2023年12月26日 10:01 弁護士ドットコム
走行中の乗用車の窓から長いリードが伸びて、その先に散歩中の犬が歩いている――。SNS上に、そんな「犬の散歩」の画像が投稿されて拡散した。「犬が轢かれるリスクとか考えないのかな」などの反応があがっている。
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「自分も地元で見たことあるわ…ご老人の方が運転席から伸びるリードで柴犬散歩させてて…足が悪いのかもしれんけど怖いし、わんこが危ないって考えんのかなって思いながら見てた…」
「うちの近所にもトイプードル2、3匹を自転車で引き釣り回してるジジイがいますね」
犬が事故に巻き込まれる可能性も考えられ、見るからに危ない行為だ。法的にはどんな問題があるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
※リードの伸びている窓が後部座席のものと判別できないため、運転席で乗用車運転中に犬の散歩をしているとの前提で解説する。
——乗用車を運転しながらリードをつけた犬と並走して散歩する行為は、どんな罪に問われる可能性がありますか
乗用車を運転しながら犬を散歩する行為について、直接そのような行為を禁止する規定はありませんが、道路交通法の安全運転義務(同法70条)に違反するものと思われます。
安全運転義務は「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と規定されています。
乗用車を運転しながら犬を散歩する行為は、車両のハンドル、ブレーキ等の装置を確実に操作することができなくなりますし、犬の散歩に気を取られて他人に危害を及ぼす運転とならざるを得ません。
安全運転義務に違反した場合の罰則は、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金です(同法119条1項)。
もちろん、犬を散歩させながら乗用車を運転して人身事故を起こした場合には、自動車運転過失致死傷罪も成立します(自動車運転処罰法5条)。
ちなみに、犬を膝に乗せて運転する行為もNGです。この場合には道路交通法55条2項違反となる可能性があります。
この条文は、車両の運転者は、運転者の視野もしくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡(バックミラー)の効用を失わせ、車両の安定を害するような態様で車両を運転してはならない旨を規定しています。
犬を膝に乗せて運転した場合、運転者の視野やハンドル操作に支障が生じることは明らかなので、これに違反することになります。この場合の罰則は、5万円以下の罰金です(同法120条2項)。
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/