2023年12月31日 10:41 弁護士ドットコム
他の客が注文したレール上の寿司を食べ、醤油さしをペロペロ舐めるーー。2023年は、このような回転寿司チェーン店での迷惑行為を写した動画がSNSで相次いで拡散され、物議を醸した。
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被害にあった店側はいずれも厳しく対応し、ネット上には「制裁は当然」などの投稿が複数並んだ。客側からの謝罪を受けた後も「刑事、民事の両面から厳正に対処」すると発表したスシローに対し、弁護士100人を対象におこなったアンケートでは、9割近くの弁護士が企業側の対応を支持していることがわかった(https://www.bengo4.com/c_18/n_15638/)。
一方、ネット上で加害者を攻撃する行為について「私的制裁はやめるべき」など、疑問視するコメントもみられた。
今年の回転寿司店トラブルを振り返る。
回転寿司チェーン最大手のスシローでは、今年1月、客とみられる男性による迷惑行為が映った動画がSNS上で拡散し、話題となった。
動画は岐阜県岐阜市内の店舗で撮影され、若い男性が醤油ボトルの注ぎ口やレーン上方に置いてある湯呑みを舐めて元の場所に戻したり、自分の指に何度も唾液をつけてレーンのすしに付けたりする行為が映っていた(https://www.bengo4.com/c_18/n_15586/)。
スシローの運営会社「あきんどスシロー(大阪府吹田市)」は「迷惑行為を行った当事者と保護者から連絡があり、お会いして謝罪を受けましたが、当社としましては、引き続き刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります」と発表していた(https://www.bengo4.com/c_18/n_15594/)。
この言葉どおり、会社は刑事・民事の両面から対処した。報道によると、迷惑行為をした10代の少年は器物損壊の疑いで家庭裁判所に送致(家裁送致)された。事件は終局しているが、岐阜家裁は処分の内容を公表しないとされている。
民事では、少年に対し、約6700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していた。7月31日付けで調停が成立し、訴訟は取り下げられたという。
はま寿司でも1月、若い男性客がレーンを流れてきたすし2貫のうちの1貫を箸でとって食べる動画が拡散された(https://www.bengo4.com/c_1009/n_15520/)。動画には「おいしそうだったので食べちゃいました」「#人の注文」などと書かれていた。
他にも、同じ月に山口県内の店舗で、別の客が注文したレーン上の寿司にわさびを勝手に乗せる行為を映した動画もあがり、「他人握りわさび乗せ」とテキスト文が表示されていた(https://www.bengo4.com/c_18/n_15552/)。
報道によると、わさびを盛った10代の少年は自ら連絡して謝罪したが、はま寿司は被害届を提出したという。少年は威力業務妨害の非行事実で家裁送致され、山口家裁は10月26日付けで不処分としたと報じられている。理由は明らかにされていないという。
くら寿司でも、名古屋市内の店舗で醤油差しを舐める動画を撮影し、SNSに投稿した20代男性らが威力業務妨害の疑いで逮捕された。
報道によると、名古屋地裁は10月、20代男性に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。この男性は、その場にいた15歳の少女を東京都内から連れ出したなどとして、営利目的の誘拐の罪にも問われていた。ともに逮捕された10代の少年は家裁送致となり、名古屋家裁は3月、保護観察処分を決定したという(https://www.bengo4.com/c_1009/n_15781/)。
店での迷惑行為は「寿司テロ」とよばれ、SNSでトレンド入りした。迷惑動画の“ブーム”に便乗して、店内でAV(アダルト動画)を流す様子の映像など、過去に撮影された可能性がある映像も拡散され始めた(https://www.bengo4.com/c_1009/n_15750/)。
一度拡散されれば、削除は困難になる。弁護士は「投稿する前に慎重に検討をすべき」と警鐘を鳴らす(https://www.bengo4.com/c_23/n_15622/)。
加害者は“タダの悪ふざけ”だったのかもしれない。しかし、ネット上に広まったことで、全国紙やテレビなどでも大々的に報道され、海外メディアも取り上げた。SNS上では、加害者のプライベートな情報を流す行為もみられた。
手ごろな値段で楽しめる回転寿司チェーン店は、幅広い年齢層に人気だ。おひとり様から家族連れなど、多くの人が足を運ぶ。迷惑行為は店の経営に影響を与えるだけではなく、自身の人生を狂わせることになる。店やほかの客に配慮して、気持ちよく寿司を味わいたいものだ。