理不尽な要求をしてくる客がいると、それだけで気が滅入るものだ。分譲マンションの清掃員として17年勤務しているという50代女性の場合、1人で作業するため社内の人間関係のストレスは無い。しかし、こんな嫌なことがあるという。
「マンションの住民の方で清掃員を召使いと勘違いしているような方がいて、八つ当たりや理不尽な事を言われたりします。そんな時は心の中でその人を抹殺してます。そりゃもう殺し屋の如く一撃です(笑)」
と冗談めかして話す。召使いと間違えているような言動とはどんなものなのか、編集部では女性に話を聞いた。
勝手にゴミを片付けて「あなたのする事を私がやってあげてるのよ!」
「うちのゴミを捨てておいてとか、とにかく何かしてほしいという要望が多いです。こっちは最低賃金なんですが…私からすればゴミくらいまともに出せよ!と思いますが(笑)」
こう不満を漏らす女性だが、数か月前には特定の住人に理不尽に叱責されたこともあった。
「私が出勤する前日の深夜に、マンションの火災警報器が誤作動して鳴り響いたそうです。マンション内は騒然となったみたいですが、私はそんな事は全く知らず、朝現場に行くと高齢の住民女性から、『不法投棄されたゴミに放火されたらどうするの!』と怒鳴られました」
火災報知器で危機意識が高まったのか、敷地内に勝手に捨てられたゴミを高齢女性が片付けたようだ。しかし、そういうゴミは管理組合の取り決めで「次回のゴミ収集日まで駐輪場に置いておき、収集日になったらゴミステーションに出す」ことになっていた。ところが
「その女性から『あなたのする事を私がやってあげてるのよ!あなたは駐輪場にゴミを引っ込めるだけでしょ!そのゴミに火でもつけられたらどうするの!みんなあなたのせいになるのよ!』とまくし立てられました」
決められた通りにしているのに、理不尽に叱責されてしまったのだ。後で火災警報器が誤作動したことを知った女性は
「夜中に起こされて睡眠不足でイライラして、何か文句を言わないと気が済まなかったんでしょうね。完全な八つ当たりです。言い返したかったけどとりあえずお客様になるので堪えました」
と苛立ちつつも怒りを押さえた。
この高齢女性に理不尽に怒られたのはこれだけではない。敷地の植木をめぐっても面倒くさいことがあった。
「植栽の水やりもするですが今年の猛暑のせいか4本あるうちの3本が枯れてしまって……それも文句を言われました。さすがに『水はちゃんとやってます!』と返したら、『何もあなたのせいとは言ってないでしょ!でもこれから毎日私が水をまくから!』と言われました」
それから1~2週間は、その高齢女性が毎日水やりをしていたそうだ。しかし「散水ホースを使用されるので仕事の段取りも狂いました」と不満は募った。そんなある日、高齢女性は突然女性のもとに来て、
「植木屋さんを呼んで見てもらったら、虫にやられてるってわかったの。だからもう水はまかないから」
と言い、勝手な水やりは終了となった。女性は「つまりは私の水やり不足を疑ってたんでしょうね」と呆れた様子だ。
「大丈夫!味方やから!気にしたらダメ!」と励ましてくれる住人も
他にも、高齢男性にストーカーまがいな事もされたという。
「ゴミステーションの所で待ち伏せされたり、お客様用トイレの清掃中にドアの前に立たれて卑猥なことを言われ、出られなくなったりしました。すぐ会社に言いましたが……。管理会社からすればその人もお客様になるから注意できないんでしょう」
その男性は2年ほど前に亡くなったというが、さぞかし怖かったことだろう。
それでももちろん、そんな住民ばかりではない。味方になってくれる人もいるそうだ。
「良い人も何人かいて、清掃員が必ず出入りする部屋のドアノブにお菓子や飲み物をかけておいて下さるんです。『いつもありがとう』ってメモを添えて……。作業中にヤクルトをくれた方もいました。私が嫌な女性に何か言われるのを見て、『大丈夫!味方やから!気にしたらダメ!』って励ましてくれた事もありました」
こうした励ましがあるからこそ、気持ちを切り替えて働き続けられるのかもしれない。
「本当に味方になってくれる人を大切にしないといけないな……って思いました」
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