安定した収入があっても、将来への不安は尽きない。だから、少しでも出費は抑えたいという人は多いだろう。都内在住の40歳の男性は、とにかく出費を抑えることだけが生きがいになっている。むしろ、男性にとって出費は苦痛である。
「自分でもおかしいとは思うんですが、家族での娯楽も無駄な出費じゃないかと思ってしまうんです」
そんな男性が今もっとも苦痛に感じていることとは、なんだろうか。(取材・文:昼間たかし)
月収は40万円、毎月10万円以上は貯金したい
最近、40歳になったばかりの男性が暮らすのは都内北部の中古マンション。世帯年収は1000万円を少し超えたところ。本人の年収も700万円あるし、けっしてお金に困っているわけではない。
そんな男性が、とにかくお金を遣いたがらない性格になったのには理由がある。
「30歳で結婚して間もなく、当時勤めていた会社が倒産してしまったんです。すぐに就職先は見つからずに日雇いバイトで繋いで、今の会社に採用されるまで1年くらいかかりました。妻が働いているとはいえ、わずかだった貯金はどんどん減っていくし、つらかったです」
同時に男性は、いかに貯金がいざという時の助けになるか身に染みた。それから既に10年以上が経つが、この出来事以来、男性は突然職を失う恐怖が消えないという。
「別に今の会社の経営状態が悪いわけじゃないんです。でも、もしも明日仕事がなくなったらと思うと、貯金をしとかなければと焦燥感に駆られます。だから、とにかく貯金額を増やそうと頑張っています」
男性の月収はおおむね40万円。ここから、毎月20万円を妻に渡している。内訳はローンの支払いや生活費だ。残りの20万円あまりのうち、私用のスマートフォン利用料や男性のカ
ードで払っている配信サービスの利用料、さらに生命保険料などを引いて残りは17万円ほどになる。
「うち5万円ほどは、日用品や食材の購入費。さらに、家族で出かけた時の支払いになります。ですので、どうやって毎月10万円以上を残すかが、今の目標です。節約の方法は様々あると思うんですが、自分は使わないことが一番だと思っています」
実際、「最近は、子育てが趣味」だという男性は浪費がほとんどない。コロナ禍以降、飲み会もめっきり減ったので、自分のために使うのは昼食代程度のものだ。
「趣味は読書くらいです。それも、新刊は買わずに古書店で目に付いたものを買う程度です。文字を読んでいることが快感なので、ぶっちゃけ説明書とか古新聞でもいいんですけどね」
男性はドリンクバー、妻は大ジョッキのビールを何杯も
そんなお金を遣わない生活が当たり前になった結果、男性はいつの頃からか、出費に罪悪感を感じるようになってしまった。
「とにかく1000円を超えると、使い過ぎたと後悔してしまいます。スーパーで買い物を頼まれても、レジで1000円を超えた瞬間に、今日は大失敗だと思ってしまうほどです」
そんな男性にとってのもっとも大きな出費は、月に2回ほどの家族での外食だ。
「まだ子どもも小さいので、近所の子連れOKの居酒屋かイタリアン。それとファミレスくらいしか行きません。でも、これは大きな出費です」
酒はたしなむ程度という男性だが、妻は「ビールは水」というほどの酒好き。なので、夕食でファミレスに行けば男性と子どもがドリンクバーを注文するのに対して、妻は大ジョッキをセレクトする。
「しかも、何杯も飲むものだから会計金額はアップしますよね。ファミレスなら4000円。居酒屋やイタリアンだと6000円を超えることもあります」
かなりささやかな金額であるが、男性は無駄な出費だと感じてしまう。
「そんな外食がだいたいに月に2回。子どもに本を買うとかならいいんですが、食べ物は食べれば消えるだけでしょう。そこに数千円を使うのはどうしても、もったいないと思ってしまうんです」
これから子どもが成長すれば、どれだけの費用がかかるのかを考えると余計に「もったいない」という思いは募る。
「とはいえ、妻や子どもを不安にさせるわけにはいきませんから『じゃあパパが払っておくよ』とニコニコと言っています。それが余計に負担です」
男性は「きっと宝くじでも当たらないと、この不安は消えることはないでしょう」と言った。
※キャリコネニュースでは世帯年収に関するアンケートを実施しています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/CPG04M4S