2023年12月10日 09:41 弁護士ドットコム
「食べきれなかった朝食を持ち帰る」と譲らない客に困っているーー。ホテルの経営者から、このような相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
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相談者が衛生上の問題を理由に断ったところ、客は「注文した料理を持ち帰るのも残すのも自分の勝手。あとは、自己責任」と言われたという。
どのように対応すべきか。ホテル業界の法律問題に詳しい佐山洸二郎弁護士に聞いた。
ーーそもそも、ホテルの料理を持ち帰ることは許されるのでしょうか。
食品衛生法などの法律で、食事の「持ち帰り自体」を禁止する規定はありません。持ち帰りをしてよいかどうかは、あくまでも「提供側とお客側との間の合意の問題」となります。
ただし、どのような環境(持ち歩き時間や温度)で保管していたかなどにもよりますが、その食品を持ち帰ったことが原因で食中毒などが生じた場合、提供側には「人の健康等を損なう食品の販売をした責任」が生じる可能性があります。
ーー法的には、どんな責任を負うことになるのでしょうか。
まずは、客への損害賠償責任が考えられます。この責任は、いくら客側が「自己責任」で持ち帰ったという形でも、必ず免れるというわけではありません。さらには、人の健康等を損なう食品の販売を禁止する食品衛生法に違反したとして、営業停止処分を受けたり、3年以下の懲役刑や300万円以下の罰金刑などが科される可能性もあります。
提供側は、上記のリスクを十分に考えたうえで、持ち帰りの可否についてのルール設定をすべきですし、できるだけ客の健康上の安全面を意識したいところです。
今回のケースのように、禁止しているにもかかわらず、持ち帰りを要望する客に対しては、客の健康上の安全を守るために持ち帰りは認めていないこと、法的にも提供側に各種のペナルティがあるため安易に認めるわけにいかないことを説明し、理解を求めるべきでしょう。
【取材協力弁護士】
佐山 洸二郎(さやま・こうじろう)弁護士
2012年に中央大学を卒業後、同大学院法務研究科卒業と司法試験合格を経て、弁護士登録。企業法務を中心に取り扱う中、ホテル・旅館業界にまだまだ行き届いていない弁護士のリーガルサービスを届けるべく、同業界に特に注力している。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:https://www.sayama-lawoffice.com/