Text by CINRA編集部
梅田哲也の個展『wait this is my favorite part / 待ってここ好きなとこなんだ』が12月1日より東京・外苑前のワタリウム美術館にて開催される。
梅田哲也はインスタレーションやパフォーマンス作品を制作するアーティスト。これまで回遊型の個展『O才』から続く一連の作品や、船で夜の水路を巡る『入船(ニューふね)』など、様々な場所でツアー形式の作品を発表してきた。
『wait this is my favorite part / 待ってここ好きなとこなんだ』は1990年9月にプライベートミュージアムとして開館したワタリウム美術館そのものを主役としたツアー型の展覧会。展示作品はワタリウム美術館の建築的な側面に焦点を当てて制作されるほか、ツアーの一環で、これまで展示室として使用されていなかった部屋が初めて公開される。
約50分間のツアーの定員は各回6人。鑑賞者はツアーの進行中に登場するキャストの行動に誘導されながら、施設内の展示室やバックヤードを巡り、日常の風景を異化させる仕掛けに遭遇するという。チケットは事前予約制。
会期中には、和多利恵津子・和多利浩一(ワタリウム美術館)、目[mé]や角銅真実が出演するイベントも開催。詳細は公式サイトを確認しよう。
【梅田哲也のコメント】
頭の中に地図を描くことで、自身の存在が強烈な実感を伴う瞬間があります。たとえばそれは岬の先端に立って、地図上のトンガリに立った自分を想像するようなこと。視線が身体から飛び出して上空から小さな自分を俯瞰しているような感覚。時間や歴史においても同じで、今いる場所にかつて何があったのか、何がおこなわれたかを想像することは、存在を確かなものにしてくれます。これはきっと時間の地図を描くようなことです。
いわゆるホワイトキューブとは異なる独特な展示空間はどのようにして生まれたのでしょうか。美術館がある三角形の土地は、1964年のオリンピックのために建設された道路が住宅密集地を切り裂いたことから発生しました。その直後、和多利一家はこの地へ引っ越してきます。1972年、現在ワタリウム美術館を運営している姉の恵津子が高校生、弟の浩一が中学生になった頃、母の志津子が自宅に現代アートのギャラリーをオープンしました。これがワタリウム美術館の前身であるギャルリー・ワタリです。
自宅の改装から始まった小さなスペースは、世界のアートの中継点として活躍する美術館となっていきました。これまでに100を超える展覧会を開催し、最も多く開催されたシリーズ展覧会のタイトルは「アイ・ラブ・アート」です。
和多利一家の、自分が生きてきた場所で大好きなものを知ってほしいという根源的な動機に触れて、自分もこの美術館のなかで自分なりの好きを探そうと思いました。そして、来館する人たちにもそれぞれのお気に入りを見つけてもらおう。 これはそういう展覧会です。
2023年10月 梅田哲也
工事中のワタリウム美術館 2階展示室。特注のコンクリート・ブロックを積み上げて、内装を制作中の様子。 1990年春ごろ。
Photo : Kotaro Konishi
newfune23 / Photo: Nakao Bibi
Teiden EXPO 2009 / Installation view