投稿者に広告料が支払われるXが悪用されている可能性を指摘する声もあります



たしかにその可能性はあると思います。そのような仕組みがないときでも注目を集めたいがためにデマを投稿する方は一定数いたのですが、広告料の導入により、こうした行為を助長する仕組みになってしまっていることを懸念します。



恐怖心を煽るような情報に触れると、善意や親切心から情報を拡散しようとしてしまうことがあると思います。しかし、そのようなものほどインプレッションを稼ぐためのデマである可能性は高いといえることを肝に銘じ、情報源を探してみたり、そもそも情報拡散するのではなく寄付をするなど、冷静な対応が必要といえます。




【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:https://www.alcien.jp