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田中敦子・大塚明夫・山寺宏一、『攻殻機動隊』アフレコ裏側、素子の決断…最新作語る

2023年12月02日 19:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
劇場用長編アニメーション『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』(11月23日より3週間限定公開中)の田中敦子、大塚明夫、山寺宏一オフィシャルインタビューが2日、到着した。


同作は、士郎正宗氏原作によるサイバーパンクSFの金字塔『攻殻機動隊』シリーズの最新作。1989年に『ヤングマガジン増刊 海賊版』(講談社)にて原作コミックが発表されて以来、押井守監督による『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)をはじめ、アニメーション、ハリウッド実写映画など様々な作品群を展開し、世界中に驚きと刺激を与え続けてきた。



最新シリーズは『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治氏と、『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志氏によるダブル監督作。Production I.Gと、 SOLA DIGITAL ARTSの共同制作によるアニメーションシリーズとなり、シーズン1が2020年4月より、シーズン2が2022年5月よりNetflixにて世界独占配信された。さらに日本アカデミー賞6部門受賞の『新聞記者』や『余命10年』等、実写映画で活躍する藤井道人氏を監督に迎え、シーズン1に新たなシーンを加えて再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』が2021年11月より全国劇場公開された。今回、シーズン2に新たなシーンと視点を加えて劇場版として再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』が公開されている。



この度、主人公・草薙素子役の田中敦子、バトー役の大塚明夫、トグサ役の山寺宏一のオフィシャルインタビューが到着。1995年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』から長年演じている3人の、『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2収録時のエピソードや、今回新たに登場する江崎プリン(CV:潘めぐみ)、シマムラタカシ(CV:林原めぐみ)について、さらにはNetflixシリーズとは異なる描かれ方となり、新たに収録されたクライマックスシーンについて語った。



※編集部注:本記事はネタバレを含んでいます。知らない状態で映画をご覧になりたい方はご注意下さい。

○■大人気シリーズ最新作『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』の裏側



――1995年の『攻殻機動隊 / GHOST IN THE SHELL』から始まったアニメ『攻殻機動隊』の世界ですが、最新シリーズ『SAC_2045』で演じる上で変わったことはありましたか?



大塚:そこは基本的には変わらないです。バトーならバトーというキャラクターの背骨は変わらないので。



山寺:そういう意味では、作品が違うし、そのための台詞がちゃんと用意をされているので、そこをちゃんと理解して演じれば、自然とその作品に合ったトグサになると思って演じています。


田中:そうですね。根っこの部分はどの作品でも同じです。ただ今回は2Dの手描きアニメから、3DCGになったことで、ちょっと実写に近いような感覚で録ったところはありましたね。



山寺:モーションキャプチャーを使った3DCGなので、台詞の間はそれまでのシリーズと比べると全体的にたっぷりしていると感じましたね。それが今回の神山監督、荒牧(伸志)監督の演出なんだなとは思いました。



大塚:モーションアクターの方の台詞を聞いてアフレコするので、吹き替えに近い感覚もあったね。



山寺:でも、いつものメンバーが集まると、間があいていてもすっと『攻殻機動隊』の世界に入れるっていうところはありますね。ひとりだけで演じていると、トグサってこんな感じだったっけ? となりかねないんだけど、掛け合いをすると不思議なことにすっとできる。



大塚:やっぱり『SAC_2045』シーズン1のときも、最初はそれぞれ実は不安なわけじゃない。あまりに久しぶりだったから(笑)



山寺・田中:(笑)



大塚:ところがいざスタジオ入ってみんなで読み始めたら、あっという間に世界は立ち上がって。「ああ、これこれ」っていう感じになったもの。やっぱり『S.A.C.』シリーズを長くやってきたというバックボーンがあるからこそなのかなとは思います。



――『最後の人間』では公安9課がポスト・ヒューマンであるシマムラタカシの計画に迫っていきます。



大塚:シマムラタカシって、これまでのシリーズの相手と違って、本当にこれが食い止めるべき相手なのか、というところがあるんでです。だから戦いの中に迷いが生じる部分があって。その迷いが、どんどん首を絞めてくるような感覚があるのが、シーズン2でした。さらにプリンとバトーの関係も深く描かれて、バトーとしてはどんどん苦しくなっていく展開でした。そういう意味では新鮮だったしおもしろかったですね。



山寺:プリンはもうちょっとマスコット的なキャラクターかと思ったら、シマムラタカシとともに後半の鍵を握る人物になりますからね。

田中:プリンちゃんは、これまでのシリーズのタチコマに相当する役回りなんだなって思いました。ポスト・ヒューマンとの戦いというメインにストーリーに対して、サブのストーリーの主役といってもいい役なんです。そこでシマムラタカシがプリンついて言及するんです。その台詞を聞いたとき、私の中に、そこに至るまでのプリンの人生が走馬灯のように浮かんできて。あのシーンはとても印象に残ってます。


山寺:あとシマムラタカシを演じた林原めぐみが、またすごいなと、僕個人としては思いました。



大塚:シマムラタカシって、そんなにしゃべってるわけじゃないでしょ。少ない台詞の中で、ピンポイントなところを確実に突いてくる芝居なんだよね。



田中:私は今回の追加の収録の時、めぐちゃんと一緒に説明を受けたんです。そのときの受け答えが「もう、シマムラタカシだ」っていうぐらいの内容だったので、すごいなと思いました。プリンちゃんの潘めぐみちゃんと合わせて今回はダブルめぐみが見どころなんですよ(笑)

○■素子の最後の決断について



――クライマックスで、素子はシマムラタカシから大きな選択を突きつけられます。シマムラタカシからプラグを抜けば世界の人々がN化することはなく、世界はそのまま。抜かなければ世界はシマムラタカシのプラン通りN化する。素子の最後の決断について、みなさんはどう受け止めましたか?



大塚:シリーズ最終回は再編集された『最後の人間』以上に観客に委ねた締めくくりでした。でも今までの物語の流れからしたら、素子はプラグを抜かないだろうと思ってました。それでバトーとしてはなんとなくおかしい、と感じていて、最後に素子のところに確かめに来たんだろうと。そのあたりは『最後の人間』は、もっとはっきり示した描き方になってましたね。



山寺:トグサとしては、原潜から核ミサイルは発射された瞬間に「ああっ」って責任を感じていたんです。動きを止めたはずの全身義体が動き出してミサイルを発射したので。そのショックに続いての、素子の判断だったので、抜かなかったのは衝撃でした。だってシマムラタカシは普通ならば“最大の敵”に相当するポジションですよ。そんなラスボスの作戦に主人公がのっかる、というのは普通はありえないでしょう。でも「ダブルシンク」が当たり前になるラストが必要なぐらい、現代が病んでいるのかなとも思いました。例えば世界のあり方なんかをみると、全員ダブルシンクにでもならないと、戦争は終わらないのかもしれない、とも感じたりしました。



田中:私も抜かなかったんだろうな、という判断でアフレコをしてました。



山寺:それは神山監督とかから説明を受けたの?



田中:されてない。



大塚:僕も聞いてない。



山寺:じゃあ、誰も聞いてないんだ。


田中:素子は、『攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL』のときには人形遣いから融合を求められたし、『S.A.C.2ndGIG』の久世とも対峙した。最後の最後で大きな決断を求められるキャラクターなんです。素子は孤高の人で、誰よりも高い場所から世界を見渡していて、そういう視点に立つと、最後に対峙した時点ではシマムラタカシもそこまで「敵」という存在でもないのだろうと思いました。だから「プラグを抜く/抜かない」という直接的な選択も超越したところに素子はいて、その上で世界のことを考えて決断したのだろうと考えました。それは『最後の人間』で再編集されたものを見て特にそう思いました。



山寺:でも素子は、自分から率先して世界を変えてしまおうという人ではないんだよね。世界の中で生まれたものが出してきた選択肢に向き合って、決断をするというキャラクターであって。



田中:そう。



大塚:世界を背負ったその決断が疲れるんだろうね。だからシリーズが終わるとまたどこかへ去っていっちゃうんだよね(笑)



田中:そうね。今回もそうでしたね(笑)



(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊 2045 製作委員会