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日本のグラフィック文化を紐解く『もじ イメージ Graphic 展』が明日から六本木で開催

2023年11月22日 19:10  CINRA.NET

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企画展『もじ イメージ Graphic 展』が11月23日から六本木・21_21 DESIGN SIGHTで開催される。出版物や印刷物のデータ制作を行なうDTP環境やインターネット上のコミュニケーションが普及してきた1990年代以降のグラフィックデザインを紐解く同展では、国内外約50組のグラフィックデザイナーやアーティストによるクリエイションを中心に展示。漢字や仮名の使い分け、縦横自在の書字方向、ルビなどの表現方法を持ち、文字とイメージの混ざり合いのなかで発展してきた日本のグラフィック文化が、グローバルなデジタル情報技術とどう向き合い、何を生み出してきたか、いまどのような可能性をみせているかを「造形性」「身体性」「メディア」など13の現代的なテーマに分けて紹介する。ディレクターは室賀清徳、後藤哲也、加藤賢策。参加デザイナーは以下の通り。明津設計、秋山伸、アドビ、有馬トモユキ、石塚俊、上西祐理、Experimental Jetset、M/M(paris)、大島依提亜、大原大次郎、岡﨑真理子、葛飾出身、上堀内浩平、川谷康久、菊地敦己、北川一成、小池アイ子、佐々木俊、佐藤可士和、佐藤卓、John Warwicker(Tomato)、白井敬尚、鈴木哲生、Sulki & Min、祖父江慎+コズフィッシュ、大日本タイポ組合、立花ハジメ、立花文穂、The Designers Republic、投票ポスタープロジェクト、戸田ツトム、中島英樹、仲條正義、永原康史、名久井直子、野田凪、Noritake、服部一成、原研哉、羽良多平吉、BALCOLONY.、平林奈緒美、廣田碧、松田行正、松本弦人、三重野龍、水戸部功、みふねたかし、宮越里子、山田和寛、𠮷田勝信、米山菜津子、寄藤文平、王志弘ほか【室賀清徳のコメント】現代のグラフィックデザインは国際的に均質化が進んでいます。世界のだれもが同じアプリケーションを使い、情報整理やそれによる問題解決を低コストで行う。そんなメカニズムがデザインの世界を支配しているようです。けれども、アートと技術の間で発達してきたデザインには論理では説明できない感性的な側面があります。また、英語の「グラフィック」や「デザイン」という言葉の根源は、人間が自身を取り巻く世界に対して痕跡を与え、意味を発生させる行為につながっています。本展ではそのようなはたらきを、20世紀末以降の西洋的なグローバル・デザインの潮流に対する日本の応答のなかに観察します。現代におけるグローバル化は単なる西洋化として説明できるものではなく、さまざまな地域文化の入り混じりや、異文化を翻訳して解釈するダイナミズムのうえに成り立っています。日本の携帯電話発祥の絵文字が「EMOJI」としてグローバルな通信システムに取り入れられたことは、その一例でしょう。そのようなダイナミズムのなかで日本のデザインについて考える際、これまでのような「日本の伝統的な美意識」を持ち出すだけでは現代のリアリティに接続できません。そこで注目したいのが文字とデザインの関係です。日本では漢字、ひらがな、カタカナを併用し、表現のモードに応じて併用する、独自の情報空間を発達させてきました。このような構造は、文字と図像が自在に融合するレイアウトにもつながっています。文字を横組みで打つことが日常化した時代のなかで、グローバルな情報構造と日本の文字が散らす火花のなかにどのようなデザインの可能性が浮かんでいるのか。ぜひ会場でお確かめください。【後藤哲也のコメント】これまでに10を超えるグラフィックデザイン展の企画に関わってきましたが、そのたびにグラフィックデザインをテーマにして展覧会を成立させる難しさを痛感します。グラフィックデザインは私たちの生活のなかで機能するものであり、ホワイトキューブでの展示は自明のものではありません。ひとつ(あるいは限定された数)だけ存在する美術作品の展示とは異なり、複製を前提としたグラフィックデザインの作品展示は──一歩外にでれば手に取ってさわれるものを仰々しく扱うような──奇妙な空間を生み出すこともあります。日常と展示空間の間にある境界線を跨いでもグラフィックデザインを躍動させる、そのために必要なのは新しい文脈に接続させること。「過去との参照関係(=引用/サンプリング)」や「つくられ方(=プロセス)」を展示するなどの方法がこれまでの成功例としてありますが、今回の展示ではポストデジタル時代に点在する視覚伝達の諸相をつなぎあわせることで、多くのデザインの歴史書がその記述を終える1980/90年代を起点とした、新たなグラフィックデザインの文脈をデザインすることを試みます。中心に据えたのは「文字とイメージ」。これらが織りなすイリュージョンは、グラフィックデザインの根源的な働きだと言えます。現代のデザインに求められる合理性だけに矮小化されない、視覚伝達の大きな網でポストデジタル時代の表象を捉え、私たちの生活のなかに機能するさまざまなビジュアルコミュニケーションの点と点を結び、大きなグラフィックデザインの像を浮かび上がらせることで——グラフィックデザインの展示を成立させるにとどまらず——時代が変わってもグラフィックデザインが持ち続ける力について考える場をつくれたらと思います。【加藤賢策のコメント】今回の展覧会は主に1990年代以降のグラフィックデザインの事例を通して、現代のビジュアルコミュニケーションに着目します。90年代といえばグラフィックデザインの現場でDTPが一般的になってきた頃。さらにプログラミングでデザインを出力したり、インターネット上でのインタラクティブな表現も数多く出てきました。その頃学生だったぼくは、デジタルメディアやインターネットの登場による新たな表現に心躍らせる一方で、当時すでにレジェンドだった60-80年代に活躍した名だたるグラフィックデザイナーたちにも憧れてもいました。そのような流れのなかにあって通底しているのは、本展の大きなテーマでもある日本語的なビジュアルコミュニケーションにあると思います。当時のグラフィックデザイナーたちは例えばモダンデザインと向き合うなかで、現代の私たちはデジタルメディアに向き合うなかで、その想像力によって環境を更新してきたのではないでしょうか。漢字、かな、カナ、alphabet。縦組、横組、ルビ表現……日本語の書字スタイルは世界に類を見ない複雑怪奇なものです。これを多くの人が当たり前に使いこなしているのは驚くべきことです。デザイナーとしてそれらの要素を手なずけ、コントロールするのは大変なことですが、その複雑さを豊かさととらえ、積極的に向き合えたらこれほど楽しい環境はありません。展示を通して、このような日本語的ビジュアルコミュニケーションの豊かな世界を楽しんでいただけたら幸いです。