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「俺が今まであげたプレゼントのお金、全部返してよ」器の小さい男…要求に応じる必要ある?

2023年12月26日 10:01  弁護士ドットコム

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男性から「プレゼント代を返せ」と言われたので「返す」と言ってしまった——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者はこの男性と交際していたわけではありませんが、男性の好意で様々なプレゼントをもらっていたそうです。しかし、交際相手ができたため、この男性と距離をおきたいと思い、全額返金の意向を一度メールで伝えました。



もっとも、総額が100万円を超えていることもあり、金銭ではなく、「プレゼントされた物を返却する」ことで約束を果たせないかと考えているようです。



もらったプレゼントまたは相当額について、相手に返さないといけないものなのでしょうか。また返金すると言った以上は金銭で支払わないといけないのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。



●もらったプレゼントは原則返さなくてよし

——プレゼントの品または同等額を返してほしいと言われた場合、応じる必要はあるのでしょうか。



結論からいいますと、プレゼントを受け取った人は、プレゼント品またはプレゼント代を返して欲しいと言われても、それに応じる必要はありません。



プレゼントをする・もらうことは、法律的には贈与契約(民法549条)の締結になります。贈与契約は、一方当事者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する無償契約です。しかも合意だけで成立します(諾成契約)。



民法は、550条で「書面によらない贈与は、各当事者が解除することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と規定しています。



贈与ととは、自分の財産を無償で相手に与えることです。「書面によらない贈与は、各当事者が解除することができる」という550条本文は、贈与者の贈与意思を書面により明確にすることを促し、軽率な贈与に絡む紛争を未然に防止するための規定です。



ただし、書面によらない贈与であっても、「履行の終わった部分」つまり、プレゼントを渡した後は、軽率に贈与契約をしたと評価することができないので、民法は、「この限りでない」として、もはや契約を解除することができないとしました(550条但書)。



男性は、女性に対して、好意で様々なプレゼントをしたということなので、「書面によらない贈与」をしてきたと考えられます。



女性にプレゼントを渡したということは「履行を終えた」ことになるので、男性は、女性に対して、贈与契約を解除して、プレゼント品等を「返して欲しい」と言うことはできなくなります。



●「代金返す」と返事しただけならまだ間に合う

——女性側が「返す」と応じてしまった場合はどうなるのでしょうか。



まず、「プレゼント品を返す」と応じた場合は、贈与契約を合意解除したものと評価することができると思います。



つまり、元々の贈与者である男性は、民法550条但書によって、贈与契約を一方的に解除することはできませんが、受贈者である女性と贈与契約を合意解除することにより、プレゼント品を返してもらえることになるわけです。



これに対し、「プレゼント代を返す」と応じた場合には、新たに金銭の贈与契約を締結したと評価することができると思います。



もっとも、先に述べたとおり、書面によらない贈与契約なので、「返す」と応じただけでまだ履行を終えていないならば、贈与契約を解除することができます。



なお、メールで「返す」と伝えただけでは、「書面」で贈与を行ったとは言えず、贈与契約を解除することができる可能性が高いと考えます。民法550条は、「書面」とのみ規定し、民法446条3項のように、電磁的記録は書面とみなす旨の規定の仕方をしていないことなどが理由です。



したがって、「プレゼント代を返す」と応じても、贈与者である女性は、贈与契約を解除することで、プレゼント代を男性に支払う義務は負わなくなる可能性が高いといえます。



——女性側は、プレゼントの品の返却には応じる意向がありそうですが、これも返却しなくて良いということでしょうか。



女性は、まだ履行していない限り贈与契約を解除することができます。したがって、プレゼント代を支払う必要はなくなりますし、当然のことながら、プレゼント品を返還する必要もありません。




【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/