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歌舞伎町ホスト業界の自浄作用に「強い疑問」、被害者支援団体「青母連」事務局長が指摘する「世間とのズレ」

2024年01月02日 08:50  弁護士ドットコム

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女性に高額な売掛(借金)を背負わせる「悪質ホスト」問題は、ホストクラブ300軒がひしめく新宿・歌舞伎町が発信源だ。国も対策に乗り出す中、歌舞伎町では2024年4月から売掛をなくすなど、ホストクラブが「自主ルール」を導入する。


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「世間からズレていて、コンプライアンス(法令遵守)の意識にも欠けるホスト業界に可能でしょうか」



被害女性や親などからの相談を受ける一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会」(略称:青母連/玄秀盛代表)事務局長の田中芳秀さんは、その実効性に疑問を投げかける。田中さんに聞いた。(ジャーナリスト・富岡悠希)



●「行き場のない女の子をホストクラブが再生産している」

――ホストクラブ代表の巻田隆之氏は2023年12月5日と13日、吉住健一新宿区長らと記者会見を開きました。売掛禁止のほか、「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)と関係を断絶する方針を打ち出しました。



田中さん:先日、玄代表が悪質ホスト問題を取り上げた「ABEMA」の番組に出演する機会があり、私も収録現場に行きました。そこで、ひろゆきさん(西村博之/「2ちゃんねる」開設者・元管理人)が「巻田さん、何でサングラスをして出てくるのですか?」と突っ込んでいました。



ひろゆきさんは、巻田氏が「他の写真を見ると、普通の眼鏡をかけている」とチェックしていた。そのうえで「人にどうみられるかというときに、サングラスをつけてくる奴が代表で出て、(ホストクラブ側の)誰も止めていない」と、業界と世間のズレを指摘していたのです。



――12月5日の会見には、田中さんも報道陣に交じり、参加していました。



田中さん:その会見の冒頭、巻田氏は「最近の報道に取り上げられました不適切な出来事に関しまして、深くお詫び申し上げると共に真摯な反省の意を表明致します」と話しています。



しかし、この発言は誰に向けてお詫びし、反省しているものなのでしょうか。わからないですよね。



また、これに先立つ11月28日には、区役所で青母連とホストクラブオーナーが話し合いました。そこでも巻田氏から似たような発言がありましたが、玄代表も私も、謝罪でなく、単なる釈明だったと受け止めています。



青母連はこのとき、被害当事者と被害家族に対して謝罪することなどを求める「誓約書」の提出をホストクラブ側に求めました。しかし、回答してきたところはなかった。「お詫び申し上げる」というならば、被害者たちに直接、頭を下げるべきです。



――巻田氏は12月5日の会見で、SNSやYouTubeなどでホストが発信するようになり、「社会的責任を守ろうとする意識のあるホストが増えた」旨を述べています。



そうだとしたら、7月20日に青母連ができてから、250件以上の相談や70件以上の面談がおこなわれないですよね。



また先のオーナーとの話し合いでは、「あぶれて行き場のない女の子をホスト社会が受け入れている」という発言がありましたが、これはおかしい。



多額の売掛を背負わせ、全国の風俗店勤務に回し、歌舞伎町に戻ってくるのは月末だけ。そして、新たな売掛を払うために出稼ぎにいく。行き場のない女の子をホストクラブが再生産しています。



●自浄作用については「甚だ疑問だ」

――そのホストクラブは、「自主ルール」を導入していく方針です。



田中さん:被害を生んでいるところに、チェック機能があるのか。業界を綺麗にする「自浄」と、業界を自ら救う「自助」ができるのか、甚だ疑問です。



――12月5日の会見では、巻田氏は「お客様との無理なトラブルがあった場合は、たいていSNSで拡散をされてしまう」として、昔と違いホスト業界にも「自浄作用がある」と話しています。



田中さん:本当の悪いところは、SNSには出ません。11月下旬にある新人ホストが、客に話してはいけない「爆弾」に該当する発言をしたとして、店の幹部に言いがかりをつけられ、閉店後に呼び出されるということがありました。VIPルームで詰め寄られ、120万円もの賠償金を払う「合意書」を書かされています。



青母連に駆け込んできて発覚したケースですが、新人ホストはSNSで告発するなんてできません。





また先日、警視庁が歌舞伎町のホストクラブ176店に実際に立ち入った検査結果を公表しました。75%にあたる132店で、風営法での料金表示義務の違反が確認されました。ボトルやシャンパンタワーの料金がメニューに表示されていないとか、客からわかりにくい場所に表示されていたと報道されています。



しかし、こうした料金表示は基本中の基本でしょう。75%もの店に違反がある業界なんて、そうそうありません。さらに従業員名簿の不備も10店あったというから、ホストクラブでいかにコンプラ意識に欠けているのかがわかります。



――ホストクラブ側は、20歳以上であっても学生の場合は「高額請求にならないようにする」方針も示しています。



田中さん:しかし、いくらが「高額」なのかは決めていませんよね。これで何か意味があるのでしょうか。



相談者から聞くと、売掛が始まるのは、支払いが30万円から40万円となったときが多い。恵まれた新社会人の1カ月の給与を超えたあたりです。業界がいう「高額」はこのあたりになるのかもしれませんが、べらぼうな金額だと思いませんか。



金額を決めるか決めないかを含めて、注視していきます。



●「ホストとトクリュウは持ちつ持たれつ」

――トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)との関係断絶の方針は?



田中さん:最近とくに親でなく、女性の当事者からの相談が増えてきました。その中で、トクリュウと目されているスカウトが、海外風俗を紹介しているケースを聞きます。



売掛がたまるとホストがスカウトを紹介して、まずは女性を国内の風俗で稼がせる。女性がさらにホストに依存するようになると、ホストやスカウトが「海外のほうが稼げる」とすすめる。女性は洗脳されているから実行して、「今から出稼ぎ行ってきます!」と楽しそうなLINEの記録を残している。



ホストとトクリュウが、持ちつ持たれつとなっている状況を知るにつれ、断絶するのは難しいと考えます。



――青母連の今後の活動については?



田中さん:まずは、「ホストクラブでの売掛禁止の立法化を求める署名」を展開していきます。全国には歌舞伎町の約300軒を含む約1000軒のホストクラブがあります。そこに法の網を掛ける必要がある。



また、社会問題として認識されるにつれて、過去に支払った売掛を「どうにかならないか」「取り返せないか」という相談が増えてきた。身代わりで払った親も、ホストにハマった女性本人からもです。



数十万円、数百万円で済まず、数千万円にもなっているから、「泣き寝入りしたくない」となる。法的にどういう枠組みで交渉できるのかも含め、検討を進めていきます。