2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト テオ・プルシェール(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 鈴鹿サーキットで12月6日から行われている全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同/ルーキーテストにITOCHU ENEX TEAM IMPULから参加した2023年のFIA F2王者、テオ・プルシェール。初日こそ総合16番手に終わったものの、2日目にはタイムも向上し、セッション4ではトップから0.290秒差の1分36秒586で6番手につけ、初めてのスーパーフォーミュラ走行を終えた(FIA表彰式出席のため、3日目は出走せず)。
初めてのマシン、タイヤ、コースに難しさを感じる部分もあったようだが、FIA F2王者の片鱗を見せつけたプルシェール。星野一樹監督も、思わず「いやぁ、スゴいですよ!」と驚きの声をあげていた。
「セッション1の3周目から、(今回20号車をドライブした国本)雄資と同じようなタイムを出しているところを見て『コイツは並じゃないな!』と思いました。初日は、ウチがクルマの持ち込みセットを外してしまったところがありました。1日目を終えてデータを見直してもらって、クルマは良いどころにだいぶ戻せました。そうしたら、テオも良いタイムを出してくれました」と一樹監督。
「今回は2日間で6セット履きましたけど、ニュータイヤを入れるたびにコンマ数秒ずつタイムを上げてくれました。毎回学習をして、伸び悩むことが一度もなく、セッション1からセッション4まで来た。やっぱり、F1に乗るような人間はレベルが違うなと思いました」と、プルシェールの凄さに一樹監督は興奮を隠しきれないといった様子だ。
さらに、タイムが出ていないことに対しての問題点がどこにあるのかを正確に把握できている部分も、一樹監督は高く評価している。
「すべてをクルマのせいにせずに、『ここは僕の問題だから、次見ていて!』という言い方をしてきます。基本的に『こことこことは僕の運転の問題だから、そこは次直すから大丈夫。でも、ここだけはクルマ側で直してほしい』という指摘の仕方をしてくれます。平川(亮。2023シーズンまで在籍)みたいに、自分が良くないところとクルマ側が良くないところの区別がしっかりできるタイプ。正直、僕の領域では分からないことで……本当に並じゃないですね」
現役時代から多くの外国人ドライバーとともにレースをしてきた一樹監督。その中でもプルシェールは、前例がないほどの逸材のようだ。
「ブノワ(・トレルイエ)を最初に見た時も衝撃的でしたけど、(プルシェールは)強烈にいっちゃうというよりも、すべがコントロールされていて、自分のコントロール下のもとに完璧に仕上げていくタイプなので、レースが速いと思います。2日目のロングランもめちゃくちゃ速かったです。(予選で)2~3列目にいれば、すぐに勝ってしまうようなレースをすると思います。すごく賢いですね」
そうなると、レースを観る側としてはプルシェールが来季日本で走る姿を期待せざるを得ないのだが、そこについては「そこはトヨタさん次第なので、まだ分からないです」と一樹監督。それでも、「仮に彼が来季チーム・インパルで参戦することになれば、明らかにチャンピオン争いはすると思います。適応能力が半端ではないです」と力強く語っていた。
■難しいのはクルマよりコース? プルシェールは“鈴鹿攻略”に悩む
一方、当のプルシェールは「素晴らしいコースだし、素晴らしいクルマだなと思った。いままで経験してきたものとは異なる部分もあるから、そこに合わせ込まなければいけないけど、1日目としては良かったのかなと思う」と初走行を終えた後に満面の笑みで話していた。
一樹監督も言及したように、テスト1日目はマシンのセットアップが思うようにいかず、タイム的に苦戦をした部分もあったが、セッションを重ねるごとにタイムを上げいき、最後には1分37秒台中盤のタイムをマークし、上位ドライバーと遜色ないタイムを記録した。
「良いラップを刻めたけど、まだ僕はこのシリーズについて学ばなければいけないことが多いから、勉強をしている最中だ」とプルシェール。そして、繰り返して強調していたのが「鈴鹿のコースは難しい」ということだった。
「コースを攻略する方が難しい。狭さという点ではジェッダとかモナコほど狭いわけではないんだけど、セクター1は次々とコーナーが現れるし、すべてがつながっている感じだから、もしターン1・2あたりでミスをしたら、そのあとはすべてがうまくいかない。速くて、正確に駆け抜けないといけない。本当に難しい」
「その点でクルマに関しては、FIA F2と比べると適切なセットアップを見つけ出すのは難しいけど、動きに関しては周回を重ねていくことで慣れることができた。FIA F2とF1の間という感覚で、まだ完璧ではないけど、理解は進んでいる」
もし、来シーズンのスーパーフォーミュラにプルシェールが参戦することになれば、鈴鹿をはじめとした日本のコースに短時間で順応できるかというところが焦点になりそうだ。それをクリアすることができれば、チャンピオン争いの有力候補として名前が挙がる可能性も充分にありそうだ。