遮るもののない眺望や充実の設備など、豊かな暮らしの象徴のようなタワーマンション。しかし高層であるだけに、地震のときは不便さを感じることもあるようだ。
およそ6年前に西新宿エリアで6500万円のタワマンの高層階を購入した40代男性(年収1000万円)は、タワマンに住むメリットをさまざま挙げてくれたものの、数少ない欠点として
「地震の時はエレベーターが止まります。あとは駐車場の入出庫が多少混みますし、高所ゆえ雨天に気づかないことくらいでしょうか」
と明かす。特に地震でエレベーターが止まる時には意外な苦労を強いられるそうだ。実際どんな様子なのか。編集部では男性に取材を申し込み、話を聞いた。
「頭金650万で購入。毎朝、爽やかな気分で富士山を拝めるのが爽快」
男性は37階の自宅窓からの眺めについてこう語る。
「メインの窓が北西を向いていて、天気がいい日は富士山が見えます。毎朝、爽やかな気分で富士山を拝めるのが爽快ですね」
このタワマンを買った理由については、「近くに実家があるということもありますが、新宿駅やバスターミナル、東京都庁が近く、交通アクセスや買い物・区政情報収集に便利だからですね」と語る。
「総費用の10%にあたる650万を頭金にして残りは住宅ローンを組みました。専業主婦の妻と夫婦二人暮らしのため約60平米の2LDKを1LDKにレイアウト変更しています」
2部屋分を1つにして広々とした空間で暮らしている。月々11万円のローン支払いと修繕費、管理費の合計が1万5000円、駐車場代が2万5000円で15万円ほどだという。タワマン暮らしのメリットをこう語る。
「ゴミ出しは各フロアで24時間できますし、24時間3交代制の警備体制で安心です。バイリンガルのコンシェルジュもいます。ジム、自習室などの共用施設は早朝6時から23時まで使えます。ジムはほぼ毎日利用していますね。ほかにはスカイビュールームやレストランバー、別館には和室・茶室や、キッズスペース、宿泊部屋などもあります」
充実した設備に囲まれて良いことばかりのようにも見えるが、
「不便さは地震発生時にエレベーターが止まることくらいですね」
だと漏らした。聞けば、これがけっこう大変なことだった。
4キロのトイ・プードルを抱えて37階を昇り降り
実際に地震で止まることは年に2~3回くらいあるという。停止の基準は明確には決まっておらず、震度3~4でも止まることがある。止まる際はインターホンによる防災管理センターからの一斉アナウンスで住人に知らされるというが、昇り降りはもちろん階段を使うしかない。
「そりゃあ憂鬱ですよ。階段を37階まで徒歩で昇降するんですから。所要時間は最低10分、階段が混み合うともっとかかります。もの凄く疲弊しますし、荷物が重いともっと大変です。また突然余震が来るかも……と冷や汗もかきます」
足が疲れることはもちろん、高層階の階段を移動中に余震が来たらと思うと、心穏やかではいられないだろう。
「一番困ったのは、深夜にエレベーターが止まった時ですね。不意打ちなので何か急いで食料を調達しようにも階段を降りないとどうしようもないですし、飲食店も開いていないため配達もしてもらえません」
あるときは、こんなこともあった。
「トイ・プードルを飼っていますが散歩は抱えて行かねばならないので苦戦しました。幸い4キロしかないので重さはそれほどでもありませんが、あるときはペットシーツやおやつ、エサの替えが無く、階段を昇降して買い出しに行かねばならなかったのが大変でした」
愛犬のため大荷物を抱え、思わぬ苦労をしたようだ。それでも、エレベーターが止まっている時間は「短くて1時間、長くて半日」とのことで、この点に妻は「不満もあるが、その前に階段を降りることを諦めて自宅に篭ります」と既に達観している様子だ。
こうしたデメリットがあっても、タワマン暮らしのメリットはそれ以上に大きいのだろう。転居したい思いは今のところ無いそうだが、今後もタワマンに住み続けるかどうか聞いてみると、
「条件下によっては買い替えもあり得ます」
と含みを持たせた。