「疲れている時は睡眠を取ったり、ぼーっとして頭の切り替えができることですね。始発駅なので一本待てば座れますし、帰りはグリーン車で晩酌をしながら仕事もこなせます。過去には長い通勤時間を使って、証券アナリストや米国公認会計士などの資格試験の勉強をして合格もしました」
長い通勤時間を有効活用しているようだ。そうは言っても毎日のことで、ストレスが溜まることはないのだろうか。編集部では外資系メーカーで取締役を務めているという男性に取材を申し込んだ。
「駅ナカで焼鳥や寿司、刺身なども調達できます」
詳しい通勤時刻について聞いてみたところ、長距離といってもまったくつらそうな様子はなかった。
「始業は9時、終業は18時ですが、フルフレックスが導入されていますのでさほど厳しくありません。コロナ禍以降は週一日程度の出社で、残りは家での勤務が選択できるようになったのでリモートを選んでいます。出社する日は、朝メール等の確認をして10時頃に家を出て、帰宅は夜7~8時くらいですね」
現在はほぼリモート勤務の上、出社日にも無駄な残業などはしていない。ちなみに、通常では交通費はどれくらいかかるのだろうか。
「定期代は半年で10万7210円ですが、リモート勤務になった後は通勤した分だけ実費支給に変更になりました。帰りのグリーン車代は自費で、片道780円です」
なんと出勤した日の帰りはグリーン車で晩酌を楽しむという。
「晩酌する時は、品川駅構内でビールと酎ハイ一本ずつ買います。おつまみは駅ナカで焼鳥や寿司、刺身なども調達できます。体重増加気味で最近はナッツも多いですけど。金額はたいてい1000円前後ですが、大きな仕事の終わった後はご褒美で少し増額しますね」
なんとも羨ましい雰囲気に満ちている。
台風が直撃し到着に6時間以上かかったことも
良いことばかりのようにも見えるが、デメリットはないのだろうか。実は過去にはこんなこともあったと語る。
「逆に困ったことは、台風や雪で電車が停まると会社に行けなくなったり、家に帰れなくなってしまうことです。実際、スウェーデン本社の取締役会を東京で開催した時に、台風が直撃して到着まで6時間以上かかったこともあります。その時は、取締役たちをずいぶん待たせてしまいました」
また男性の住む地域は海が近く、昔から観光や別荘地としても有名な土地柄だが、近頃こんな変化を感じている。
「最近、逗子、葉山の住居地としての人気が高まってきて、通勤する人の数が増えてきています。いまだリモートが多いので顕在化していませんが、オフィスへの回帰が始まると通勤時の混雑が予想されます」
それだけ人気地域という側面が大きいわけだが、男性の年収は2000万円以上と高く、勤務地近くに家を購入することも可能だったのでは。都心から離れた所に家を買った理由を聞いてみると……。
「妻の両親が今のうちのある地域に家を建てていて、私が自分たちの家を探している時にすぐ近くに建売物件が出ました。それを妻の両親ともども見に行ったところ、『いいじゃないか。ここにしなさい』と義父に言われたためです」
義父の一声で妻の実家近くに居を構えることになったのだ。もちろん自身も環境の良さが気に入ったのだろう。長い移動時間があっても
「住んでいるのが湘南なので帰ってくると空気も空も違うので、長距離通勤も良しとしています」
と語っている。