「会社の上層部の仲が悪くて仕事のやり方が統一されていない」という状況では、下で働く従業員は混乱するばかり。営業職として働く40代の男性は、ハローワーク経由で入社した商社で日々理不尽に耐えてきた。規模は10人足らずで「家族経営のような会社」というよくある中小企業だが
「70~80代の上層部が3人兄弟で、元々仲が悪く、言わば冷戦状態でした」
入社当時は「仕事は見て覚えろ」のスタイルで、仕方なく自分から上層部Aに教えを乞うも、面倒くさそうに教えられた。しかも
「教えられた通りにやっていると、別の上層部Bの方から『なんでそんなやり方をやってるんだ!』と怒鳴られる始末でした。私が○○さんから教えてもらったと伝えると、『あんなアホに仕事を聞くな』と言われ、違うやり方を教えられました」
しかし、Bのやり方をしていると今度は「上層部Cから同じように怒られて」別のやり方を指示されたというから酷い。どうすればいいの!と叫び出したくなったのではないだろうか。編集部では男性に詳しく話を聞いた。
「客に喜ばれるように」と言われた後に「あんなしょうもないとこの相手すな」
結局、男性は「言われた中の一番やり易い方法でやりましたが、三者三様で戸惑う事ばかりでした」と振り返る。例えば「客先に対する接し方」一つとっても違っていた。
「一人は『客に喜ばれるようにしろ』と言い、もう一人は売上が低い客について『あんなしょうもないとこの相手すな』、さらに他の一人からは『そんな(売上が少ない)注文は要らんから、他のとこに手配してと言え』などと、常識では考えられない事を言われたりしました」
それでも方針が統一されていれば仕事もスムーズになりそうだが、3兄弟はお互いに意見のすり合わせをすることもなかった。
「3人で『あのやり方はおかしいやろ』などと話し合うこともなく、何も改善しませんでした。うち一人は私が勤めて半年程でケンカして辞めて行かれました」
この三人の年齢は70~80代というから、今さら変えようにも変えられないのだろう。
営業に出ようとすると「高級食パン屋に並んで買って来い」
理不尽なことはそれだけではない。男性が営業に出ようとすると、それぞれが私用を言いつけてくるようになった。
「Aから、当時大人気で列ができる程だった高級食パン屋に『並んで買って、すぐに会社に戻って来い』と言われ、何十分も並んで買う羽目になりました……。BもCも業務時間中に似たような言いつけをしてきます。車で1時間ほどのBの自宅まで荷物を持っていけ!とか、Cに言われて季節ごとに宝くじを、よく当たると評判の複数の売り場に買いに行かされるなどザラでした」
さらに始末が悪いのが、「一つ善意を持って何かをすると、それからずっとそれをする羽目になってしまう」ことだった。「それに付随して色々と押し付けられる」こともあったという。
「例を挙げると、ある日ゴミ箱回りが散らかっていたので私がそれを掃いたりして掃除したら、私が毎日掃除する事になりました。おまけに今まで誰もしていなかった会社玄関の掃除と駐車場の掃除まで……その他にも色々やるように言われました」
「勤務歴が長い人ほど……息を殺すかのように仕事をしてます」
しかし、色々と押し付けられて大変な男性を、他の社員が手伝ってくれることはなかった。それどころか、
「勤務歴が長い人ほど、余計な事を言わず余計な事をせず、息を殺すかのように仕事をしています。口を挟むと自身も色々やらなければならなくなるのを知っているのでしょう。社長も後継者がいないため外部から来た“雇われ社長”なので、訴えても特に何もしてくれず上層部の顔色を伺うだけです」
他の同僚たちは「あんな人達やからしゃーない的にある意味受け入れている」といい、社内は諦めモードだ。
「最近は私自身も、これはこうしたら……?と思っても、何か言われるのがイヤなので黙っているようになってしまいました。今はもう50歳前なので転職は考えていません。72歳まで家のローンがあるので飛び出す様な軽率な行動はできません」
と男性も同様の諦念を明かす。しかし10年近く勤務してきた中で、社内での立ち回り方も身に着けたようで……
「もちろん色々ありますが、私も前よりは言い返しますし、上の方々の話のツボと言いますか、こう言えばまぁ納得はしてくれるかという話の流れを考えて伝えるようになりました。だから前よりは楽ですが、不意に訳のわからんこと言ってくるのでその時だけが嫌な気持ち、釈然としない気持ちになるだけですね」
毎日15分くらいかかっていた掃除に関しては、ささやかな抵抗をしたそうだ。
「私が逆ギレ気味に『毎日毎日金も出ないのにしません!』と言ってしなくなりました」
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