2023年11月22日 19:51 弁護士ドットコム
仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)の弾劾裁判の第11回公判が11月22日、裁判官弾劾裁判所(裁判長:船田元議員=衆・自民=)であり、弁護側証人として東京医科大の市来真彦教授(臨床精神医学)と、津地裁部総括の竹内浩史裁判官の尋問がおこなわれた。
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市来教授は弁護人からの依頼で岡口判事を検査し、ASD(自閉症スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動)の発達障害があると診断している。
尋問では、SNSで裁判当事者らとトラブルになった点について、発達障害に起因するコミュニケーションの問題などが主たる原因になった可能性があると述べた。
訴追委員会からは、裁判官の職務に問題がないのかという趣旨の質問が出たが、市来教授は「受診していないだけで、発達障害のグレーゾーンの人は多い」、「全員が問題を起こすわけではない」などと強調。その上でSNSの利用については、「今までのようなスタイルだと、再びトラブルを起こす可能性が高い」と話した。
発達障害と裁判官としての適格性について執拗に質問する訴追委に対し、弁護人から尋問の立証趣旨から逸脱しているなどと異議が出て、質問をやめるシーンもあった。
この日、2人目の証人となった竹内判事は2006年から「弁護士任官どどいつ集」というブログを運営しており、岡口判事と同じネットで発信する裁判官として証言した。
自身のブログは当時勤務していた東京地裁の共済組合が企画したブログ講習で立ち上げたもので、当時は裁判所内にも情報発信を推奨するような雰囲気があったという。しかし、判事補が上司からのパワハラをブログで公表する事件が起きたことなどから、雰囲気が一変したと証言した(ちなみにこの件では、上司が異動となった代わりに、判事補はブログをやめることになったそうだ)。
竹内判事によると現在、実名でブログを運営する裁判官は岡口判事と2人だけ。匿名を含めても「かけ出し裁判官Nonの裁判取説」というブログを入れて、計3人しか確認できていないといい、「異常なこと」と危機感を語った(注:SNSまで含めるとこの限りではない可能性がある)。
自身が関与する事件や、「裁判官の独立」の観点から審理中の事件について言及するのは避けるべきとしつつ、他の裁判官の判決に対する批評や賛否の表明は妨げられる理由がないなどとして、裁判員に向かって「(裁判官が情報発信しなくなる)傾向を促進する判断だけはしてほしくない」と語った。
次回公判は12月20日で、岡口判事の本人尋問がおこなわれる。
この日の公判では、裁判員の山本有二議員(衆・自民)と山下貴司議員(衆・自民)が欠席したが、予備員からの補充はなく、裁判員は12人だった。
山下議員については、中立ではないとして11月1日に岡口判事側から忌避が申し立てられている。弾劾裁判所事務局によると、結論は出ていないものの、申し立ての関係による欠席だという。