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『呪術廻戦』七海建人、人気の理由は“大人の格好良さ”にアリ 五条悟と対照的なキャラを考察

2023年12月07日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ARTFX J 呪術廻戦 七海建人 1/8スケール PVC製 塗装済み完成品 フィギュア 多色 PV039』(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 勤労感謝の日に放送されたアニメ『呪術廻戦』第42話「理非」。本エピソードでは七海建人にスポットライトが当てられ、TVアニメ放送後、いや放送前からもSNSでは「ナナミン」がトレンド入りするなど注目を集めた。


参考:『呪術廻戦』「漫才」の次は「裁判」!? トリッキーな展開でも熱い“メタ能力バトル”を解説


 七海の人気は高く、高専教師陣においては作中“最強”と称される五条悟に次ぐ支持を得ている。(参考:『呪術廻戦』第3回キャラクター人気投票)なぜ五条と七海はファンから支持されるのか。2人のキャラクターについて考察したい。


五条と七海の対照的な人物像


 本作の公式人気投票において、第1・3回では3位、第2回では2位に入るなど、上位にランクインしてきた五条悟。対して七海は第1・2回では5位、第3回では7位であった。


 ただバレンタインの時期にファンから特定のキャラクター宛に贈られたチョコ数のランキング(2021年)で七海は1位にランクインするなど、五条とともに作中屈指の人気キャラであることが伺える(参考:コミックス18巻)。


 そんな2人は対照的な人物として描かれることが多い。五条は親しみやすい……包み隠さず言えばちゃらんぽらんな人物として描かれる。コミックス4巻・第32話「反省」では京都校・庵歌姫に「で あの馬鹿は?」と“馬鹿”呼ばわりされたり、直後に教え子である禪院真希からは「悟(ルビは“バカ”)が時間通りに来るわけねーだろ」と言われる。現に七海も「私はこの人(五条)を信用しているし信頼している/でも尊敬はしてません」と話した。


 対して七海は多くの登場人物から尊敬されていることが伺える。渋谷事変で窮地に立たされた釘崎を助け、彼女が一級術師としての七海の姿に圧倒されたシーンも記憶に新しい。また、とくに七海を尊敬しているのは二級術師・猪野琢真だ。彼は行動を迷ったときに「七海サンならどうするか」と考えることからも、七海が尊敬されていることが伺える。


 2人の生い立ちも対照的である。五条は呪術界御三家の一角・五条家に生まれ、相伝の術式・無下限呪術と特異体質である六眼を授かった稀有な存在。対して七海の家系には呪術師がいない。しかし一級術師まで上り詰め、呪術の核心へと近づいた証・黒閃(こくせん)の連続記録保持者としても名を残した。


 また2人の呪術界上層部に対する態度も異なっている。五条は上層部を「呪術界の魔窟/保身馬鹿 世襲馬鹿(中略)腐ったミカンのバーゲンセール」と揶揄するなど、反抗心を隠すことなくあらわにしている。一方の七海は、虎杖とはじめて会った際に「上のやり口は嫌いですが私はあくまでも規定側です」「私も(上層部と同様に宿儺を宿す)アナタを術師として認めていない」と口にした。


 周りからの印象や生い立ち、上層部に対する態度など、あいはんする人物として描かれる五条と七海。対照的な2人だからこそファンの層が異なり、人気投票とバレンタインのランキングで順位が別れたのだろう。


※次頁より、アニメ第42話「理非」ならびにコミックス14巻のネタバレを含みます


“大人”として生徒と向き合う五条と七海


 そんな五条と七海の共通点として、大人と子どもを明確に線引きしている点が挙げられる。


 2巻・第11話「ある夢想」にて、五条は死から目覚めた虎杖を交流会までに復学させようとする。家入硝子にその理由を尋ねられると「若人から青春を取り上げるなんて/許されていないんだよ」と話した。虎杖を若人として扱うことは、自身が大人側の人間であることを認識していなければできないだろう。ちなみに0巻にて乙骨憂太にも同じ台詞を口にしている。


 対して七海は虎杖とはじめて任務をこなす際、強力な呪霊には自身が対峙し、虎杖には非力な呪霊の相手をさせた。自分がなめられたと思い不服な虎杖に、七海は次の言葉をかけた。


私は大人で君は子供/私には君を自分より優先する義務があります


 七海も五条と同じく自身を“大人”だと認識したうえで“子ども”である虎杖と接していた。また死の間際、七海はマレーシアで余生を過ごす想像をしつつ、同行していた生徒・伏黒恵と禪院真希の安否を心配している。


 おそらく生徒を思う背景はそれぞれに異なるものの、共通して“若人・子供”として生徒を見ていた五条と七海。夜蛾正道の言葉を借りるなら、死と隣り合わせであり、ときに呪いに殺された人を横目に呪いの肉を裂かねばならんこともある不快な仕事を、虎杖や伏黒、乙骨など、若い世代が担う本作の世界。そのなかで、しっかりと大人として振る舞っている大人だからこそ、五条と七海は読者からの人気や信頼を得ているのだろう。


 死の直前に七海は“子供”である虎杖に、呪いになってしまうことを葛藤しながらも、自身の遺言を託した。七海の決断が大人として正解だったのかはわからない。ただ、このときのナナミンは虎杖を呪術師として認めていることはたしかだ。


(あんどうまこと)