メルセデスF1のチーム代表トト・ウォルフは、2023年シーズンにおけるチームの最高の瞬間について驚きの選択をした。ルイス・ハミルトンがレース後に2位から失格になったにもかかわらず、第19戦アメリカGPを今年のハイライトに選んだのだ。失格は、マシンのプランク(スキッドブロック)の摩耗がテクニカルレギュレーションで規定された最大許容量を超えていたことが原因だった。
ウォルフは今年のハイライトにアメリカGPを挙げたことについて、次のように認めた。
「失格したので、奇妙に聞こえるかもしれない。オースティンでは今年一番のブーイングが起きた!」
「我々はアップグレードパッケージを持ち込み、それはうまく機能した。マシンのパフォーマンスはよく、首位を追い詰めていた。『低すぎるマシンで失格になった』とも言えるだろうが、本物のパフォーマンスが出ていたし、楽しめる週末だった。正しく調整されていなくても、速いマシンが欲しいと私はいつも言っている。そしてもちろん完走する必要がある。だが、風洞とコースの相関関係は良好だったし、全体として最高の週末だった」
いずれにせよ、F1をほぼ10年にわたって支配したチームにとって2023年が期待外れの1年だったことを隠すことはできない。そのため、ウォルフはシーズンで最悪の瞬間と最高の瞬間を選ぶ前に、慎重に考えなければならなかった。
「大きな期待を抱いていたのに、そのとおりに展開しなかったことが何度もあったので難しいことだ。ブラジルは厳しかった。2022年には非常に優れたレースができたからだ。昨年はスプリントレースとメインレースで週末全体を支配していたが、2023年はその逆だった。だからあれが最悪の瞬間だった」
一方最高の瞬間として、ウォルフはアブダビGPを選んだ。
「アブダビでの日曜日の夜だ。私は2位と3位にあまり注意を払わなかった。我々はもちろん1位になることを望んでいた。しかし3位でフィニッシュすることは、感情的にも精神的にもチームにとって重要なことだった。あれはいい瞬間だった」
メルセデスにとって今シーズンが非常に困難なものだったため、ウォルフは1年を通してスタッフからの精神的なサポートを必要としていたことを認めている。
「互いに支え合える組織があるのはいいことだ。士気を高める必要があったのは、必ずしも私だけではなかった。私も時にはサポートを必要としたし、いかなる場合でも最高のパフォーマンスを発揮できるよう、全員が互いにバトンを渡そうとしていた」
ほかのチームの代表と同様に、ウォルフはすでに来年に目を向けている。2022年と2023年にチームが経験した期待外れの2シーズンに少しの痛みを感じているウォルフは、以前よりもハードルを下げている。彼にとって、メルセデスがまずしなければならないのは次のことだという。
「期待値を正しく設定することだ。なぜなら我々には登るべき高い山があるからだ。非常に成功したチームがあり、我々は埋めなければならない大きな差をつけられている」
「同時に、我々はその差を縮めるための積極的な歩みを進めてきたと考えている。これで十分だろうか? それは分からない。しかしそのことはテストと、その後のバーレーンでの開幕戦で目にすることになるだろう。私はとても興奮している。今スタートしたい。我々がどのような仕事を行ってきたのか教えてくれるのは、ストップウォッチだ」