「年上部下のモチベーションをどのように上げるか?」
といった課題が、管理職研修の中で受講生から多く挙げられます。その中でも、
「定年間近の50代後半社員のモチベーションのあげ方が一番難しい」
と悩んでいるようです。
今回は、定年間近の社員のモチベーションのあげ方について、私の考えをご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
定年後の自分をイメージしてもらう
高年齢者雇用安定法の再改正がなされ、2021年4月より施行されています。70歳現役時代がやってきていること、会社として長く活躍して欲しいといった期待があることを伝えていかねばなりません。ただ、本人としては長い社会人人生を終わらせて、ゆっくりしたいといった思いを持つ方が多く、そう簡単ではありません。では、どのように伝えていけばいいのでしょうか?
まずは、定年後のイメージを持ってもらいましょう。自分のやりたいことや自分の能力の整理がついている方は、定年後の自分自身の活躍イメージを持つことができます。一方で、この世代の方々の多くが、仕事を中心とした現役世代を送っています。仕事人間だった方ほど、自分のやりたいことや自分の能力の整理がついていません。そのため仕事がなくなった瞬間にやることがなくなり、やりたいことが見つからず、自分のやれることもわからず、やらなければならないこともなく、心にポッカリ穴が開いた状態に陥りがちです。
定年後のイメージがない人には成功体験を聞く
管理職としては、「定年後に雇用延長をしたいのか?」「何かやりたいことがあるのか?」「何も考えられていない状態なのか?」など、定年後のイメージを聞いていきます。定年後のイメージが抱けていない方が多いと思いますが、そんな場合は面談等の中で考えてもらいましょう。
定年後のイメージを持っていただくためには、面談の中でこれまでの成功体験をまずは聞いていきましょう。「自分がどんな時に仕事を楽しいと思ったのか?」「仕事を通して、どのような経験や能力を獲得してきているのか?」を聞いていくのです。そして、定年後のイメージを一緒に考えていきましょう。定年後のイメージが見えてきたならば、それまでに育まなければならない能力や経験を現在の仕事や会社の中で学んでいただきましょう。学びの行動が、現在の仕事へのモチベーションを上げていくはずです。
このように、人はゴールの先にさらなる目標を持つと、力強く生きていく心理特性を持っています。私が伝える実践心理学NLPではこれを“メタアウトカム”と言います。例えば、フルマラソンに挑戦するなら、走り切った後のご褒美を用意していると走り切ることに力をフルに注げるようになっていきます。これと同じように定年後に、再雇用として働くことややりたい活動がイメージできると、定年までの仕事に対する姿勢が変わっていきます。雇用延長されている方も同様に、雇用延長終了後の自分のイメージを持ってもらうことで、目の前の仕事に集中しやすくなります。
定年が間近の部下のモチベーションのあげ方について、私の考えをご紹介してまいりました。簡単な関わりではないですが、自分自身にもそのような時がやってくることを忘れずに関わっていきましょう。それが、管理職としての力をさらに上げていきます。