2023年12月23日 08:31 弁護士ドットコム
結婚式に向けたブライダルエステで、体に「アザ」ができるトラブルに見舞われ、晴れ舞台を台無しにされたという悩みが弁護士ドットコムの法律相談に届いた。
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ブライダルエステのトラブルをめぐっては、国民生活センターにも「フェイシャルエステの施術を受けたところ顔にニキビが大量にできてしまいました」「当日は腕の出るドレスだったため痩身サービスを受けたが腕が腫れてしまった」などの被害情報が寄せられている。
はたして、施術したエステサロン側に慰謝料などをもとめることはできるのだろうか。前島申長弁護士に聞いた。
ある新婦は、結婚式数日前に受けたエステで「腕の1番目立つ」ところにアザができたという。施術前に、アザができないようにしてほしいという旨を伝えていたにもかかわらず、だ。
コンシーラーでも隠しきれなかったアザは、式当日の写真や動画でも確認できるほどで、それを見返すたびにつらい思いをしているという。
「前日は泣き腫らしてしまい、当日は顔がパンパンになりました。慰謝料など、何かしらの形で請求することは可能でしょうか」
——新婦は結婚式を数日後に控え、アザができないように伝えたうえで、当日も残るアザをつくられたといいます。エステの施術側に返金や慰謝料などを求めることはできるでしょうか
エステサロンと客とは、フェイシャルエステや痩身エステなどの施術内容に応じた契約を結びます。(民法上の準委任ないしそれに類する無名契約と考えます)
そのため、エステサロン側には、アザなどの発生リスクの説明義務とハイパーナイフやハイパーシェイプなどの機器の使用に際して、施術時間や出力について適正に管理し施術する義務が生じます。(善管注意義務もしくは安全配慮義務)
ただし、エステサロンでの施術は、これらの機器の使用や施術の方法について、施術者が善管注意義務を尽くして適正な施術をした場合でも、客側の体調や肌質によっては、多少のアザなどが発生してしまうこともあります。
そのため、施術の結果としてアザができてしまった場合に、必ずしも、すべてのケースにおいて、施術者に用法義務違反があるとまではいえないと思われます。
一方、これらの機器には、身体の部位に継続して施術できる適正時間が設定されているので、その時間を超えて施術した場合であるとか、強度の調整を誤り通常より強い出力で施術した場合などは、用法義務違反や安全配慮義務違反が認められるケースも考えられ、損害賠償請求の対象になる可能性があります。
なお、エステサロン側に、上述のような善管注意義務違反がある場合には、債務不履行責任だけでなく、施術した従業員に対する不法行為責任(民法709条)およびエステサロンに対する使用者責任(民法715条)の請求ができることになります。
——どれくらいの損害があったと認められるでしょうか
次に、エステサロン側に善管注意義務違反があるとして、アザの発生と施術上のミス(注意義務違反)との間に因果関係が認められるかが問題となります。
さらには、両者の因果関係が認められるとして、その損害の範囲はどこまでかも問題です。
過去の判例には、客側が敗訴しているケースも散見されますが、その多くは、施術とアザの発生に明確な因果関係が認定できなかった場合や、施術に一定のミスがあったとしても、賠償の範囲として相当性が認められなかったことによるケースが多いと思われます。
たとえば、今回の相談のケースでも、アザのために、「前日は泣き腫らしてしまい、結婚式当日は顔がパンパンになってしまった」ことに対する慰謝料は、相当因果関係(社会通念上の相当性)が認められないと思います。
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:https://maeshima.lawer.jp/