Text by 生田綾
Text by Goku Noguchi
気候危機×音楽ライブイベント『Climate Live Japan COUNTDOWN2030』が10月に東京・渋谷WWWで開催され、あっこゴリラ、YeYe、Qnelによるライブステージや、気候変動と音楽、社会と音楽をテーマにしたトークセッションが披露された。
Festival Life編集長の津田昌太朗さん、MCを務めるClimate Live Japanの小出愛菜さん、CINRA編集長の生田綾が登壇し、音楽フェスティバルと気候変動の関係や、社会と音楽のつながりについて話し合われたトークセッションの内容をレポートする。
環境問題と音楽フェスティバルというテーマで思い浮かぶのが、「暑さ」についてだろう。今年8月19~20日にかけてZOZOマリンスタジアムなどで開催された『SUMMER SONIC 2023』では、熱中症など体調不良になる参加者が続出したことが話題になった。
『SUMMER SONIC』でステージMCも務めた津田さんは、「身近に気候変動を感じた」と振り返る。
撮影:Goku Noguchi
「データで言うとじつは2013年が一番最高気温が高かった年なんですが、それに次ぐ高さで、今年は特に新しいお客さんやコロナ禍明けでひさしぶりに参加したお客さんも多かったこともあり、影響という意味では今年が一番大きかった。音楽フェスが復活し始めたなかで、どういう対策をするのか。そこに気候変動の問題があがってきて、ダブルパンチで難しい状況になっています」
「定点的にフェスを見ていても、すごく暑くなっていると感じるし、関係者でも今年が一番暑かったという人が本当に多かったです。もちろんその日の天気の影響もありますが、データで見ると、2000年代前半には最高気温が25度前後だったこともありました」
これまでZOZOマリンスタジアムでは、人工芝の品質維持のため会場内にスポーツドリンクなどの持ち込みが禁止されていた。千葉日報によると、スタジアムを所有する千葉市はルールを見直し、一定の条件を付けてグラウンドへのスポーツドリンクや食べ物の持ち込みを可能とした。
大規模なフェス開催をめぐっては、イベント開催に伴うCO2など温室効果ガスの排出やゴミ問題など、環境負荷を軽減させる取り組みが広がっている。海外の音楽フェスティバルにも精通する津田さんによると、ペットボトルの持ち込みを禁止しているフェスティバルも増えてきているという。
トークセッションでは、ノルウェーの首都・オスロで開催されている『オイヤフェスティバル』での取り組みが紹介された。
「このフェスは『The Greenest Festival』と打ち出していて、世界で一番グリーンなフェスティバルであることをテーマにしています。具体的に言うと、関係者も含めて、98%の人が車を使って来場しません。公共交通機関か、徒歩か自転車で来てくださいと言われるんです。ゴミの分別をはじめ、環境への負荷軽減へのアクションが積極的に行なわれている日本のフェスと比べても、より踏み込んだレベルで取り組んでいて、フェスで発生したフードロスを使って、そこを畑にするような循環型のものもあって、すごく環境配慮の取り組みがなされています」
「ほかに面白かったのがTシャツです。音楽イベントや音楽フェスでチケット代プラスアルファを稼ぐにはTシャツを販売することは生命線なんですが、売れなかったら大きなロスになってしまう。今年のラインナップがデザインされていますから、来年は使えない。
なので、そのフェスでは元々ラインナップTシャツは売っていないんです。その代わりにラインナップをプリントできるシルクスクリーンみたいなものが置いてあって、無地のTシャツに、それを使ってラインナップを刷ることができる。そうすると、次の年も在庫を使えるわけですよね。同時期に開催されている、お隣スウェーデンの『ウェイ・アウト・ウエスト』という都市型のフェスにも参加してきたのですが、そこでも同じようにラインナップTシャツは売っていなくて、その代わりに古着が持ち込まれてそこに刷ってくださいみたいなことも行なわれていて、生命線である物販すら、少し利益を崩してでも環境の負荷を少なくするというメッセージを出しているわけです」
「そういう動きは少しずつ日本のフェスでも出てきていて、プリントができるわけじゃないんですけど、古着を回収するみたいな流れができてきているので、より積極的にそういったことにチャレンジするフェスが出てくるのかなと思っています」
気候変動という大きな問題に対して、個人ができることは限られているが、「よりベターな選択をみんながしていくことで、もっと良い社会になっていくんじゃないか」とClimate Live Japanの小出さんは話す。
日本での開催が4回目となる『Climate Live』は、イギリスの高校生から始まった、音楽を通じて気候危機の現状を伝え、人々のアクションを促すためのプロジェクトだ。
今年は気候危機の災害が加速し、修復が困難とされる「2030年までのカウントダウン」をテーマに、あっこゴリラ、YeYe、Qnelによるライブステージが披露され、ステージ上ではアーティストから観客に向けて発信する場面もあった。
CINRAの生田綾は、「受け手側の私達ができることとして、アーティストの人が何か発信をしたときに、そのことをSNSで呟いたりすることもいいんじゃないか」と語った。
「自分ができることとして、読者の方々に向けて、社会やカルチャーのつながりについて知ってもらうきっかけをどんどん届けていくことがまず大事なのかなとすごく思っています。あと、CINRAでSIRUPさんがホストを務めている『Grooving Night』というイベントを何度か取材しているんですが、そのイベントは『音楽と人と社会をつなぐ』ということをコンセプトにしていて。ライブの後にSIRUPさんとゲストアーティストのトークセッションが開かれるんですが、その後インタビューをさせていただいたときに、ご本人がXで色々な反応を見ていると話していたんですね」
「ネガティブなものもポジティブなものも本当に見ていらっしゃって、それを聞いたときに思ったのは、アーティストの人が何か発信をしたり、すごく励ますようなことを言ってくれたりとかしたときって、きっとステージの上でめちゃくちゃ勇気を出して言っていると思うんですね。なので受け手側の私達ができるのは、そういうものに触れてよかったなと思ったら、Xとかでちょっとその経験や感想を呟いたりすることなんじゃないか。それだけでも、アーティストにとってすごく励まされる行動になるんじゃないかなと思いました」