2024年01月03日 09:41 弁護士ドットコム
気軽にゲームを楽しめる時代となり、ゲーム依存症が問題視されるようになりました。大人でもゲーム依存症に陥る人は少なくなく、社会生活に悪影響が出ることもあります。その一つが、夫婦関係の悪化です。
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「結婚して8年が経った頃、妻がネットゲームにハマったんです。それから僕たちの結婚生活はひどいものに変わった」。弁護士ドットコムニュースで以前、取材に応じた男性はそう話しました。
専業主婦だった妻は、ネットゲームのために昼夜逆転の生活となり、男性が「今日の夕食は?」と尋ねても、「今いいところだからちょっと待ってて」と、ゲームから離れない。
やっと止めたかと思えば、惣菜やインスタント食品を面倒くさそうに食卓に並べ、目にもとまらぬ速さでゲームに戻っていく。休日、「どこか出かけようよ」と誘っても、「私が抜けちゃダメなの!」とゲームを最優先。次第に夫婦の会話もなくなっていきました。
夫婦の間に子どもはなく、妻に離婚を申し出ると、特に拒否されることもなく離婚は成立したといいます。
弁護士ドットコムにも「ゲーム離婚」に関する相談が複数、寄せられています。
ある相談者は夫に「娘が寝てる横でゲームをしないで欲しい」「ゲーム内で女性と連絡先を交換して陰でやり取りをしないで欲しい」と伝えたところ「うざいから実家に帰れ」と言われたそうです。
別の相談者の夫は借金を抱えていますが、ゲームセンターに通い詰めて生活費を注ぎ込み、家ではスマホゲームに勤しんでいるようです。相談者は「借金返済のために働いて入院までした」と語り、離婚を検討しています。
この他にも「毎日ゲームばかりで家事や子育てを一切しないから離婚したい」という相談も複数、寄せられていました。
では法的にはどう考えられるのでしょうか。鳥生尚美弁護士は「ゲーム依存という理由だけで裁判離婚が認められるのは難しい」と指摘します。
「長時間ゲームに費やして、家族との生活よりもゲームを優先するような状態を“ゲーム依存”とします。その場合、離婚原因としては『性格の不一致』と評価することができるかと思いますが、このような状況だけで裁判離婚を認められるのは難しいでしょう」(同)
しかし、例外もあるという。
「ギャンブル性が高いゲームにのめりこみ、生活費を使い込んだり借金をしたりするようになり経済的に破綻するケースや、ゲーム依存により家族に攻撃的になり、暴言・暴力に及んだような場合には、その程度や期間等具体的な事情によっては離婚が認められる可能性があるのではないかと思います」(同)
そこまでに至らなければ、裁判で離婚が認められる可能性は少ないのだろうか。
「前述したような事情はないものの、一緒に生活することが難しいと感じる状況であれば、まずゲーム依存の配偶者と距離をおいて自分の生活を守るべく別居をし、長期間の別居状態となった場合には『婚姻を継続しがたい重大な事由』(民法770条1項5号)にあたるとして、離婚請求を検討すべき場面もあるかと思います」
【取材協力弁護士】
鳥生 尚美(とりゅう・なおみ)弁護士
早稲田大学法学部卒業。2006年弁護士登録(第二東京弁護士会所属) 日本司法支援センターの常勤弁護士を経て、あけぼの綜合法律事務所を開設。 中心業務は離婚・相続などの家事事件、とりわけ子の親権、監護者指定、面会交流、養育費等離婚問題の中での子どもに関する事案を多数取り扱っている。
事務所名:あけぼの綜合法律事務所
事務所URL:http://www.akebono-sogo.jp