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タワマンで後悔しないための見極めポイント - 「こんなはずじゃなかった…」を防ぐ確認項目を住宅のプロが解説

2023年12月30日 09:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
「タワマン」という略称でメディアやSNSで取り上げられることも多いタワーマンション。湾岸エリアに整然と立ち並ぶ姿を想像される方が多いのではないでしょうか。現在中古マンションとしての供給戸数が圧倒的に増えたこともあり、ごく限られた層の人だけが住む場所というイメージだった時代は終わり、住宅としてより広い層の方々に検討されるようになりました。また、タワーマンション=湾岸エリアではなく、より内陸に立地する駅直結のタワーマンションも多く開発されるようになっています。



今回は、タワーマンションを検討している人に向けて、契約前にチェックしたいポイントや自分に合ったタワマンの選び方についてお伝えしたいと思います。


■そもそも、タワマンに住むメリットとは?



まずタワーマンションに住むメリットとしてよく挙げられるのは、下記の要素でしょう。


眺望

充実した共用施設やサービス

設備仕様

防災


逆にいうと「これらのメリットを自分の期待通りに享受することができるのか?」という視点でチェックしていくことが必要となります。一項目ずつ見ていきましょう。

1.「眺望・日照」の見極めポイント



タワマンに住む醍醐味の一つとも言えるのが、眺望。そのため、タワマンにとって眺望は資産価値、価格に直結します。眺望が近隣のマンション等に遮られず確保されているか、そこから何が見えるか・・これらは購入時にはどなたも確認すると思いますが、注意したいのはその永続性です。後から建てられる建物によってふさがれる可能性があると、将来的に資産価値が低下する恐れがあります。



部屋から周辺を見渡した際に、「空き地があるか」「工場があるか」は必ず確認しましょう。空き地や工場は、所有者が変わると真っ先にマンションになりやすい土地です。また、反対に神社仏閣や公園、学校のような施設は滅多に移転しないと考えられるため、安心材料になります。



また、よくあるのが近くにタワーマンションが建っている場合。対面のマンションの窓ガラスに反射した光が差し込んできて眩しい、南側だと逆に眩しすぎる…といった話は、タワマンエリアならではの「あるある」といえます。北側でも日差しがちょうど良い、ということもありますので、中古マンションであればご自身で内覧時に確認するのに加えて、売主さんに聞いてみるのが良いでしょう。

2.「共用施設やサービス」の見極めポイント



住戸数が多いぶん、共用施設やソフト面でのサービスが充実していることもタワーマンションの魅力の一つです。マンションにも左右されますが、例えば、こうした共用施設やサービスが挙げられます。



<共用施設>

・ プール付きのマンション

・温泉付きマンション

・ジム、フィットネススタジオ

・キッズルーム

・音楽室

・ゴルフレンジ(シミュレーションゴルフ)

・ライブラリー、勉強スペース

・テニスコート

・バーベキュースペース

・バー

・プラネタリウム

・敷地内公園、噴水



<サービス>

・クリーニングの取次

・宅配便の発送や受け取り

・タクシーの手配

・設備故障の際の業者紹介

・レンタカー手配

・ゲストルーム、フィットネスジムなどの利用



これらの共用施設やサービスは内覧時には魅力的に映るでしょう。ただ、これらは月々の管理費や修繕積立金等に関わってきます。どこまで共用施設を求めるかは個々人のライフスタイルによって異なるので、自分にとって必要な施設、使い勝手の良いサービス内容なのかどうかしっかりと見極めることが必要です。

3.「設備仕様」の見極めポイント



もう一つ、ファシリティに関連して確認しておきたいことを挙げておきましょう。先ほどの共用施設やサービスはプラスαにあたるものでしたが、日常の生活に直結する仕様設備もタワーマンションはクオリティが高く、マンションごとに特色があります。また、タワーマンションならではのお悩みとしてよく言われるのがエレベーターの混雑でしょう。適正な設置台数というのは諸条件や個々人の感じ方にもよるため、絶対数値を述べるのは難しいところです。売主さんや、可能であれば目当てのマンションに住む人の口コミや知人のコメントなどを参照するのが良いでしょう。代表的な使用設備をあげておきますので、自分自身にとって重要度の高いものは必ずチェックするようにしましょう。


エレベーターの混雑度はどの程度か?

ゴミステーションは各階にあるか?24時間ゴミ捨て可能か?

快適な「内廊下」か?コストを抑えた「外廊下」か?

駐車場は空いているか?車のサイズは問題ないか



4.「防災対策」の見極めポイント



一般的にタワーマンションは、被災時に備えた設備や備蓄品等が中小規模のマンションよりも充実している傾向があります。また、建設にあたりタワーマンションは超高層認定を取得しています。高度な審査基準をクリアしないと、そもそも建設が認められません。そのため、倒壊する危険があるのではないか、といった心配は杞憂と言っていいでしょう。「埋立地は地盤面がやっぱり不安・・」という方は、後述する内陸立地のマンションを選ぶことで解決できます。また、もしもに備え、できるだけ安心できる災害に強いタワーマンションを見極めたい場合は、下記のような項目をチェックしましょう。


定期的に防災訓練が行われているか?

医療品や食料品などの備蓄がされているか

非常時の災害行動マニュアルは整備されているか?


もちろん、こうした項目を備えたマンションを選ぶ以前にまずは自身で防災対策をしておくことが何よりも安心材料になるという点は、忘れずにおきたいところです。

■東京近郊のタワマンは「湾岸タワマン」か「内陸タワマン」に分けられる

さて、タワーマンション数あれど、やはり資産価値として考えると


都市部への交通アクセス利便

街としての将来発展性、及びその中でのマンションの立地、ステータス性


のいずれかが必要です。



その観点で見た時に、いま市場に出ている首都圏のタワマンの傾向としては、大きく2つに分けられます。



【A】都心部周辺の湾岸エリアタワマン

【B】内陸立地の駅近タワマン



2023年12月現時点における東京近郊で売り出しのあるタワーマンションを地図上にプロットしてみたのが、下記の図になります。湾岸エリアのイメージが強いタワマンですが、実は内陸部にも数こそ湾岸に比較すれば少ないものの売り出しがあることがわかります。


※ここでは20階建て以上の高層マンションを「タワーマンション」と定義しています

※円の大きさは、売り出し物件数の多さを表しています

【A】「都心部周辺の湾岸エリアタワマン」の特徴



【A】都心部周辺の湾岸タワマン については、中央区、江東区、港区、品川区に位置するタワーマンション群です。1990年代ごろから工場や倉庫跡地を生かした湾岸エリアを再開発し、住宅地として大規模再開発が行われた場所が該当します。豊洲、晴海、勝どき、芝浦など、地名=湾岸タワマンエリアの代名詞、といっても過言ではないほど都市景観をつくりあげている街も少なくありません。ウォーターフロントならではの開放感や住戸内からの眺望が大きなメリット。都市における快適な住環境にとって必要な要素を計画的につくりあげているため、マンションが林立しているといえど、離隔を確保した上での敷地計画がなされているため狭苦しい印象はありません。



豊富な緑地や遊歩道、駅周辺やマンションの足元に一体で設計された大型商業施設やスーパーなどがあるため、生活利便性も抜群です。マンション棟数も多いため、エリア全体で見た時の物件数が多いのは、前掲の地図でも明らか。現時点で売り出し物件数が多いところから一部代表的なマンションを挙げると、「白金ザ・スカイ」(港区)、「勝どき ザ・タワー」(中央区)、「シティタワーズ豊洲ザ・シンボル」(江東区)などになります。エリア内での住み替えが常時頻繁に行われていることもあり、それだけに敵が多いということ。物件数は豊富ですが条件の良いものは瞬時に買い手がつくので、購入を検討している人は気を抜かずにウォッチが必要です

【B】「内陸立地の駅近タワマン」の特徴



【B】内陸立地の駅近タワマン については、主に練馬区や中野区、豊島区などの副都心エリアや東京の西側が主なエリアとなります。駅近もしくは駅直結といった駅徒歩距離の近さ、また、駅周辺に築かれた商店街や繁華街の中程や近くにある傾向も見受けられます。湾岸タワマンと比較すると、マンション棟も物件数も圧倒的に少なくなります。「石神井公園ピアレス ザ・タワー」(練馬区)や「中野ツインマークタワー」「ザ・パークハウス中野タワー」(中野区)、「エアライズタワー」「Brillia Tower池袋」(豊島区)などがその一例です。



特に豊島区は現在池袋駅周辺を中心に盛んに再開発が行われているため、対象が限られるこのタイプの中でも、物件数が豊富です。マンション数がそもそも少ないため、階数や路線、駅名などの大まかなエリアを決めたら必然的に候補が絞られるでしょう。あとは売出状況を注視してじっくり待つことが必要になる可能性も。賃料がもったいないから早く購入したい、という方は、まずは目当てのタワマンの近くの中層マンションに住んでみてから考えるのも一案かもしれません。



また、内陸立地のタワマンとしては、駅からやや離れた立地(徒歩10分強)で工場や企業の社宅などの保有跡地を大規模再開発したタイプの大規模マンションもあります。多くの場合広大な敷地を生かした森のような緑地スペースが確保されています。場合によっては、敷地内にマンションが何棟も建設され、保育園や医療施設まであり、一つの村のように開発されていることも。例としてあげると、「グランドメゾン三軒茶屋の杜」(世田谷区)や「サンシティ」(板橋区)などです。ただ、こちらはあまり事例数も多くないため、今回は前述の2タイプとしました。

■理想の暮らし別「おすすめのタワマン」タイプ



それぞれに特色がありますが、大きく分けるとしたらそれぞれにおすすめの人の傾向としては以下となるでしょうか。

【A】「都心部周辺の湾岸タワマン」はこんな人におすすめ


水辺の開放感や都心らしいタワーやブリッジなどがつくる景観を重視している

広域で開発・整備された計画都市に住みたい

大型のショッピング施設やアミューズメント施設が近くに複数欲しい

都心部への好アクセス、都心部アドレスの資産性を重視したい

エリア内でより良いマンションがあれば積極的に住み替えていきたい


【B】「内陸立地の駅近タワマン」はこんな人におすすめ


できるだけ駅に近い立地に住みたい

地盤ができるだけ強固な土地に住みたい

商店街など、街に昔からあるスポットやカルチャーを残しているエリアに住みたい

必要がない限りは特に積極的な住み替えは考えていない


もちろん、これは大別した分類になりますので、一概に言い切れないところもあるでしょう。また、地盤や周辺の施設のバリエーションなど、マンションの立地ごとに条件は変わってくるでしょう。まずはマンションを買うことで自分(たち)が得たい暮らしを大枠からとらえてみるための一つの基準軸としていただければと思います。



どんな優れたマンションであっても、「誰にとっても100点」の住まいは存在しません。それは住まい手である私たち一人ひとり、一家族ごとが異なる状況下で異なる価値観を持って過ごしているためです。だからこそ、自分自身にとって最も大事な条件を見つめ、たった一つの「その時における最適なタワマン」を見つけて欲しいと思います。



針山 昌幸 はりやま まさゆき 株式会社Housmart 代表取締役。相場を確認しながらかしこく中古マンションが売買できるアプリ「カウル」やメディア『マンションジャーナル』、不動産仲介会社向けの営業支援システム「プロポクラウド」など、住まい選びをより自由にすべく幅広く事業を展開。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』(日本実業出版社)。 この著者の記事一覧はこちら(針山 昌幸)